秋桜

仕事場での繁忙期が終わる直前の夜遅くに仕事をしていると、日本人の同僚からメールが入った。

日本の家族に緊急の事態が起こり、急遽明日の便で日本へ帰るという。

その時は詳細も分からず、

「大丈夫? こちらで出来ることはするので、何でも言ってね」

と返事を送ったのだが。

数日後、その同僚のお母さんが亡くなったと知らせが入った。

前から長く病気をしていたとか、そういった話は聞いてなかったので、突然の知らせだった。

お母さんが逝かれる前に間に合って、話すこともでき、家族みんなでお見送りすることができたと聞いて、悲しい話だけれどもその一方で、"間に合って話せてよかったね”とほっとしたのだった。

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「あたしたちも、家族、友達、自分自身に、こういう話が増えてくる年代になったのよ」

元同僚の女子もその話をきいて、ぽつりとメッセージを送ってきた。

幸い、まだ自分の両親は元気にしてくれているが、この同僚のお母さんのように、いつ病気になって倒れるか分からない。

ましてや、これだけ離れた場所に暮らしているから、なかなか会えないし、もしなにかあったとき、別れ際に立ち会えるかも分からない。

「だから、会える時には会って、親孝行するの。"ありがとう”の気持ちつたえなきゃ。母さんに結婚がどうこうとか言われるのは面倒くさいんだけどね」

と、つい先週まで親孝行のために日本に帰っていた、K枝は言う。

一人っ子のK枝は、毎年帰る度に父母を温泉旅行に連れていってあげるという。

自分もこの冬に日本へ帰るときは、ちゃんと母ちゃんに”ありがとう”の気持ちを伝えなければ。

40年間、こうやってなんとか元気でやっていられるのも、母ちゃんが元気に産んでくれてここまで育ててくれたおかげだ。





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