2017年4月28日

4月になるとここへ来て 卒業写真めくるのよ

「A子ちゃんちに遊びに行った時に、あんまりにも部屋が散らかってたから、

『あんた赤ちゃん生まれたんだから、ちょっとは家片付けたらどうなの?危ないじゃないの』

って言ってやったの。そしたら、

『Y子さんこそ、いい加減片付けたらどうなんですか?昔の男達との思い出とか!』

って言い返されたの! どゆこと!?」

オカマ友達のY子が、元同僚の女子の家に、最近生まれたばかりの赤ちゃんを見にいったら、その女子とこんなやりとりになったという。

確かに、最近良い出会いのないY子から、

「もう少しあたしがあの時我慢してたら、あの男とうまくいってたかもしれない・・・」

とか、

「携帯の中身を整理してたら、あの時の彼の写真が出てきたんだけど、何であたし削除しないで持ってるんだろ・・・」

といった、昔の男達を恋しがるどうしようもなく湿っぽい内容のメッセージが、朝っぱらから届いたりする。

そりゃ、元同僚女子に手厳しく言われても、何も言い返せねーだろうよ。

そんなY子とのやりとりを思い出しながら、ひとり地下鉄に揺られていたら、シャッフルに設定していた携帯のイヤーフォンからジャズピアノが流れ出した。

「あ、これ・・・。」

数年前に、自分が一時恋愛めいたことをしていた、ピアノ好きの小児科医の男からもらった、"Oscer Peterson Trio"や"Art Tatum"等のジャズピアノの曲を集めた、彼の手作りのCDだった。

その時は「この男と一生つきあっていくのかもしれないわ、あたし?!」と、はじめて恋に落ちた中学生じゃあるまいし、下らない妄想に耽っていたのも、今じゃ人には言えない恥ずかしい思い出である。

当時はよくピアノバーで一緒に飲んだり、彼の家のグランドピアノ弾かせてもらったりしたわよね・・・。

結局、それは短いひと夏の恋で終わり、今じゃ未練も何も残っていないが、ふとしたきっかけで、こうやって昔の男を思い出してしまうのは、どうやらY子だけじゃないらしい、と思わずひとり苦笑する自分であった。

サンフランシスコ、特にこの街のゲイ社会は狭いので、街を歩けば昔出会った男とすれ違うことは多々あるし、ふとしたことが当時付き合ってた男を思い出させることもある。

「あたし、キッコーマンの醤油差しを見るたびに、あの彼のことを思い出しちゃうの!」と、その昔ハンサムなフォトグラファーと一時期恋に落ちていたK枝が言っていたが、一体K枝は、キッコーマンの醤油差しに彼とのどんな思い出があるというのだろう・・・。

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同業の女子友達のM子ちゃんから、お気に入りのイタリア料理の店「Aperto」が今月いっぱいで店を閉じるらしい、と情報が入った。

街の外れの丘の上にある「Aperto」は、M子ちゃんと若かった頃に、週末よく資格試験の勉強を一緒にしたあとに通っていた店であり、また当時住んでいた日本人仲間とも何度となく訪れた思い出のある店だった。

特にすごくおしゃれな店という訳ではないが、アメリカナイズされていない本場の素朴なイタリア料理を出す店で、24年間続いていたというその店が、新しいビルのオーナーと折り合いがつかず、もうなくなってしまうと思うと、何だかとても悲しい。

というわけで、今夜の夜飯はApertoでイタ飯だよ、とタクシーを飛ばして町外れの丘まで行って来たわ!

テーブルに塩・コショウをおかない、というのがこの店のルールだ。
店員さんも、つかずはなれずの丁度良いサービス。

この店はなくなっても、オークランドにある姉妹店は続いていくという。

ひと夏の恋の、そのピアノ好きの小児科医の男は、その後、サンフランシスコの家を売り払いハワイに引っ越していったと、風の便りに聞いた。

人も街も店も移り往く。

40年近く生きていると、永遠に続くものなどないのだ、と経験で分かりはじめている。




2017年4月25日

眠れる森の美男

水曜日。早々に仕事が片付いたので、はやめに職場をドロンして、久々に近所のファーマーズマーケットに顔を出してみた。

3月から11月まで夏時間の間、毎週水曜の夕方にカストロ駅ちかくの通りの一角を閉じて、空が暗くなる8時過ぎまで、地元の農家たちが野菜やチーズに蜂蜜、手製パスタなどを売りに出しているのだ。

夜飯は何にしようかと歩きながら見て周ると、そら豆が店先に並んでいて、思わず春を感じる乙女。

そういえばと、大分前に読んだ、よしながふみ女史の漫画「きのう何食べた?」で紹介されていた炊飯器で作る豆ご飯を思い出し(あれはグリンピースだったっけ)、今日はそら豆で豆ご飯でも作ってみようか!と、袋一杯にまだ実の小さいそら豆を購入した。

炊飯器にいつもと同じ要領で米を研ぎ、水を少々減らして、その分適当に酒と塩を加えて、米が炊き上がる5分くらい前に皮をむいたそら豆をぶっこめば、出来上がりだ。

普段たいした料理をしないので、楽に作れる和食はうれしい。

それと安売りしていた豚肉としょうがで、今夜は、そら豆ごはんと生姜焼きだ。

20年前、大学を出てサラリーマンをしていた頃は、マンションのキッチンなどせいぜいお湯を沸かす時に使うくらいで、昼飯は社食かファストフード、夜飯はコンビニ飯みたいな生活だったことを考えると、少しは成長したかしらん?(その分、腹回りも成長したわよね)

いつか、ちゃちゃっとうまい和食が作れる男(オカマ)になりたいと夢見る。
いつもご飯には、M男のおすすめで、高血圧に効くという大麦を混ぜて食ってます。

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弁護士のシロさんと美容師のケンジのゲイカップルが主人公の、料理漫画「きのう何食べた?」も新刊が出るたびに紀伊国屋で購入し楽しみに読んでいるのだが、昔からどちらかというと、少年漫画より少女漫画のほうが好きな自分である。

子供の頃に、よく父が、妹に月刊少女漫画誌の「りぼん」などを仕事帰りに買ってきていたが、それを妹から取り上げて、妹より先に読んでいたくらいだ(この頃からもうオカマ丸出しだったわ)。

萩尾望都、山岸涼子、大島弓子、川原泉や岡田あーみん(!)は、母も妹も好きで家族で読みまわしていたし、ゲイがあちこち出てくる吉田秋生の漫画は今でも通勤中に繰り返し読んでるわ!(どんだけオカマだよ)

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夜飯を終えて、腹がいっぱいになったところで、安もののワインを飲んでいたら、ふとそんな大昔に読んだ少女漫画たちが読みたくなってきた。

そのうちの一つ、ゲイの医者が主人公で、東京、ニューヨーク、中東を舞台にした短編があったのだが、タイトルも思い出せずグーグルで検索してみたら、アマゾンでダウンロード購入できるじゃないの。

早速、ipadにダウンロードして、今夜はひとり少女漫画ナイトだよ。

秋里和国女史の「眠れる森の美男」という作品の続編で「TOMOI」という漫画。
結末がとても哀しい。泣くわ。










2017年4月17日

桜の雨、いつか

職場でのバタバタもやっと落ち着いてきて、この日曜は久しぶりに出社せずに、家で過ごしている。

映画「ムーンライト」のピアノとチェロの奏でるサウンドトラックを静かにかけて、雨の降る街を眺めながら、ソファーに座って朝から一杯ひっかけている(アル中!)。

トマトジュースにウォッカとわさびをぶっこんだだけよ

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「熱出して、寝込んでる。103度。どうしよう。今日は仕事休むわ」

先週の月曜の朝に、いつもは頑丈なM男から弱気なメッセージが入った。

「大丈夫? 何か必要だったら、いつでも連絡して。昼休みでも会社帰りにでも持ってくわよ。Y子なら夕方は暇してるだろうから、急ぎだったらあの子に連絡してもいいし。」

と返事をする。

女友達に言わせると「友達思いで、優しいね~」というが、自分が同じように体調を崩したり弱ったりしたときに助けてもらう為に、こんな時は、こうやってお互い支え合っとかないと、ともっと必死で切実な思惑があるのだ。

同じくオカマのY子も、この間、腕に大きな切り傷をしていたので、どうしたのか問うと、シャワー浴びながら、タオルに手を伸ばそうとしたら、足を滑らせて、風呂場でひっくり返ったという。

「あんた、打ちどころ悪かったら、切り傷じゃ済まないじゃないのよ! もう気をつけてよぉ!」

と半分冗談、半分本気で皆から心配されたY子である。

自分は自分で、昨年末から悩まされていた「10円ハゲ」も、オカマ先生の注射のお陰か、大分目立たない程にはなってきたが、まだ風に吹かれると、ひらりと頭皮が見え隠れしてハラハラしている。

それよりも、最近は、ジムでちょっと重めのダンベルを持っただけで、腰にぴりっと痛みを感じるし、仕事場で夕方になると、急にパソコンのスクリーンがぼやけてきて、若手のスタッフに拡大してプリントを頼んだりしたりと、老化を確実に感じている自分である。

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3月の終わり。

飲み屋の帰り道、夜空の下、風に散っていく桜の花びらを見て、

「ほんと、花の命は短いね。あたしも一緒だわ」

と酔っ払って、乙女めいた発言をしたY子に

「おめーは、そんな綺麗じゃねーだろ」

と突っ込むM男とK枝。

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久々の仕事なしの日曜日なのに、家でぼーっとしてるだけなのももったいないと、傘をさして街を歩く。

最近新しくできたレストランの前を通ると、50代か60前後くらいの4人組の中年のおしゃれをしたおっさん達が、窓際の席に座って仲良さそうにミモザを片手にブランチを楽しんでいた。

例え花が散って枝だけになっても、こうやって仲間と元気にわいわいやっていられたらいいなぁ、とあちこちたるんだおっさん達をうらやましく思う、日曜の午後であった。