桜の雨、いつか

職場でのバタバタもやっと落ち着いてきて、この日曜は久しぶりに出社せずに、家で過ごしている。

映画「ムーンライト」のピアノとチェロの奏でるサウンドトラックを静かにかけて、雨の降る街を眺めながら、ソファーに座って朝から一杯ひっかけている(アル中!)。

トマトジュースにウォッカとわさびをぶっこんだだけよ

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「熱出して、寝込んでる。103度。どうしよう。今日は仕事休むわ」

先週の月曜の朝に、いつもは頑丈なM男から弱気なメッセージが入った。

「大丈夫? 何か必要だったら、いつでも連絡して。昼休みでも会社帰りにでも持ってくわよ。Y子なら夕方は暇してるだろうから、急ぎだったらあの子に連絡してもいいし。」

と返事をする。

女友達に言わせると「友達思いで、優しいね~」というが、自分が同じように体調を崩したり弱ったりしたときに助けてもらう為に、こんな時は、こうやってお互い支え合っとかないと、ともっと必死で切実な思惑があるのだ。

同じくオカマのY子も、この間、腕に大きな切り傷をしていたので、どうしたのか問うと、シャワー浴びながら、タオルに手を伸ばそうとしたら、足を滑らせて、風呂場でひっくり返ったという。

「あんた、打ちどころ悪かったら、切り傷じゃ済まないじゃないのよ! もう気をつけてよぉ!」

と半分冗談、半分本気で皆から心配されたY子である。

自分は自分で、昨年末から悩まされていた「10円ハゲ」も、オカマ先生の注射のお陰か、大分目立たない程にはなってきたが、まだ風に吹かれると、ひらりと頭皮が見え隠れしてハラハラしている。

それよりも、最近は、ジムでちょっと重めのダンベルを持っただけで、腰にぴりっと痛みを感じるし、仕事場で夕方になると、急にパソコンのスクリーンがぼやけてきて、若手のスタッフに拡大してプリントを頼んだりしたりと、老化を確実に感じている自分である。

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3月の終わり。

飲み屋の帰り道、夜空の下、風に散っていく桜の花びらを見て、

「ほんと、花の命は短いね。あたしも一緒だわ」

と酔っ払って、乙女めいた発言をしたY子に

「おめーは、そんな綺麗じゃねーだろ」

と突っ込むM男とK枝。

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久々の仕事なしの日曜日なのに、家でぼーっとしてるだけなのももったいないと、傘をさして街を歩く。

最近新しくできたレストランの前を通ると、50代か60前後くらいの4人組の中年のおしゃれをしたおっさん達が、窓際の席に座って仲良さそうにミモザを片手にブランチを楽しんでいた。

例え花が散って枝だけになっても、こうやって仲間と元気にわいわいやっていられたらいいなぁ、とあちこちたるんだおっさん達をうらやましく思う、日曜の午後であった。








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