2018年6月30日

この大空の虹になりたい 希望に届く虹になりたい  (2018)

「サンフランシスコの街を歩けば、オカマにぶつかる」

とはよく言ったものだが、

毎年6月になると、世界中からオカマ達がわらわらと集まってきて、

いつも以上に街中が"オカマの坩堝"となる。(なんだか恐ろしい響きだわ・・・)

そんなオカマだらけのサンフランシスコの中でも、特に右を向いても左を向いてもオカマだらけの「カストロ地区」は、ゲイのメッカと呼ばれていて、

物珍しさか怖いものみたさか、一般の観光バスが毎日のようにやってくる。

そんなカストロの通りを歩いてみると、

あちこちに"Harvey Milk"の名前や顔を見つけることができる。

彼は、40年前「カストロの市長」と呼ばれながら、サンフランシスコの市議に選ばれLGBTの権利に尽力し、

そしてその翌年、当時の市長とともに、彼は市庁舎で暗殺されたのだった。

それ以来、カストロの街は彼の意志を受け継ぎ、それを若い世代に伝えていく場所となっている。

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人々や企業がダウンタウンに集まり、LGBTの権利を謳う6月末の「サンフランシスコ プライド」がメインのイベントとなるが、

その1か月くらい前から、街中の通りに虹色の旗が立てられ、LGBTの映画祭AIDS LIFE CYCLEのようなチャリティ、その他各種イベントがあちこちで行われている。

近所に住む日本人ゲイ友達のK治やH太君は、プライドイベント当日のパレードに会社の同僚と参加して、虹色にデザインされた会社のロゴの入ったTシャツを着て、大通りを歩いたらしい!

自分も、パレードこそ参加しないものの、去年に続いて近所の友達を我が家に呼んで小さな「ピンクパーティ」を開いたり、映画祭でいくつか気になった映画を観に行ったりして、このプライド月間を楽しんだわ。

街中に虹色の旗がなびく!


プライド前夜の「ピンクサタデー」は我が家で友人達と
皆でピンク色の服を着て、ピンク色のスパークリングワインと
ピンク色と虹色のお菓子で乾杯だよ!


今年のLGBT映画祭には、日本から2作品が参加。
そのうちの一つが「彼らが本気で編むときは」。
在サンフランシスコ日本領事館がオフィシャルスポンサー。
(上映中に客席で声を上げて泣いてるオネエさんがいて、自分も泣いたわよね。)

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40歳の時に、立ち上がってゲイの権利の為に戦ったHarveyと、

40歳になっても、自分のことだけでいっぱいいっぱいの自分。

ただ、今こうやってゲイとして自由に胸を張って笑顔で生きていられるのは、彼をはじめとした"先輩”たちのお陰なのよねぇ、と

窓の遠くに見えるHarvey Milk Plazaの虹色の旗に、

皆で感謝するのだった。

カストロの街を歩いてみると、
Harvey Milkとゲイの歴史をあちこちで見つけることができる。







2018年6月15日

出逢いはスローモーション (5)

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これまでのお話

出逢いはスローモーション (1)

出逢いはスローモーション (2)

出逢いはスローモーション (3)

出逢いはスローモーション (4)

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中年オカマの自分も40年間近く生きてきて、何人かの人(片手で数えられるくらいよ・・・)とお付き合いしてきたけど。

一定の時間を一緒に過ごすと、お互いに相手がどこで育って、どうやって今まで生きてきたのか、少しずつ知ることになる。

青森の田舎町で育った男(ひと)や、オハイオで消防士の父に育てられたという男。

フロリダの医者一家に生まれ、勉強して医者になってここへ越してきたって男も居たわね…。

だけど、どの男とどれだけ長く付き合っても、その相手の家族と会ったことは一度もなかったのである。

それでなくても、会食やパーティが胃が痛くなる程、苦手な自分だ。

まだ自分の親にもカミングアウトしていないのに、ほんの数か月しか付き合っていない男の家族に会いに行くなんて、

女中役だった薬師丸ひろ子がいきなり三田佳子と舞台でW主演するようなものである(なんのこっちゃ)。

「どうしよう。今付き合ってる男の家族の集まりに呼ばれたんだけど。行きたくない!」

といつものオカマ仲間をいつもの飲み屋に呼び出して相談してみると、

「あんた、男と付き合ってるって聞いてないけど!」

と叱られながらも、

「あんたが乗り気じゃないなら、断ればいいじゃない。男のためにストレス感じるなんて、本末転倒よ?」

とすでに旦那がいて、妻業を幾度もこなしているM男は言う。

その一方で、

「でもさ、家族に会わせたいって言ってくれるってことは、彼も本気ってことでしょ。ゲイの世界で相手の家族に会えるなんて今でも滅多にないことなんだから、ありがたいと思って、会ってくるべきよ!」

と数多くの男たちと幾度の出逢いを経験して来たK枝は言う。

さて、どうしたものか。

あたしに、できるかしら・・・。(C) 薬師丸ひろ子

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「この家系はみんなハゲになる家系なんだけど、Nはまだハゲないでいるみたい?」

「でも、ちょっとおでこのあたりが、危ないんじゃない?」

「やっぱり家系には逆らえないか。わっはっ。」

晴れた日曜の昼下がり。

N君の実家の裏庭のテラスにあるテーブルを囲み、N君の両親と親戚のおじさんとおばさん、N君の従妹とその彼氏(いい男!)と一緒に、白ワインのグラスを片手に、緊張しながら彼らのやりとりを聞いている自分である。

否、聞いているふりをして、N君の家族や育った家を観察している自分である。

N君のお母さんは、以前地元の中学校で先生をしていた、肝っ玉母ちゃん的雰囲気。

一方、N君のお父さんは無口であまり笑顔も見せない強面の弁護士だ。

家のあちこちには、一人っ子のN君の子供時代から大学時代くらいまでの写真が飾られている。

「シカゴの小劇場でゲイのカップルを題材にした芝居を見てきたけど、主役はいい男だったわ。」

「あら~、あたしもみたかったわね。」

とゲイにも寛容な態度を示してくれるのは、N君の母とN君の父親の姉(平野レミ似のN君のおばさん)だ。

そんなやり取りを聞いて、少なくとも「ゲイの息子のゲイの交際相手」ということで、責められたり、嫌な目にあうことはなさそうで、ほっとする自分。

「あなた、ピアノ弾くんだって? 奥の居間にピアノあるから、あとで弾いてみせてよ」

「クリスマスの会には、あたしと一緒に連弾しましょ!」

はじめは、ただ静かに薄ら笑いをする得たいの知れないアジア人男を演じるのみの自分だったが、

彼らの大らかな親しみやすい雰囲気のお陰か、ワインのアルコールのお陰か、三田佳子が「女優!女優!女優!」と発破をかけてくれたお陰か(?)、少しずつ彼の家族になじめてきたようだ。

そして、テラスが夕焼け色に染まる頃、

N君の父が外のグリルで焼いたステーキと、N君の母が料理した野菜料理でディナーとなった。

食事中、突然平野レミ似のN君おばさんが、

「それで、二人はどこで出会ったの? 日本で? 水球チーム? 職場? どこどこ?」

とまくし立ててきたけれど、

正直に出会い系アプリとは言えず、

「あ、共通の友達を通じて、でしたっけ・・・(汗)」

と、小さな嘘をつく自分達。

どの国でも、平野レミ、恐るべし、である・・・。

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帰り道、

緊張やらなにやらで心身ともに疲れ切っていたけれど、

ふとK枝が言った言葉を改めて思い出していた。

ゲイの世界で、相手の家族に会って受け入れられるなんて、

滅多にない難しいことである。

生まれてこのかた、交際相手の家族に紹介してもらえるなどと、夢にも思っていなかったから、

これはK枝の言う通り、きっと、ありがたいことなのだろう。

思わず、愛読書(漫画)の「きのう何食べた?」の

ケンジが恋人のシロさんの実家にはじめて連れられて、シロさんの両親に会うエピソードを思い出していた、

乙女の自分であった・・・。

これ読んだときは、思わず泣いたわよね。(きのう何食べた? 第7巻より)
(C) よしながふみ



続く・・・!