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瑠璃色の地球 2020

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大晦日の朝。 朝の5時にもならぬうちに、地震の揺れで目が醒めてしまった。 まだ外は暗く寒いから、そのまま布団に籠って日本の家族や友人にLINEでメッセージを送ってみる。 妹からは、美味しそうな天ぷらと蕎麦の写真が送られてきた。 日本はもう数時間で新年を迎えるのよね。 東京のオカマ友達は、本家の紅白ではなく、ネットで女装紅白歌合戦を観ているという。(どんな紅白よ!) そして軽井沢に住む友人からは、本家のほうの紅白の画像がいくつか実況で送られてきた。 氷川きよしさんの変化(へんげ)もすごかったが、我らが(?)聖子は「瑠璃色の地球」を 歌ったらしく、美しい白のドレスである。 “夜明けの来ない夜はないさ あなたがぽつり言う” 瑠璃色の地球のこの冒頭の歌詞が昔から好きである。 今年はなんだかとんでもない1年だった。 毎日家に籠って仕事をするか、せいぜい街中を散歩するくらいだったからか、この1年を振り返ってみても、なんだか記憶がぼんやりとしている。 過ぎてみれば、長かったような気もするし、短かったような気もするわよね。 先行きの不安のせいか、家族や友人とも会えなかったからか、籠りっきりで太陽光もあまり浴びなかったせいか、心も塞ぎ込みがちだったが、何とか今こうやって一応元気でいられているから、よしとしようじゃないの。 家族とも友人とも、ここのところいつも 「健康第一」 「元気でいれればそれだけで幸せ」 というのが合言葉のようになっている。 2021年も、家族や友人、これを読んでくれている人々が、心身ともに元気でいられる1年になりますように。 さて今夜は年越し蕎麦でも茹でて、上司からもらった柚子でものせて食べるかな。 よいお年を! 朝陽が水平線から光の矢を放ち〜 (c) 聖子

生きていればなんとかなる 生きていれば

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毎年この時期には、会社のホリデーパーティが開かれる。 今年はこのご時世で、それもキャンセルとなり、替わりにビデオ中継で会社のお偉いさんの話と、名前も顔も知らぬシンガーの歌を聴かされることとなった。 「ねえ。こんなことにお金使うなら、お給料あげて欲しいわよね」 「明菜とか聖子とかだったら、大喜びで観るのに」 などと日本人の同僚たちとチャットで軽口をたたいたのだった。 明菜と言えば、と何年か前に紅白歌合戦で久々にテレビに顔を見せてくれたのを思い出した。 相変わらずの切れ目の美しい横顔だったが、なんだが彼女、疲れてて元気がない顔と感じたのは自分だけかしらん。 「何だか明菜も歳とったよね。口角下がっちゃってさあ」 と口の悪いオカマ友達は、自分もだいぶ歳をとったのを棚に上げて、当時その放送を観て言っていたが。 確かに、どんなに目で笑ってみせても、口角が下がっていくと元気に見えない。 心の疲労が続くと、口角が下がっていくと、そういえば昔どこかで読んだのを思い出す。 “も、もしや?!” と洗面所に駆け込み、鏡を覗くと中年オカマの口角も、下がりきっていて、はじめて会ったよな不幸顔、であった。 毎日在宅勤務で、鏡を覗くこともほとんどない生活だったから気づかなかったが、この1年で白髪もだいぶ増え、疲れた顔の中年のおっさん(おばさん!)に成り果てていたのである。 ーーーーーーーーーーー 土曜日。 天気も良いので、クリスマスツリーを買いに出かけた。 売上げの大部分は恵まれない子供達のために使われるということで、他より少々値がはるがここ数年はここで購入している。 ボランティアのガタイの良い若いお兄さん達を横目でチェックしつつ(ムフ) 、それほど大きくないが香りの良い元気そうなツリーを見つけてきたわ。 リビングの窓際に置き、飾りとライトを点けたら、パッと部屋が明るくなった。 このご時世で心が沈むことも多いが、こうやって無理矢理明るくして、口角上げて行かなきゃだわ、と思う。 「東京の友達 が引きこもりになっちゃってね」 「実家の兄がストレスで朝起きれなくなっちゃったらしくて」 と同僚や友人からもそんな話をよく聞くから尚更だ。 さて、あたしも半沢直樹でも観て元気出そうかね、 とラストに近いエピソードを酒を片手に観ていたら、 “生きていればなんとかなる  生きていれば、 なんとかね” と半沢直樹が妻

上を向いて歩こう 涙がこぼれないように

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朝、寒くてベッドからなかなか出れずに、携帯でヤフーニュースなぞをダラダラと読み続けているとちょっと気になる記事があった。 どうやら 「木星と土星が400年ぶりに大接近」 して見えるらしいのだ。 子供の頃は、時々夜空の星を眺めては、 「大人になる頃には宇宙旅行できるのかしらん」 と壮大なロマンを夢見ていて、母と一緒に近所の図書館に行っては宇宙物のSF小説を借りたり、父には宇宙オカルトものの雑誌(『マヤ』とか『ムー』とか・・・)を買ってもらったりしてたものである。 UFOものも大好きで、矢追純一の特集やら『X-File』やらを妹ときゃっきゃやりながら観ていた。 しかし、実際大人になっても、宇宙旅行やらUFOやらそんな現実は在らず、そんな夢を見てたことさえも忘れてたわよね。 その記事によると、木星と土星の世紀の(?)大接近は肉眼でも観れるらしく、 「 空が暗くなり始めたら、南西の方向を見るだけ」 とのこと。 ここカリフォルニアは、ここ数週間でコロナのケースが急増して、屋外で食事することも人に会うこともできなくなった。 できることといったら、せいぜいひとり散歩することくらいである。 今夜はちょっと遅めに散歩して、木星と土星を探してみようか。 「瑠璃色の地球」とか 「上を向いて歩こう」とか を鼻歌しながら歩いてる、不審な中年オカマを見かけたら、それあたしです。 レストランが再開してた頃に 寒空の下、居酒屋で久々に外食した時の動画

孤独の肖像

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ここのところ、朝から寒くて布団から出るのが辛い。 気がつけば、ハロウィーンも過ぎて、街を歩くと店には既にクリスマスツリーが並んでいる。 あっという間に、今年ももう11月も半ばなのだった。 「高校時代の友達がサンクスギビング休暇で実家に戻ってきてるらしいから、ちょっとみんなで地元の公園に集まって同窓会ピクニックしてくる」 と、N君は土曜の朝から、彼の地元であるここから北に向かった1時間弱程にある街に出かけて行った。 思えば、コロナ自粛生活が始まり、早8ヶ月である。 お互い出勤もせず(N君は無職ですしね…)、家族や友達ともなかなか会えず、ほとんど外も出ず一日中家で顔を合わせている。 今日は久々のひとり時間だ。 何しようかしらん!と密かにワクワクしている自分である。 まずは、と冷蔵庫にあった昨夜の残りの白ワインを、カップに注ぐ(朝からアル中の中年オカマよ)。 それから、もう何ヶ月も弾いていなかった埃のかぶったピアノの前に座り、昭和な曲(聖子やらユーミンなぞ)を弾いてみたり。 それにも飽きたら、また昭和な曲(今度は中島みゆきで!)をステレオでかけながら、だいぶ前に買って読まずにいた本たちを読むことにする。 元フジテレビ社員で早期退職した、同じくゲイで東京に住む矢吹透さんの エッセイ を読んでいたら、去年日本に滞在した食べてばかりの美味しい日々を思い出して腹減ってきたわよね。 次に日本に帰れるのはいつになるのだろう。 ふと窓の外をみると、テラスの鉢たちが寒空の下で所在無げにしている。 手入れをしなきゃなぁ、と思いつつも腰が上がらず、かわりに会社の上司から借りた半沢直樹を観たりしている。 半沢直樹を観ていると、―もちろんフィクションとはわかっているのだがー、日本のサラリーマンたちのストレスを思いやらずにはいられない。(ってか、いきなり南野陽子出てきて関西弁喋ってて、そっちのほうばっかり気になってたわよねw) 嗚呼!  予定も立てずに、こうやってひとりでダラダラと過ごす週末の至福さよ! 数年前、いつも孤独を感じながら、いつか一緒に住む相手を夢見ていた頃の自分に言ったならば本気で怒られそうだが、人間とは自分勝手なものよ。 そんなひとり時間は、あっという間に過ぎていったのだった。 ーーーーーーー コロナ禍で、別れを選ぶ夫婦やカップルが増えているという。 そんな気持ちも、オカマで結婚生

誰かと争うのではなく 誰かを憎むのではなく ④

 先週の土曜日の朝。 やり残しの仕事を終えようと朝からコンピュータに向かっていると、ベッドルームからN君がバタバタと出てきて、 「決まった!!!」 と半分涙目で突然叫んで驚いたのだった。 「え、ほんとに?!」 と自分も急いでCNNとFOXのサイトを確認すると、確かにCNNではバイデンの勝利を伝えている。 と同時に外が騒がしいので窓を開けてみると、サンフランシスコの街中から歓喜の声や、鍋を叩く音が響き渡っている。 日本のヤフーニュースなどを見ていると、日本国内ではトランプを支持する声も多いようだが、この国に住む異国人のオカマとしては、4年続いたこの国の混沌としたネガティブな空気から解放されると思うと、思わず胸が熱くなったのである。 「あたし、今夜は何日かぶりによく寝れそうな気がするわ」 「あたしゃ、4年ぶりにぐっすり寝れそうだわよ!」 と半分冗談、半分本気で友人たちと言いあったわよ。 実際には、まだ一部の州で開票が完了しておらず、またトランプも一部の州へ再集計を求めたり、裁判に訴えようとしているようだが、CNNもFOXもバイデンの勝利は確実視しているよう。 各国からもバイデン陣営に祝いの言葉が届いているようで、国内外でその週末はバイデンのニュース一色だったのだった。 その一方で、 “パーティの席や、友達や同僚と政治と宗教の話はするな” などととアメリカではよく言われるが、今回それを身をもって実感した自分である。 たとえバイデン派が多くを占めるカリフォルニアであっても、隠れトランプ派はいるもので、そんな彼らとは、どう話をしてもわかち合えないのである。 どんなに仲の良い友達とであっても、そんな瞬間を感じることが多々あり、この国の二分化をますます感じたのだった。 バイデンは勝利宣言のスピーチで、 「これからは、赤と青に分断させようとするのではなく、結束させる大統領になる。」 と誓いそして、 旧約聖書の一節を引用してこう言った。 「すべてのものごとには時機がある。 建てる時。収穫の時。新たに種をまく時。そして傷を癒やす時。 これからは米国の傷を癒やす時だ。」 土曜の朝8時。我が家の外は、人々の歓喜の声。 途中で入る鳥の鳴き声めいた変な声は、N君・・・。 昼間っから、スパークリングワイン開けて、飲むわよ!

誰かと争うのではなく 誰かを憎むのではなく ③

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“そろそろ、東部では開票が始まるわね...” 大統領選当日。 朝からテレビでは各地の投票所の報道がなされていて、仕事も手に使かず、CNNとFOXのウェブサイトを行ったり来たりしていた。 午後3時(東部時間6時)をすぎると、東部の州から開票速報が始まり、もう仕事は明日頑張ることにして、選挙速報に集中することにしたわよね。 ———————— 自分は、カリフォルニアに住む多くの有権者同様、バイデンを支持している。 トランプのビジネス的手腕は認めねばならないが、それでも非白人で外国人のオカマとしてこの国に住む身としては、マイノリティ軽視の発言をし続けそれを助長するトランプをサポートすることはできぬ。 この4年間で、この国が急激に排他的な雰囲気になっていったのを肌で感じていた。 道を歩いていたら見知らぬ白人に、 「くそアジアンはとっとと国に帰れ!」 と突然怒鳴られ身の危険を感じたことも一度ではない。 また、メキシコ出身の同僚や日本や中国出身の友人が一度この国をでたらビザの発行を受けられなくなるかもと、親の顔さえみに帰れない日々を送っている。 しかもこのコロナの時世に、マスク不要を意図するような発言を繰り返したり、実際ホワイトハウスをコロナ感染源にしたりと、感染者増加に助長しているトランプである。 数ヶ月前に行ったシャスタ山近辺は、カリフォルニア州内でも共和党支持者の多いエリアなのだが、店でもどこでもマスクしてない(アホな)人だらけで、びびったわよね。 自分は永住権でこの国に住んでいるが、選挙権はないので、僅かな募金で青の民主党を応援することくらいしかできないのだが。 ーーーーーーーーーー 4年前と同様 に、地理的に共和党支持者の多い州(赤の州)の開票からはじまるから、トランプ優勢ではじめの数時間は進んでいく。 中部は赤の州だらけなので、結果がトランプでも驚かないが、いわゆる激戦州と言われる赤にも青にもなりうる州を戦々恐々と見守っていた。 特にそのうちのフロリダ州を制すれば、大統領選を制すと言われているから、前回も激戦で赤の勝利となったこの州の結果を注目していたのだが、今回も早々トランプ当確と出て、周りのバイデン支持者の仲間たちからは、 「やばいかも」 「4年前の悪夢思い出してきた」 と不安の声が聞こえてきた。 テレビに映し出される地図を見ると、他の激戦州であるジョージア、ペン

時々 ふっと思い出す Precious memories

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心が疲れている時や、心配事が頭から離れずグルグルしている時に、 「14秒間、今までの人生で楽しかったことや幸せを感じたことを思い浮かべる」 というのが効果的らしい、とどこかの記事で読んだのを思い出した。 当初それを読んだ時は、 ”そんなんで、気分が晴れてストレスが軽くなるなら、誰も苦労してねーわよね” と内心まったく信じていなかったのだが、 このコロナ禍やら何やらで、ここのところずっと心のMPがかなり下がっているのを感じていたので、騙されたと思って実践してみることにする。 とはいえ、人生で楽しかったことや幸せだったことって何と突然問われても、すぐに思い出せない中年オカマである。 それでも、iPhoneやgoogle photoに保存してある写真を眺めていくと、数年前に行ったヨーロッパ旅行の写真やら、シャスタ山のキャンプやら、去年日本で再会した家族や友人との写真やらが出てきて、随分懐かしい気分になってきた。 すっかり忘れていてここに載せもしなかったが、今年コロナ禍前にメキシコのプエルトバジャルタに小旅行に行った写真も出てきたわ。 例年なら、どんなに仕事が忙しくとも、 "この山乗り越えたら、年末は日本帰ってゆっくり温泉でも入りにいって、うまいもん食って・・・" などと旅行を目標にがんばれたが、このご時世で今年はそんな予定もない。 それでも、こうやって昔の写真たちを眺めていたら、ちょっと元気になってきた気がする(気のせいかすら)。 ーーーーーー 母から、LINEでメッセージが届いた。 「伊藤比呂美って人のエッセイ、面白いから読んでたら、サンフランシスコの市庁舎で娘さんの結婚式やったって話が出てきたわ」 家族がはるばる日本から来て、この街の市庁舎での結婚式に参加してくれたのも、気がつけばもう10ヶ月も前の話である。 「ほんとう良い旅だった。今年の楽しかったことっていったら、あんたの結婚式だけだわ。」 母や家族にとっても相当なストレスだったに違いないサンフランシスコ滞在も、こうやって時々振り返ってくれている。 そしてそれが、こんな時世でも、楽しい記憶のひとつとして思い出してくれるのなら、自分にとっても本当に幸せなことである。 と、またも密かに涙する自分なのだった。 オカマがやたら集まる、メキシコのビーチタウン プエルトバジャルタ。 失った夢だけが、美しくみ

どこかで掛け違えてきて 気が付けば一つ余ったボタン

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いつものようにバタバタと仕事をしていると、家の外で清掃車の音が聞こえ、ふと時計をみると既に朝の4時である。 まだ暗い空には、遠くに金星が見える。 明日もあるから、いい加減そろそろ寝ないと老体は持たない、と思いつつも、 “寝たら、また数時間後には朝になって仕事なのよね” と思うと、すぐに寝床には向かえず、 “とりあえず30分だけ” と、台所に向かい、安物の焼酎の水割りを作る自分である。 --------------------------------------- 日中はアメリカ国内のクライアントとやり取りをし、夕方になると日本が朝になるから東京オフィスと電話会議、そのあとシンガポールのクライアントに何通かメールをしていたら、ロンドンから問い合わせが入り、その対応をしていたら、気がつけば夜中の3時、4時である。 こんな事を友人に言ったならば、 「ふーん。あんたは、なんだか世界を股にかけて、国際派の仕事してんのねぇ。」 「へー。あんたの仕事、一昔前のトレンディドラマの主役のオンナの相手のオトコ(オカマ?)みたいな設定か」 などといった返事が返ってくるかもしれぬ(こねえか)。 実際は本当に地味な仕事内容で、仕事量ばかりが多くて、対クライアントの仕事であるから、無茶振りな依頼が来る事もあり、ストレスでどんどん人が辞めていく、側からみてもブラックな職場である。 この数ヶ月は、本当にしんどい日々で、朝の9時前にコンピュータの前に座り、気がつけば夜中(朝か)の5時になることもしばしば。 クライアントとの時差のせいもあるが、それよりもこの仕事量が半端ないので、日本人の同僚ともいつも、 「もう無理ー」 「まじ辞めたいー」 「もうHPもMPもゼロー」 などと言った愚痴が長年口癖になっている。 元々の大学での専攻も、前職の仕事内容も、今の仕事と一切関係なく、自分が興味のある分野でも業界でもないのだが、この国で働くためにビザ・グリーンカードのサポートをしてくれるところを、と探していたら今の会社が拾ってくれたのであった。 同業女子のM子が言うように、嫌なら次を探せばよいのだろうが、そもそも次に自分が何をしたいのかもわからず、40過ぎの中年オカマの自分が運良くどこかに拾ってもらえても新しい環境でやっていけるかしらん、などとウダウダ言ってるうちに時だけが過ぎていくのであった。 —————————

私らしく1日を終えたいこんな夜

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 「最近、よく眠れないんだけど、どうしたらいい?」 と、最近、同業女子のM子から相談を受けた。 コロナ禍で自粛生活も7か月目に入り、職場など自分の周りでも、深い眠りにつけないという声をよく聞くようになった。 自分はコロナ禍前から、仕事やら何やらのストレスで、夜中にしょっちゅう目を覚ましたり、まだ外も暗いのにトイレに起きたり(こっちは老化?)していたので、ネットでちょくちょく深い眠りにつくための情報を、集めていたのであった。 とはいえ、 「Mちゃん、やっぱり朝のうちに散歩して、太陽の光にあたるのが大切みたいよ」 などとしかとっさに出てこず、大したアドバイスはできなかったのだが。 自分も、少しでも睡眠の質をあげたい!と、中年オカマが、寝る前に白湯やカモミール茶を摂って身体を温めたり、ラベンダーのオイルでマッサージしたり、最近出たラン・ランのバッハのピアノアルバムを聴いたりしているのだが、効果はまちまちである。 日本に住んでいれば、寝る前にあったかい湯舟につかって、心身ともにゆっくりできるのだろうが、我が家の風呂釜はどんなに湯をためても、ひざ下程度なのよ・・・(こんなんじゃ、風邪ひくわ!) ーーーーーーーーーーーー ここ数週間、カリフォルニアを含む西海岸各地の山火事の影響で、あまりの空気の悪さに散歩どころではなく、1日中空気清浄機を回して家に籠っていた。 先週などは、朝起きたら空が真っ赤で、 "つ、ついに世界の終わりが来たのね!?" などと一瞬慄いたのだが、昨日、今日は久々に青空が見えている。 「久々に、外でメシ食べたいね~」 「空港の近くのラーメン屋なら、テラス席もあるから、コロナも心配しないで食べられそう」 と、以前同じくサンフランシスコに住むブログを書いてる方がおすすめしていた、ラーメン店に向かうことに。 青空の下、きれいな空気を吸って(美味いラーメンも食える!)というのが、どれだけ有難いことか、改めて身に染みた訳なのであった。 我が家の外は、朝からこの空。 散歩どころじゃねーわな。 同じくカルフォルニアに住む中年オカマからは、 この映画思い出した!って、これ送られてきたわよね。夏木マリ! 里見八犬伝 (C)東映 一方で、このゲーム思い出した!って、これ送ってくる輩も(古いわ・・・) (C) 任天堂

夏の午後 猫が日影で暮れて行くときを過ごしてる午後

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夏の午後。 この時期には珍しい熱波で、家でじっとしていても、汗が出てくる。 元々、夏でも滅多にこんなに暑くなることはないから、家にクーラーもない。 その上、山火事の影響で、目に見えてわかるほどに外の空気が悪いから、窓を開けることもできない訳なのだ。 うちわを煽ぎながら、遠い日本の夏を思い出している。 ——————— 家の中にいるより、緑の多い公園の日陰なら、涼しいだろうと、いつものメンツでゴールデンゲートパークでピクニックをすることに。 皆、マスクをして、酒は家から各自持参で集合だ。 「今年の夏は、毎日家でYouTube観てる間に終わってくわ」 「自分も、マッサージ行けないから、ブラジル人のいいオトコが、マッサージされてる動画観て、マッサージ行った気分になってる」 「私は、最近ずっとかわいい猫たちが戯れてる動画観て癒されてるわ」 「あんた、それ本物の猫? それとも人間の”ネコ”?」 「やだー。確かに最近ご無沙汰で欲求不満だけど! などと、木陰で、安い白ワイン片手に皆と久々にこうやって下らない会話をしているだけでも、一時暑さを忘れることができたのだった。 ーーーーーー 今日のピクニックのメンツは、皆なんだかんだ言いながらも、ちゃんと毎日長時間歩いたり、ランニングをしたりしており、コロナ太りに陥っている様子はない。 一方自分といえば、最近は外の空気が悪いのを言い訳に、朝の散歩もサボりがちで、体重はうなぎ上りである。 これじゃまずいわ!と、仕事中に同僚からも勧められた、任天堂の「リングフィット」を購入したのである。 「家にいながら毎日ゲームのように楽しみながら痩せられる」なんて嘘のような話であるが、ちゃんとやればしっかり効果があるらしい?! これで、コロナが落ち着く頃には、弛んだ腹も、肉肉しい腰回りもすっきりして、皆が羨むカラダになっちゃうかもしれないわ?(なんのこっちゃ) と夢見たいなことを言った傍から、リングフィットで汗かいたあとに、 「やっぱり夏はビールと焼肉だよね?」 とか言って、ベランダで肉をつっついてる時点で、痩せるどころか中年体型に向かってまっしぐらの夏なのである。 (そんな中年の夏の動画はこちら)

とめて夏を水晶(プリズム)色に (2)

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「シャスタに行くなら、やっぱりハートレイクは訪れるべき!」 と、オカマ仲間のK枝に以前から話を聞いていたものの、何度か訪れたシャスタではあるが、今まで一度もその"ハートレイク"に行く機会がなかったのである。 ネットで調べてみると、どうやらちゃんとした登山用の道があるわけではなく、わかりにくい道筋で、辿り着けずに断念する者も多いと書いてある。 中には、 ”山の神様の呼ばれた人だけが、辿り着ける湖らしい。" などと、少々ぶっ飛んだ記述もあったりするのだが、 空気と水が美味しく、耳が痛くなるほど静かなこの山に滞在していると、そんなぶっ飛んだ話もなんだか嘘じゃない気もしてくるものである。 以前シャスタに来る際に調べた時も、 "山の下には、地底都市が埋まっている" "UFOがしばしば上空を飛んでいる" "地底で富士山とつながっている" などと、"パワースポット"と呼ばれる所以があちこちに書かれていて、 「と、とんでもない山があるものね・・・」 と多少不安になったのを思い出したものだからなおさらである。 ------------------------ レッドウッドの香りのする空気の中、鳥のさえずりで目を覚ます。 「せっかく遥々シャスタまで来たんだから、その伝説の"ハートレイク"とやらに行ってみようじゃないの!」 ということで、キャンプサイトで簡単に朝食を済ませ、ネットの情報を頼りに、早朝からその"ハートレイク"を目指すこととなった。 "道に迷いそうになったら、道すがらすれ違う人に尋ねればいいのよ。人生と同じでね。迷ったり、困ったことがあったら、周りに助けを求めればいいの。" という、K枝のまっとうなアドバイスを元に、幾度と分かれ道にぶつかれば、時々すれ違う人に道順を尋ねて歩き続ける。 あまりの急な山道に途中で何度か挫折しそうになりながらも、ー今回は山の神様が呼んでくれたからかー、1時間ほどの登山で無事に"ハートレイク"を一目見ることができたのであった。 #あまりの美しさに疲れも忘れ、声も出ないオカマ二人 シャスタ山(さん)、ありがとう。 また来ます! 詳細のへたっぴ動画はこちら↓

とめて夏を水晶(プリズム)色に (1)

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わが職場にキャンプ狂の上司がいて、毎年夏になると、繁忙期だろうか何だろうが、週末になるとキャンプをしに山に籠ってしまう人(日本人)がいる。 その際の写真をその上司から何度か見せてもらって、そのあまりにも美しい自然に囲まれた風景に、 「自分もいつか行ってみたいです~!」 「こんな景色の中で酒飲んだら、おいしいでしょうね~。」 などと、口では言いながらも、 "あんた、テントだと身体中痛たくなって寝れないらしいわよ~?" "場所によっては、トイレもシャワーもないんだから、あんたには無理!" "時々、クマがでるらしいわよ。あ、でもあんたは、マッチョなクマ(男)になら、襲われたいタイプか!?" などと、以前からオカマ仲間に脅されたからか、 この40+年間生きてきて、いわゆる、自分でテントを張り、飯を作って、自然の中で過ごす、というものを経験したことがなかったのである。 (やったとしても、せいぜい小奇麗なホテルやロッジの敷地内にテントを張って寝泊まりした程度だ。) しかし、このご時世でどこへも旅に出られず、せいぜい週末に日帰りで近場のワイナリーかピクニック、はたまた市内を散歩する程度だと、やはり心身を100%切り替えてリフレッシュできないものである。 とはいえ、このご時世、飛行機に乗ったり、ホテルに泊まるのは抵抗がある。 "パンドラの小箱を開けるように~” と30年以上前の夏に、南野陽子が歌っていたが(最近はナンノ、『半沢直樹』に出演してるとかで・・・。観たい‼)、 それならば、人との接触もほとんどない自然の中で、 「キャンプ、やっちゃおうか!?」 と、オカマ仲間の脅しは聞かなかったことにして、ついに自分もパンドラの小箱を開けることとなったのであった(大げさ)。 ------------------------ とはいえ、キャンプ初心者の自分である。 まず、何を準備したらいいのかも、手探り状態である。 ネットで、 "キャンプ 初心者" "キャンプ 持ち物" などと検索すると、親切に事細かに説明されたサイトがたくさん出てくる。 それらによると、とにかく「寝床」と「メシ」をなんとかすれば、あとはなんとでもなるようである。 早速オンラインでテント、寝袋、キャンプ用のフライパン

やり切れない程 退屈な時があるわ

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 近所に住むゲイ友達のM男から、 「ねえこのオトコ、イケるわ〜!」 などと、朝っぱらから写真付きのLINEメッセージがよく送られてくるのだが、 今日送られてきたのは、裸の男の写真ではなく、可愛らしい富士山の形をした箸置きの写真だった。 「あら、可愛い。どしたのこれ?」 と問うと、近所の店で買ってきたのだという。 「このご時世で、毎日家で飯作って、毎日旦那と向き合って食べてると退屈で、せめて箸置きでも気分変えたくなるじゃん」 と、見た目の厳ついM男らしからぬ可愛らしい発言ではあるが、確かに言い得ている。 我が家も、この時世で毎日家メシとなり、作る料理こそネットでレシピを探しては、ちょこちょこ違ったものを試してはいるものの、もう自粛生活も6ヶ月目に突入しようとしている今、正直飽きがきている。 “確かに、M男の言う通り、皿やら箸置きやらを変えるだけで毎日の食卓も気分変わっていいかもね” というわけで、我が家もこの週末は「皿探し」の旅に出ることとなった。 --------------------- 同じくサンフランシスコに住むゲイ友達のNさんは、コロナ騒動の前には、彼の自宅でよく食事会という名のカラオケ会を開いてくれていたのだが、彼の素晴らしい手料理は、いつも素敵な皿に盛られていたのを思い出す。 “どんなに下手っぴな我が料理でも、あんな素敵な皿なら気分も上がって、日々の家メシが楽しくなりそうね” と安易な理由で、Nさんちのような、オサレな食卓をめざすべく、向かうはサンフランシスコの隣町サウサリートにある「Heath Ceramics」という店だ。 どの皿もシンプルなデザインだが、色合いや質感がよく、大した料理もできない自分でも思わず見惚れてしまう。 話によると、市内の名の知れたレストランの多くがここの皿を使っているという。 しかし、店に並べられた商品の値札を見ると、どれもかなりの値段である。 洗ってるうちにすぐに欠けたり割ったりしてしまう庶民には、これはあまりにも高すぎるじゃないのよお・・・! 遥々隣町まで皿を買いに来たものの、手ぶらで帰ることになろうかというその時、店の端に、本来なら色やら形に分けて陳列されている皿が、適当に置かれている棚があるのをN君が見つけ、店の人に問うと、 「陶器を焼いた時に、imperfectionだったものは定価でお売り出来ないので、こちらで割引

そうさ つらい時も顔を空に向けろ

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我が家のN君が、コロナ禍の煽りを受けて無職になった。 自分は、また彼を自分の会社の健康保険に入れる手続きをしたり、今後の諸々を考えていたら憂いて落ち込んだりしていたのだが。 本人は思ったほど落ち込んでもおらず、毎日ネットで職探しやら、オンラインでのクラスを受けたりして無職生活を楽しんでいる。 自分が若かった頃を思い出すと、 “あたし、いつか石油王みたいな金持ちのいいオトコ見つけて、楽して暮らすんだわ?” などと乙女な夢を抱いていたが、この調子だといつまで経っても自分で汗水流して稼がねばならなそうである・・・。 そんな中、自分が仕事の締め切り前で、発狂しそうになりながらコンピュータに向かっていると、 「ヒッヒッヒ」 と隣で笑い声が聴こえてきて、何かと思えば、仕事探しもせずに、くだらないYouTubeビデオを観て笑っているN君である。 思わず殺意を覚えて、 “団地妻 危険な昼下がり殺人事件” などと昭和の2時間ドラマな状況になりかねなかったが(なんのこっちゃ)、 「まあ、体も元気で、心も落ち込まず、健康でいてくれるなら、よしとしなきゃだわね」 と自分に言い聞かせたのだった。 ーーーーーーーーーーーー 土曜日の午後。 「月曜にズームで仕事の面接入ったから、髪の毛切らなきゃ」 と、コロナ渦で髪も髭も伸ばしっぱなしだったN君が言うので、 しょうがないわねえ、と自分が髪を切ってあげることになった。 左手にはバリカン、右手には酒(危ない)を持つ中年オカマ。 側から見たらホラーだわよね・・・。 子供の頃に観た、ハウス世界名作劇場の「トムソーヤの冒険」の散髪のシーン(今の若い子には分からんだろね)をふと思い出し、 そんなアニメの主題歌を鼻歌で歌いながらバリカンやってたら、ちょっと切りすすぎてハゲ出来ちゃったけど、本人には言わないでおくわ。

野生の風吹く日に 今のすべてを捨てて

その若手の俳優さんのことは、あまり知らなかったのである。 知っていたのは、以前彼が、ミュージカル「キンキーブーツ」の日本版に女装して出演した、と言うことくらいだ 。 その彼が亡くなったと言うニュースが報道されてから、日本に住む中学時代の同級生やらオカマ友達やら友人たちから次々にグループメッセージが送られて来て、彼の詳細を知ることとなったのだった。 「あんなにいい男で、演技も踊りも歌もできる才能があって、なんで死ななきゃいけなかったの。」 「周りからも、良い人って人気があって愛されてたのに、なんで。」 「あたしがそばにいたら、守ってあげたのに。」 と皆、彼の死をまだ信じられないでいる。 “死を選ぶくらいなら、全てを捨てて外国にでもどこへでもいいから、まずはそこから逃げ出して!” と他人である自分は簡単に言うが、本人はそれすらも考えられないほど、疲れ果ててしまっていたのかもしれない。 自分も、仕事やら何やらでストレスでやられると、夜の眠りも浅くなり、もう全て捨ててしまいたい、と思うこともある。 日本で育児の傍ら働いている中学の同級生も、この街に住む友人の中にも、ー特にこの時世だからかー、同じような気持ちになったことがある言っていた。 それでも皆なんとか今までやってこれたが、彼のようにふとしたきっかけで死の選択に落ち込んでしまうのは、誰にでもあることなのかもしれない。 日本で高校の先生として働いている友人ともそんな話していたら、最近生徒の一人が自死を選んで亡くなったという。 「だから、うちらも辛い時は、お互いなんでも話して相談しようね。」 「これだけ生きてると色々辛いことがこれからまだあるだろうけど、その時はそれが永遠に続くわけじゃないって信じて行かなきゃね」 「このご時世で、いろいろ考えると心が病むけれど、楽しかった下らない日々を思い出したりして、口角上げて行こうね。」 などなどと、お互いちょっとくたびれて来ている友人達と、励ましあったのだった。 ーーーーー サンフランシスコに住む日本人のシェフの友人が、10年ぶりに日本に帰っている。 久々に会ったお姉さんと、広島の尾道を旅行している美しい写真をインスタに載せているのをみて、 自分も次に日本に帰る時は、尾道行きたいなぁ、と夢見ている。 今年亡くなった、大林宣彦監督の映画のロケ巡りしながら尾道の地元の美味しいもの食べ歩きし

河よりも長くゆるやかに

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例年、6月のプライドウイークには、我が家でピンク色をドレスコードに友人を呼んで小さな集まりを開いたり、 7月の独立記念日あたりには、ソノマのオカマの集まる街のプールで、ゆっくり過ごすか、N君の実家でバーベキューなどをしたものである。 今年は、この時世でそういう予定もなく、家でだらだらと過ごしている。 YouTubeとNetflixとあつ森だけが頼りよ! ネットやゲームばかりで運動も朝にちょろっと歩く程度。そりゃ太る訳だわ...。 たまには自然に囲まれて、美味しい空気の中、キャンプでもしたいなどと思うが、やるにはテントも寝袋も買い揃えねばならぬと思うと、なかなか重い腰が上がらない。 はて、キャンプはハードルが高いが、森に囲まれた河辺でピクニックやハイキングなら、日帰りで帰ってこれるし、いいんでね? と、急遽独立記念日の朝に思い立ち、我が家から1時間半ほど行ったところにある、ロシアンリバーを目指すことになったのであった。 自分が弁当にとおにぎりやら卵焼きを準備している間に、メインのおかずはN君が何やら作っている。 布製クーラーに弁当やら酒やらを詰め込んで、ピクニックチェアとシートを車に乗せたら出発だ。 ————— ロシアンリバーは、ワインの産地としても知られるソノマ郡にあり、以前は夏になると世界中からオカマたちが集まってきて、キャンプやらカヤックやらダンスパーティを楽しんでいた。 自分も若い頃は、オカマ仲間と恥ずかしげもなく競パンを履いて酒を片手に、川辺でぎゃあぎゃあ騒いだものである(遠い目)。 今はこの場所もそんな面影は薄れ、子供連れの家族や、学生たちが川遊びを楽しんでいる。 弁当と冷やした白ワインで腹を満たしたら、川の流れを聴きながら、適当に持ってきた文庫本をめくる。 うっかりすると、うとうとしてきそうだが、これでは本来の目的である、運動不足解消にならぬ! と、川辺から車で数分行ったところにある「 アームストロングレッドウッド自然保護区 」と呼ばれる州立公園ででハイキングをすることに。 1000年以上前から静かに立ち並ぶ、背の高いレッドウッドの木々の中を、遠くに聞こえる鳥の囀りを聴きながら歩いていると、心も身体も洗われるようだ。 いつだったかイギリスかどこかの研究機関が「森林浴はストレスレベルを下げるのに効果が高い」などと発表した記事を読んだが、どうやら嘘ではなさそ

「この味がいいね」と君が言ったから

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「うちで野菜いっぱい採れたから、お時間ある時取りにいらして?」 家から歩いて行けるほどの距離に住む日本人のご近所さんからLINEが届いた。 もう半年前になる結婚式の時も、準備で色々とお世話になった、いつも頼りになるS兄貴(姉貴?)である。 この時世で毎日家で飯を作って食っているから、これはありがたいわ!、と早速頂きにいくことに。 パートナーと長いこと一緒に住んでいるというS兄貴の裏庭には、柵で囲った畑がいくつもあり、そこらのスーパーでは売っていない水菜や紫蘇やかぶなどを栽培している。 「獲れすぎちゃったから、いっぱい持って帰って頂戴!」 とありがたいことに、紙袋いっぱいに新鮮な野菜を持たせてくれたのだった。 最近生野菜も食べてないし、久々に水菜のサラダでも作ろうかしらね、などとサラダ記念日の俵万智的な気分(なんのこっちゃ)で、家路につく乙女な自分である。 ーーーーーーー 「俺らも畑持てるくらいの庭のある家に引っ越したいよね」 と同じく近所に住むM男とよく話をする。 お互いこの歳になっても家を持たず、貸家に住んでいる中年オカマの身である。 「コロナ禍で都心に住む必要はないとサンフランシスコから人口流出が始まったとニュースで聞いたわ?」 と、それでもサンフランシスコ市内の素敵な一軒家を買って住むなぞ、まだまだ夢の話である。 ーーーーーーー 家に帰り、頂いた野菜を洗って冷蔵庫にしまったり、水を少し入れたコップに活けたりしていると、新鮮な野菜の有り難さに気づく。 若い頃は肉さえあれば文句なかったが、今では野菜がなければ体が喜ばない。 歳とったわよね(ババア)。 さて、S兄貴や会社の上司の野菜作りに憧れて、自分も我が家の狭いベランダで、野菜作りをしてみようじゃないの、と何度か試しているのだか、なかなかうまく育ってくれない。あるいは育っても長続きしない。 「サンフランシスコは気候が寒いから、しょうがないわ?」 などと言い訳をすると、友人たちに 「あんたは花も水をやらず枯らすタイプよ 「釣った魚に餌はやらないタイプのあんたが、種から野菜育てるなんて無理」 と言われ放題である。 それでも凝りずに ーコロナ禍でほかにやることがないだけかもしれぬがー、この夏は好物のルッコラを育ててみることに。 種を撒いて、1週間もしないうちに小さな芽が出て、あっという間に食べられそうな葉っぱとなったの

When you believe

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「今月末から営業再開の予定だったけど、延期になっちゃったわ。ごめんなさいね。」 いつもお世話になっている、マッチョのベトナム人のオネエさんがやっている床屋からメールが来ていた。 ついこの間、緩和政策でレストランなどの店が少しずつ営業を再開したと思ったのも束の間、カリフォルニアで感染者がまた急激に冷えているとのことで、緩和政策も一時中断となったようなのだ。 確かに最近皆気持ちが弛んできたのか、マスクをせずに街中を出歩く人や、公園やレストランのテラス席ではソーシャルディスタンスを守らない輩がニュースになっていた。 カストロにあるお仲間の集まる飲み屋も、店先に無理やりテラス席を作って営業を再開したところがあるが、酔っ払ってルールを守らないオカマが多いようで、いつまた営業停止になるかわからない。 —————————— コロナ禍が始まる前は、毎日のように仕事帰りに飲み屋に寄って、その日のストレスを癒していたものである。 特に毎週月曜には、「ミュージカルナイト」と銘打って、オカマが大好きなミュージカルの動画ばかりを流す飲み屋があり、知らぬ隣人と皆で声を張り上げて、酔いに任せて歌ったりしていたのだ。 そんな日々も遠い昔の記憶である。 -------------------------------- 「それじゃぁ、家でミュージカルナイトやればいいじゃん!?」 N君の気まぐれな提案で、我が家でも毎週月曜にはミュージカルナイトを開いている。 とは言っても、仕事の後に、家で酒のつまみにとYouTubeでミュージカルチューンを適当に選んで、リビングルームのテレビで観るだけなのだがね。 コロナ禍で自宅からメリルストリープらが 呑みながら歌う、 カンパニーの「Ladies who lunch」 このミュージカルは観たことがないが、陽気な酔っ払い女優達が好きだわ。 レミゼ10周年の名演、One Day More。 当時NHKでテレビ放映されて、 ビデオ(昭和!)にとったの。 擦り切れるほど繰り返し観たわよね。 (日本からは鹿賀丈史氏が参加出演してたわ) トニー賞のパフォーマンスは 歌と踊りの美味しいところ取りで楽しい。 他にも探すと色々あります。 プリンスオブエジプト「When you believe」 ホイットニーとマライア姐さんのデュエット版もほんとよく聴いたわ。 このコロナ禍でいつミラクル

夏の扉を開けて 私をどこか連れていって

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コロナ太りとコロナ鬱予防にと、毎朝仕事前や週末には、近所を歩くようにしている。 街中を歩いていると、ここ数週間でレストランやカフェの外にはテーブルが出されるようになり、人々が距離を保ちながら、コーヒーを飲んだりしているのに気づく。 日本では緊急事態宣言が解除されたと聞いたが、カリフォルニアも少しずつその緩和が進んでいるようだわね。 「久々に近所のレストランの外のテーブルでお茶してきたわ。通行人を気にしたり、マスクしながらだから大変だったけど」 先週末、いつものオンライン飲み会で自分が言うと、 「あたしは、ネットで出会った男と久々にデートしてきたわ! 屋外でマスクして距離保ちながら散歩しただけだけど!」 とモテ男のK枝もデート活動を再開したようだ。 すると、アメリカ人友達のE子は 「自分は今週末、久々に家に男を連れ込んで、ちょめちょめする予定! 今からもう我慢できねえわ!」 と大胆発言である。 コロナ騒動が始まったばかりの数ヶ月だったらならば、そんなことをしている友人がいたら、即座に非難していたかも知れぬ。 だが、この状況が長くなるにつれて、人それぞれ事情やストレスのレベルが違うから、一概にすぐさま非難するのは難しいと思うようになった。 自分はN君と住んでおり、昼飯、夜飯の際には日々のストレスを話し合ったり、家族とは毎日のようにLINEで連絡を取り合っているから、なんとかやれている。 一方で一人で暮らしていたり、仕事柄、人とやりとりがあまりなかったり、家族との関係やら何やらで人それぞれ事情が違うと、自分基準で人の行動を判断するのは難しいのである。 我が家ではスーパーで買ってきた食料品やら何やらを、アルコールスプレーで殺菌してから保管しているが、そこまでする必要はないと言う人もいる。 はたまた、マスクをして周りの距離を保てるのならばレストランの屋外で食事をするのは大丈夫と思う自分がいる一方で、レストランは色んな人の手が介在するからまだ怖いと言う友人もいたり、レストランのビジネスをサポートしたいと一部の街で通常営業を再開したレストランの屋内での食事も気にせず楽しむ人もいるわけで。 最終的には、州が認める範囲で、いかに自分を守り、人を守るか。あとは自己判断と自己責任なのだ。 ------ そんな中、この週末は久々にナパバレーのワイナリーに、3ヶ月ぶりに仲間5人と集合してきた

何も求めずに 何も変わらずに いつも僕らを照らす太陽を

金曜日の朝方。 早々と目を覚まして、窓を見るとまだ薄暗いが、鳥の鳴き声がちゅんちゅんと聞こえてくる。 眠りが浅いせいか、ちょっとした物音で目を覚ましてしまう(ただの老化かしらん)。 それでも、鳥たちの声を聴きながら、朝を迎えるのは趣があってよいものである。 以前は、鳥の鳴き声が聞こえることなどあまりなかった気がするのだが、このご時世に車や人の気配が減ったせいで、鳥たちが集まってきているのだろうか。 ------------- 仕事を終え、気分転換に何か楽しげな本でも買って読もうかとAmazonを眺めていたら、アルベール・カミュの「ペスト」がベストセラー1位としておすすめ欄に出ている。 カミュの「異邦人」は遠い学生時代に読んだ覚えがあるが、「ペスト」は今まで読んだことがなかった。調べてみると、どうやら今の時世を予言するような内容で、70年以上前に書かれた作品が、今世界中で売れているらしいのだ。 コロナ疲れの中、わざわざそれを読まんでもよかろうと、かわりに佐野洋子の軽めのエッセイやら、よしながふみの短編漫画などを買って読むことにしたわ。 夜飯を終え、気分転換に何か楽しげな映画でも見ようかとテレビをつけると、Apple TVのおすすめ映画欄にパニック映画の「 コンテイジョン 」がでてきた。マット・デイモンやジュード・ローが出ていたこの映画も、確か今の時世を予言するかのような内容だったはずだ。 コロナ疲れの中、あんまり観る気にならなかったが、N君が久々に観たいと言うので観てみたら、やっぱりリアルすぎて、ちょっと気持ちが沈んだわよね・・・。 ------------ 「コンテイジョン」の劇中に出てくるサンフランシスコの街は、通りという通りが薄暗くゴミで溢れていたけれど、実際今サンフランシスコの街を、運動不足解消にとマスクをつけて歩いたならば、ゴミなど溜まっていない、前と変わらぬ清潔な通りが続いている。 毎晩夜8時になると他の都市同様に、この街でも医療従事者への感謝の意を込めて、あちこちから拍手やら叫び声が聞こえてくる。中には家の電気をつけたり消したりしてその謝意を表そうとしている家もある。 自分も我が家の狭いベランダに立ち、この状況でもいつも笑顔で明るく迎えてくれるスーパーのおっちゃんや、毎週ちゃんとゴミを収集にしに来てくれるお兄さんたちに、「ありがとうー!」と、ゲイバーのマ

追い掛けて 追い掛けても つかめないものばかりさ

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「今日の夜ご飯に何にしようか」 と、適当に作った焼きソバのランチを箸でつっついてる傍から、夜飯の話をしている。 普段なら、昼飯を食っている最中に、夜飯のことなど考える気にもならぬが、この状況下、場合によっては冷凍保存している肉や魚を早めに解凍せねばらならないから、思わず箸を止めて真剣に考える。 「冷凍庫に牛と豚のひき肉もあるし、久しぶりにミートソースのパスタにしよっか。それともハンバーグ?」 などと夜飯を決めようとしていると、 「みんな、今日のディナー何~?」 と同業者のM子から、LINEのグループメッセージが携帯に届いた。 この状況下で、週末の予定も休暇の予定もない中、みな考えることといったら、食べることくらいなのである。 自分がフォローしている、インスタグラムもブログもユーチューバーも、最近は食に関するポストだらけだ。 --------------------------------------- この状況に入る前は、せいぜい週に1、2回家で夜飯を作る以外は、外食に頼っていたものだから、自分で作れる料理のレパートリーもかなり少なく、日々の献立に頭を抱えている。 それでも、週末にもなると何か新しいものを試してみなければとの強迫観念か、ネットのレシピを漁ったりしてジタバタしている自分だ。 ふと巷でパンやらケーキやらを焼くのが流行っているらしいということで魔がさしたのか、 “世の人もすなるといふ、パン焼きといふものを中年オカマもしてみんとてするなり” と紀貫之めいた気分でパンを焼いてみようと思い立った。 どうせやるなら、となかなかここらで食すことのできない惣菜パンを焼こうじゃないの! とネットでいろいろ調べた結果、「ベーコンエピ」に挑戦することにしたのだが、そもそも40+年生きてきてパンを焼いたことなどない自分にとって、あまりにもハードルが高過ぎたようだ。 捏ねたり練ったりしてオーブンに入れて数十分後に姿を現したものは...。 この得体の知れぬ物体は何ぞや? 使徒を肉眼で確認! (c)エヴァ こんなの絶対インスタに載せられないじゃないのよ。 それでも懲りずに翌週末は、先週の考えを改めもっとシンプルな、ソーセージロールパンを焼いてみることにしたわ。 が、しかし待つこと十数分。オーブンを開けると...。 またまた謎の未確認物体が! かじったら固くて、 歯茎から血が出たわよ

守ってあげたい あなたを苦しめる全てのことから

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外出規制がはじまってから、1か月以上が経とうとしているのに、未だにこの生活に慣れぬ自分である。 寝る前に、明日の朝起きれば、 「やだ~。とんでもない悪い夢みてた! パニック映画みたいなやつ!」 と普通の生活のできる世界に戻っていることを願うが、翌朝目を覚まして携帯を覗けば、コロナ関連のニュースであふれ、これが夢でないことを改めて知るのである。 それでも、朝は来るし、腹は減るし、やらねばならぬ仕事もあるし(このご時世、仕事があるだけでもありがたい・・・)、日々は過ぎてゆく。 家に1日中籠って、暗く悲しいニュースばかりを目にしていると、心が鬱々としてくるので、意識して他のことに注意を向けるようにしている。 YouTubeで 清水みっちゃんのモノマネ やら 志村けんさんのコント 動画を観たり、 埃をかぶっていた任天堂Switchをひっぱりだしてきて、流行りの「どうぶつの森」をはじめたり、 ネットのレシピ見様見真似で、パンを焼いてみたり(大失敗したがね・・)、 東京に住む長年のオカマ友達たちと、オンライン飲み会をしたり・・・。 (それでも、酒の消費量は確実に増えてるわ!) ------------------ 土曜日の朝。 昨年末に東京で行われた、LGBTQ支援音楽イベントが、 YouTubeで無料公開 されているというので、酒を片手に鑑賞することにする。 松任谷由実やMISIA、前述の清水ミチコも登場するというから、行けるものなら東京まで観に行きたかったものだから、海外からもこうやってネットで見れるというのは嬉しい。 中には当事者の清貴氏やドラアグのパフォーマンスがあったり、清水みっちゃんの手紙の朗読やらモノマネがあったりと、盛沢山の内容である。 イベントも後半に入り、会場が沸く中でユーミンが登場し、「守ってあげたい」を歌うころには、酒もいい感じに回ってきてたからか、"You don't have to worry"とか歌われると、おもわず涙ぐむあたし(ブス)。 そして、ユーミンからMISIAの歌に入ると、10代後半、20代前半の頃、夜の新宿でMISIAの曲に合わせて、オカマ友達とぎゃーぎゃー騒ぎながら踊っていた頃を思い出し(青春!)、またもや涙ぐむあたし(ブス)。 イベン

死に至る病、そして (3)

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死に至る病とは、絶望である。 と、言ったのは哲学者キルケゴールだった。 -------------- 外出禁止令が出てから、3週間目に突入したものの、未だにこの生活に慣れずにいる。 しかも、外出するのが、食糧の買い出しぐらいなものだから、運動不足も甚だしい。 携帯の万歩計機能を久々にみてみたら、昨日歩いた歩数が、 「89歩」 とか出てきて、思わず故障したかと思ったわよね。 しかも、家から仕事をしているものだから、気が付けば冷蔵庫やらスナックの入っている棚を物色している自分である。 このままじゃ、デブの加速に歯止めがきかなくなる! と、焦りはじめ、 インスタで見つけたニューヨークのトレーナー がやっている、自宅でできるトレーニングビデオをみながら、毎朝、仕事机に向かう前にエクササイズをはじめたものの、今のところ全く効果はなさそうである。 ------------- 食料の買い出しにスーパーマーケットに向かうと、どこも長蛇の列である(みんな2メートルごと間をあけて並んでいるから、ますます長く見える訳)。 買い出しの帰りに、飲み屋が多くあつまる、ゲイの街であるカストロを車で通ると、どの飲み屋もドアや窓に木製の板が打ち付けられ、誰も入れないようになっていて、 ゾンビ映画のように静まり返っている。 つい数週間前までは、酒を交わしながら、K枝やE子と仕事帰りや週末に、飲んだり語ったりしていたのが、遠い昔のようだ。 「この状態、いつになったら、終わるのかね」 と、バーチャル飲み会をしながら、仲間に問うても、 みな、しゅんと答えられずにいる。 休暇の予定も立てられないから、せめて旅行気分でも味わおうと、仕事の合間や、寝る前に、学生時代からの愛読書である沢木耕太郎氏の「深夜特急」や、定期購読している「トラベラー」誌をめくって現実逃避したりしている。 死に至る病とは、絶望である。 というが、せめてこの状況を忘れようと、今はあまり後先の心配をしないように、と現実逃避するしかないのである。 ジントニックで喉を殺菌しつつ(?)、「深夜特急」で旅行気分。 スーパーのお兄さんによると、ここ数週間で酒の売上が急増したそう。