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4月, 2021の投稿を表示しています

デニムの青が褪せてゆくほど 味わい増すように

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"ねー 4月のこの週末お暇?" 朝から仕事したくない病が出て、なかなかベッドから出れずにいると、同業のM子からLINEにメッセージが届いた。 携帯のカレンダーを見ると、ちょうどM子の誕生日である。 "あなたの誕生日じゃないのよぉ。なんかみんなで楽しいことしましょ。何しよっか?" 誕生日当日に、平日ならともかく週末ひとりで過ごしたくないという気持ちは、自分も以前経験し重々分かるので、即座にそう返事をしたのだった。 ーーーーーーーーーーー M子の誕生日当日の土曜日。 少し早めに起きて、近所の店で朝メシのコーヒーとハム入りクロワッサンを買ったなら、M子バースデー日帰りツアーの出発だ。 M子の誕生日の希望は、いつものメンバーでワイナリーでワインテイスティングをしたいということだったので、向かうはナパバレーである。 それぞれの車でサンフランシスコから1時間ほど行くと、景色は右も左も見渡す限り美しいワイン畑となる。 そこからもう数十分車を走らせると、今回のワイナリーに到着だ。 主役のM子がまだ到着していなかったので、ひと足先に、グラスの白ワインを片手に、ワイン畑を眺めながら歩いて待つことにする。 今回のメンバーのうち、すでにワクチン接種を2回とも完了した人、1回だけ打った人、まだ一度も打ってない人とがいたが、こんな畑に囲まれながらの屋外のテーブルなら、そこまで心配せずに楽しめそうである。 「お誕生日おめでとうー!」 「ハッピーバースデー!」 M子が到着し席に着いたら、まずは皆で乾杯。 コロナ禍が始まって以来、こうやってみんなで揃うのも初めてのこと。 「あたしなんて、サンフランシスコ市内から外に出るの、コロナ以来今回が初よ」 とK枝が言う。 皆、1年以上自粛生活を続けてきて、やっとそのトンネルの出口がみえはじめている。 「この赤ワインのうち、どれが一番好き〜?」 「向こうのテーブルの男たちの中で、どれが一番美味しそう〜?」 青空の下、久しぶりに皆でそんなたわいもない会話を楽しんでいると、ここのところ下がりっぱなしだった口角が、自然と上がってきた気がするのだった。 ーーーーーーーーーーー そんなM子から薦められて聴き始めたポッドキャストがある。 その名も「 OVER THE SUN 」! 我らのような中年のオバさん(オカマ?)をターゲットにし

死に至る病、そして (6)

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 第1回目ワクチン接種の日の朝。 予約を入れた11時までまだ時間があるから“ちょっとでも仕事捌いとこ”と机に向かうが集中できずにいる。 未だにこのワクチンを100%信じきれていないからか、当日になっていい歳したおっさん(オカマ)が怯んでいるのである。 コンピュータのキーをたたいて、ちょろっと調べてみると、 “このワクチンは米国政府食品医薬品局未承認のワクチンです” と堂々と薬局のサイトに書いてある。 まだ未知の部分の多いワクチンであるが、今回政府の緊急使用許可が降りて接種がすすめられている事は分かってはいる 分かっちゃいるが、インフルエンザのワクチンすらも避けてきた自分であるから、直前にひとりちと不安になっているのであった。 それでも、 “ワクチンって自分のためでもあるけど、周りの人の感染拡大を防ぐためでもあるんだかんね“ とM子と何度となく話したことを思い出し、潔く接種に向かうことにする。 さて、前回皆でわーわー言いながら、なんとか取り付けた予約であったが、翌日市内の薬局に空きが出てると会社の後輩君から情報が入り、結局遠い田舎町での予約はキャンセルして、市内で受けられることになったのだった。 サンフランシスコのイタリア人街と呼ばれるノースビーチ地区にある薬局に着くと、まだ予約の時間まで30分もある。 運動不足解消がてら散歩でもして時間を潰しますかね、とイタリア人街を歩くことにしたわ。 イタリア料理屋やカフェが並ぶ大通りを歩くも、コロナ前ならば平日でも多くの人で賑わっていたのが、今は人もまばらで静かである。 もう少し足を伸ばして、サンフランシスコ湾を臨む観光名所であるフィッシャーマンズワーフまで歩いてみたが、ここも今は人の居なくなった世紀末映画のようだ。 去年の1月、家族で訪れて人混みをかき分けて歩き、写真を撮ったのも遠い昔である。 “こうやってワクチン接種が進めば、またあの頃のように戻れるのかしら。戻れるのよね?” という希望を胸に薬局に戻ることにする。 ーーーーーーーーー さて、実際のワクチン接種の流れは、すでに摂取をした人々から聞いていた通り、あっという間である。 薬局の受付で名前を言い、前もって記入しておいた健康状態や保険の情報を記入した質問表を提出すると、すぐに名前が呼ばれ、個室に入る。 マスクとフェイスガードをした薬局のお姉さんから簡単な説明を受け、ここ

死に至る病、そして (5)

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 "ちょっと....電話してもいい?" 夜8時。仕事の繁忙期で朝からずっとバタバタ働いていると、同じ街に住む日本人のゲイ仲間であるK枝からテキストメッセージが届いた。 「K枝、どしたの? なんかあった?」 心配になりこちらから電話をしてみると、どうやら周りの友人やテニス仲間が皆、なんだかんだと理由をつけて、こっそりコロナのワクチン接種をしているのだという。 「周りの皆がもうワクチン打って、みんなで集まって飲んだり、普通の生活をはじめようとしてるのに。あたしだけまだ家に籠って一人で過ごしてる。もうあたしもレストラン関係者とかのふりして、打っちゃおうかな。」 とK枝はぼやく。 もちろんその中には、医療関係者やレストラン関係、あるいは健康状態によって、優先的にワクチンを受けた人もいるだろう。 だが、ワクチン接種の予約をするときや、実際に接種を受けるときも、"証明”などを提出する必要もなく、自己申告で皆受けているから、まだ自分の"番"が来ていないのにこっそり受けている人もいるのかもしれない。 それでも、なんだかんだと、生真面目なK枝も、未だにワクチンが何だか怖いと思っている自分も、結局一般人への接種の認可がおりるまで、我慢して待つことにしたのだった。 ----------------------------------- さて、我らがサンフランシスコ市は、4月15日から一般へのワクチン接種開始と発表していたが、実際にはその数日前からその接種を開始した。 その当日は、どこの予約サイトもパンク状態で、今もログインすらできない状態が続いている。 "もう、当分先まで、あきらめましょ" と先のK枝とあきらめて待つことにしたのだが。 「ウォルグリーン(薬局チェーン)のサイトで今なら予約できそうですよ!」 と、仕事中に会社の後輩君からチャットのメッセージが入ってきた。 「なぬ!!!」 と、急いで、昭和時代の緊急連絡網宜しく、K枝や、いつものアメリカ人ゲイ仲間のE子やら、我が家のN君にも、それを伝え、みなで予約を試みるものの・・・。 なんとかうまく最後まで予約にたどり着けたのはE子だけで、その後輩君も、K枝も、N君も、自分も途中でサイトがダウンしたり、あるいは予約完了のボタンをクリックすると、 "その時間はすで