2016年11月28日

ひとりきりの長い夜 いつかきっと終わるでしょう

11月も半ばを過ぎると、急に空気が冷たくなってきた。

街のあちこちでは、早々クリスマスソングが流れ、クリスマスツリーが売られている。

「毎年、10月のハロウィンが終わると、サンクスギビング、クリスマスで、あっという間に年越しよね~」
「ほんと年々、1年終わるのが早くなるわ・・・」

残業帰りにいつもの飲み屋で酒片手にY子としみじみする。

「あんた今年のサンクスギビングはどうするの」
「どうしよう、あたし今年もひとりだわ」

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サンクスギビングもクリスマスも、店もレストランもジムも休業になり、人々は、皆家族の元へ帰ったり旅行へ出かけたりするので、街はひっそりと静かになる。

何年前だったか、「家族はいないし、周りは家族・恋人と旅行だし、そもそも日本人だから別にサンクスギビングなんて祝わなくてもいいわ!」などと強気で予定を立てずにいたら、一人で寂しい1日を過ごすはめになった自分である。

そのサンクスギビングの朝に途方に暮れて、グーグルで『サンクスギビング 一人 過ごし方』などと思わず検索したのも、今じゃ仲間内で笑い話にしてるけど、その時ばかりは本当に「ゲイ・孤独死」が頭をよぎったわ!

ここ数年はサンフランシスコ郊外に住むN君の家族が、サンクスギビングディナーに誘ってくれるので、グーグルで切ない検索をする必要もない。有難いことだ。

暖炉に火をつけ、家族で七面鳥料理を囲み、それぞれの近況報告をしながら家族でわいわいやる。パサパサしていていつもならあまり好んで食べない七面鳥だけど、この日だけは美味しく感じるのは何故かしらん。

食事の後は、家族みんなでワイン片手にジグソーパズル。普段ならパズルなんてやらないのにね。

いずれ日本の家族が居なくなる日がくるし、友達も結婚したり子供ができたりすると、自分はゲイとして一人で一生やってかなきゃいけないかもしれない、という覚悟は自分がゲイだと認識した頃からしてきたけれど、こういう暖かさに触れると、やっぱり家族はいいわぁ、としみじみ思う訳で。



サンクスギビングが終わったとたんに、クリスマスツリーの準備。
アメリカ人、こういうのほんと好きね。



2016年11月21日

スーツケース いっぱいにつめこんだ 希望という名の 重い荷物を

朝、シャワーを浴びようと思ったら、シャンプーが残りわずかなことに気づいた。

夏の休暇で行ったスペインのシッチェスでたまたま見つけた店で、ガタイの良いオヤジ店員さんのオススメで購入したもので、このシャンプーの爽やかな香りを嗅ぐ度に、スペインの陽気な空気(とオトコたち)を思い出す(ムフ)。

そろそろ冬の休暇の予定も立てなきゃなあ、と思いながらも、ヨーロッパも行ったばかりだし日本も法事で帰ったばかりだしと、なかなか行き先を決められずにいる。

学生の頃のような欲張った旅程はもはや厳しいが、まだ動けるうちにペルーのマチュピチュやエジプトのギザのピラミッド群を訪れたいわぁ、などとシャワーを浴びながらひととき夢見る中年オカマ。

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シャワーを浴びワイシャツを着た後、鏡の前で髪の毛を整える。

髪を短くしていた頃は1分もかからなかったのだが、10円ハゲ隠しのために床屋に行けずにいる今は、だいぶ伸びてしまい時間がかかっている。

「それくらいの髪の長さなら、向井理みたいにナチュラルにきめればいいんじゃない?」などと無責任なアドバイスをする女友達を信じ、向井理ってどんな髪型だったっけ?と朝から彼の画像をネットで検索。そしてそれを見ながら、髪を整えて出勤する自分…。

「ワオ!その髪型どうしたの!?」
会社に着くと、さっそく若手スタッフの男がニヤニヤしながらちょっかいを出してきた。

まさか、とトイレに駆け込んで鏡を覗き込むと、そこには向井理などどこにもおらず、切ない目をした彦摩呂が映っている・・・。

元同僚に報告すると「40手前の中年オカマが向井理目指すのが、そもそも無理!」ともっともなことを言われ、向井理作戦は呆気なく終わりを迎えたのであった…。

「あんまり気になるなら、病院行って塗り薬処方してもらいなよ。けっこう効いたわよ」と同じく10円ハゲ経験者のK枝が言う。

確かに「10円ハゲなんて放っときゃなおるわよ!」などと口では言いながら、向井理作戦などと血迷ったことをしてるくらいなら、とっとと病院行って塗り薬もらってくるべきだわよね。

早速、前回見てもらったハゲ専門のオカマ先生を予約し、会社の昼休みに会いに行ったら「ハニー!塗り薬よりこっちが効くわよ~!」と引き出しから出されたのは、注射針!

「注射は苦手なので…!!!」となどと躊躇するも、オカマ先生完全スルーで、頭に注射を何本も打たれ、頭から血を流しながら涙目で会社に戻った中年オカマ…。切ない!



2016年11月14日

Moonlight

トランプが次期大統領に選ばれてからの数日は、この街のあちこちで反トランプ派の抗議デモが続いていて、街全体もまるで大事な人を失って喪に服しているような重い空気だった。

サンフランシスコ郊外を走る電車内で、中東の言葉で会話をしていた乗客に対して、トランプ次期大統領の名の元に"テロリストは国に帰れ"などと酷い言葉を投げかけた女性のビデオも投稿されていたのを観た。

カリフォルニアの中でも最もリベラルといわれるこの街でさえも、こういうことが起こっていると思うと、「街で赤い服を着てる人を見るだけでも、心がざわつく」と言っていた友達の気持ちも分かる。

アップル社のCEOが社員全員のEメールで、励ましのメッセージを送ったとニュースでやっていたが、自分の働く会社のトップからも同様に、トランプの名前こそ出さないものの、「人種、出身、宗教、性別などに拘らないすべての社員を守る」とメールが届いた。

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それでも、やらなきゃいけない仕事はあるし、腹も減るし、10円ハゲも治らないし!

気分転換も必要だわよね、ということでこの土曜日は早起きしてフェリービルディングのファーマーズマーケットにやってきた。

暖かい気候の中で、普段の生活を取り戻した人々の中にまぎれて、色鮮やかな野菜や花達を眺めながら歩く。

最後は、いつも味噌や塩こうじでお世話になっているお店でお弁当を買って、海を眺めながら身体に優しい昼食をとったら、なんとなく元気が出てきたわ!

秋晴れの空の下で、太陽に当たりながら、外の空気を吸って食うと
何でもおいしいのは、なーぜ。


このまま家に帰るのももったいないと、近くにある映画館で「来年のオスカー有力」と言われている(?)ゲイ映画「Moonlight(ムーンライト)」を見に行った。

ゲイ映画というと、大抵誰かが亡くなったりと悲劇的な盛り上がりで締めくくられるものが多いが、この映画はフロリダのマイアミを舞台にアフリカ系アメリカ人の少年が成人になる間に、彼の中のゲイであることを認識していく過程を淡々と描いた、ヨーロッパの映画のような静かな作品だった。

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日曜の夕暮れ時。

今夜は久しぶりに家のベランダでビール片手に、テレビも携帯もオフにしてぼーっとしている。

日がだんだん暮れてくると、ひときわ大きく月が見えてきた。

そういえば、ニュースで69年ぶりだかに月が地球に接近していると言ってたっけ。(なんか毎年こんなニュース聞いているような気もするんだけど、気のせい?)

大統領が誰になろうが、月は回るし、どんな環境に居ようが、時は流れていくのよね。

今世紀で最も月が近づくのは2052年だという。

36年後のスーパームーン。観れるかすら?!


ずっと空を眺めていると、月の動くスピードもかなり早いことに気づく。


AEDAN Fermented
Ferry Building, 1 Ferry Building, San Francisco, CA 94111

歳を取るごとにこういう身体に優しい食事の大切さを実感する訳で。市内のスーパーマーケットでも味噌・塩こうじは購入できるのがありがたい。


Embarcadero Center Cinema
Embarcadero Center, 1 Embarcadero Center, San Francisco, CA 94111

劇場によっては、椅子を180度近く倒せるので、ワイン片手に家で寝っころがってるような気分で観賞できるのがうれしい。



2016年11月11日

誰かと争うのではなく 誰かを憎むのではなく ②

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前回までのおはなし
誰かと争うのではなく 誰かを憎むのではなく ①

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いつもならば、平日仕事から帰ると、夜飯を食ったあとはソファーでまったりと本を読んだり、へたっぴなピアノを練習したり、ネットフリックスでドラマやドキュメンタリーをみたりして過ごすのだが、トランプショックが醒めない今夜は、そんな気分にもなれず仕事用の机に座りネット上で世間の反応や意見を読み漁っていた。

選挙日当日は、多くのメディアが出口調査の結果、ヒラリーが当選確実と報道していた。


なので自分もうっかり先走って、帰り道のスーパーマーケットでスパークリングワイン買ったりしてたわけで(結局開けることもなく、まだ冷蔵庫の奥で眠ってるわよ・・・どうしよ、これ)。


結果は、ヒラリーでなくトランプ。ヒラリーが当確と報道していたメディアは、「口ではヒラリーに投票したと言いながら、実際はトランプに投票した、隠れトランプ派が多くいた」と分析している。


ネットで今回の選挙に関するニュース記事や動画を見ながらも、同じく気持ちを落ち着けられずにいる、同業者OLのM子と電話で意見交換だ。


2人で「とんでもない行動や発言をするトランプも脅威だけど、それ以上にそのトランプを平気な顔して支持するアメリカ人がこれだけいるっていうのがすごく恐いわ。」と話していたが、どうにもこうにもトランプ派のアメリカ人を理解できないでいた。


「民主党オバマ政権下での現状を不満に思っている人たちは、同じ民主党でバリバリ政治畑のクリントン選んでも変化がないと思ったら、ぶっとんだ人種差別主義者のトランプに投票した人が多かったのかもしれないね」


確かに、好景気とされるこの街に住んでいると、現状でそこそこ満足した生活ができているから、オバマ政権を引き継ぐヒラリーで現状維持でいいじゃないの、と思っている人も多いかもしれない。


一方で数年前に財政破綻したデトロイトのある激戦州のミシガン等の中部の人やオハイオの人たち等は、現状維持のままじゃ生活もままならないと、藁をもすがる思いで新しい変化に期待して、政治畑にどっぷりつかってないトランプに投票する人がでてくるのも理解できる。


そう考えると、彼の幼稚ともとれる行動や人種差別的発言は容認できないから「あたしゃ、トランプ派よ!」などとは口を避けても言えないがに、でも自分の生活をかけて、こっそりトランプに投票した「隠れトランプ派」がいたことにもつながってくるか。


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今日も自分のフェイスブックのウォールは、トランプ勝利の名のもとに侮蔑発言を受けたアフリカ系アメリカ人のグーグル社員の話や、イスラム教徒の娘が母親に来年からは髪を隠すスカーフをして街を歩くのが怖いと泣いた話、トランプ勝利が決まった夜に中西部にあるゲイバーの外壁にゲイを排除しろと落書きされた話などなど、悲しい話で一杯だ。

選挙活動中、何を話しても嘘臭く聞こえるなどと陰口をたたかれていたヒラリーだけど、敗戦が決まった後のスピーチで、目を濡らしながら「American Dreamは、誰もが持つことができるもの。すべての人種、すべての宗教、すべての性、移民、LGBT、身体が不自由な人たち、すべての人たちのもの」と話していたときは、やっぱり自分個人としてはヒラリーに決まって欲しかったと思ったわけで。









2016年11月10日

誰かと争うのではなく 誰かを憎むのではなく

アメリカ大統領選挙当日の朝。

いつもと変わらず、ここ数年の景気向上で人口が急増したこの街の朝の通勤電車は、東京の山手線のように満員で、ぎゅうぎゅう押されながら乗り込んだ。

いつもと違うのは、みな胸に服の上から"I Voted"のシールを貼り付けていること。

みな投票したことを誇りにしシールも貼るし、フェイスブックでは朝から皆の" I voted"のステータス表示が賑わっている。


昼の3時(東海岸時間で夕方6時)を過ぎると、各テレビ局や新聞社のウェブサイトが一斉に開票速報を流しだした。

"赤の"共和党が強い東部、中西部の州の開票からはじまるので(選挙の仕組みはこちら)、はじめのうちは共和党のトランプが優勢になるのは誰もが予期していた。なので、ニュースで共和党優勢と報道されても、まだ"青の”民主党が強い西部も接戦州もあるしと誰も驚かず騒がず、静かにいつもどおり仕事をこなしていた。

帰宅時間になりコンピュータを閉じる前にCNNのサイトで確認すると、接戦州と言われるフロリダとオハイオが"青の"民主党ヒラリー優位と出ていて、やっぱり予想通り今回はヒラリーで決まりだわね、等と安心して会社を出る。

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首都のDC、ニューヨーク、シカゴのあるイリノイ、シアトルのワシントン、ハワイ、そして自分の住むカリフォルニアと都市部は民主党が強く、自分の周りもヒラリー支持者しか見あたらない。

ヒラリーにも問題はあるかもしれないが、政治・軍事のバックグラウンドがなく、ましてや女性蔑視やマイノリティ侮蔑の発言を繰り返すトランプが、この国のましてや世界のリーダーになり得るはずがない、というのが皆の共通の意見だった。

グリーンカードがあっても市民権のない自分は投票権がないのだが、トランプだけにはマイノリティー(オカマでかつ非米国人)である自分の輝ける(?)40代を任せられないわ!とわずかながらの献金でヒラリーを応援していた。

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仕事の帰り道、今夜は次の4年(あるいは8年)をがんばってもらうヒラリーちゃんにお祝いしなきゃね、とスーパーマーケットによってスパークリングワインでも買おうとおもったら、ほとんど売り切れで残りあとわずか。皆考えることは一緒だわね~、などと納得して家路についた。

しかし家についてテレビをつけると、CNNのキャスターが青い顔をして何か叫んでいる。

ちょ、ちょっと何があったのよ!?とテレビ画面に見入ると、フロリダ、オハイオをはじめとする接戦州がすべてトランプ優位なんて出てるじゃないのよ!!!

一体何が起こってるのか、急いでフェイスブックやLINEで友達と確認すると、皆「何が起こってるのか理解できない」「もう見ていられない」「気持ち悪くなってきた」「カナダに引っ越す」「でもカナダの移民局のサイトにつながらない!」などと動揺と混乱で大変なことになっている。

仕事着のまま着替えもせずに呆然とするあたしに、CNNのキャスターは「まだ、わかりません!ヒラリー候補の逆転の可能性は十分にあります!」などと慰めてくれたけれど。

ほ、ほかのメディアはどう報じているの・・・とニューヨークタイムズのサイトを見てみると、「トランプ候補の勝率95%」とグラフで示していて、もうこの時ばかりは、いつも女優ぶって演じる自分も本気で床に崩れこんだわ。

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アメリカ大統領選挙の翌朝。

睡眠が浅かったのか身体がだるく、なかなかベッドから抜け出せずにいた。昨日のトランプショックが、非米国人である自分にも思っていた以上に衝撃だったのか。

日本に住んでいた頃は、アメリカ大統領選など日本に影響はあるとは言え、なんだかんだいっても他人事だったのにね。

皆、このショックを共有したいのか、朝っぱらから女友達やオカマ友達からメッセージが届いた。

「とんでもない行動や発言をするトランプも脅威だけど、それ以上にそのトランプを平気な顔して支持するアメリカ人がこれだけいるっていうのがすごく恐いわ。」
「さっきニュースで見たけど、オバマが築いてくれたLGBTの権利も、トランプなら宗教の名のもとに取り上げかねないわよ!」
「株価暴落で、うちらの401Kもやばくない?」
「うちの会社、労働ビザで日本人や中国人を採用してるけど、ビザが凍結したら人材不足になって仕事まわらなくなりそう・・・」
「トランプってディベートで何度も日本の軍事費負担要求を叫んでたから、日本にもすぐトランプショック及ぶわね」
「カリフォルニアはもうアメリカから独立すればいいのよ!十分経済力・自給力あるし!経済規模フランス抜いて世界6位だってよ」
「もうブラジル引っ越す!それか、独立国作るわ!(C)野沢の直ちゃん」

もう、みんなトランプショックで朝から疲労困憊で、何がなんだか訳わかんなくなっている。

いつもは満員の通勤電車も、今日は座れる程に空いていて、会社についても人はまばらで、数えるほどしか来ていない。

トランプショックで誰も家からでる気力がないのか。

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夜、これを書いている今も、外のカストロの通りでは人々が集まり、「自分達の権利は自分達で守るしかない」と誰かが拡声器を使って叫んでいるのが聞こえてくる。

"誰かと争うのではなく 自分をみつけたいだけ
誰かを憎むのではなく 想いを伝えたいだけ

Seven Days War 戦うよ
僕達の場所 誰にも譲れない

うつむかず生きるために"

この曲、好きで若い頃よくカラオケで歌ったよなぁ。(下手っぴでジャイアンとか言われてたけど)

まさかこのご時勢に、この歳になって、自分達の今ある権利を国によって脅かされることになるとは。

次の4年間は、自分達を守るための戦いだよ!
(大げさ???)