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咲き誇れ愛しさよ

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「ねぇ、みんな仕事以外の時間って、何してるの」 久しぶりに集まった同年代の友人達と、食事をしていたらそんな話題になった。 「コロナ禍になってから、自転車買ってサイクリングを趣味で始めたわ」 「私もコロナ禍になってから、昔やってたピアノを再開しようと思って、電子ピアノ買ったのよ」 などと、皆コロナ禍が長期化することを見越して、新しい趣味を見つけたようだ。 自分といえば、コロナ前ならば、旅行が趣味!などと言いまわっていたが、このご時世でそんな旅行の予定もなく、実際、今、仕事以外に何をやってるかと問われたら、スマホを片手にぼんやり無駄に時間を過ごしていることが多い。 我が家のN君は、毎日のように水泳やら水球チームの練習やらで、仕事以外の時間も充実しているようで、それと比べると自分は本当に時間を無駄にしているような気になってくる。 昨日も仕事の後に、日本の友人から送られてきた薬師丸ひろ子が歌うYoutubeを観てるうちに、寝落ちして一日終わったわよ・・・。 「コロナ禍だからこそ、人と出会えるような趣味を見つけたほうがいいよ。音楽やってたんだから、サンフランシスコのゲイコーラスのグループに参加するとか?」 と、N君は言うが、元々外向的ではない自分には、ハードルが高すぎる・・・。 老後のためにも、ボケ防止のためにも、何か新しいことを始めたいとは思うのだが、何も思いつかず、またソファーに寝そべってスマホをいじってる間に1日が終わってゆくのであった。 _____________ 胸を張って趣味とは言えないものの、時々週末に、我が家の狭いテラスで、サンフランシスコでも育つような野菜や花を育てようと、土いじりをしている。 だいぶ前に種をまいた、忘れな草も青い美しい花を咲かせている。 そんな中、近所に住むM子と毎週楽しみに聴いている ポッドキャスト「Over the Sun」 で、 "おばさん皆で、ヒヤシンスを育てよう!" なる企画があった。 全国各地に住む、いい年をした視聴者が、各自ヒヤシンス("ヒヤスンス")の球根を購入し、この11月の週末に皆同じタイミングで植えて、春に花が咲くのを楽しみに待つ、という地味な企画である。 「M子ちゃん、うちらも一緒にヒヤスンス、育てよ!」 と、若い頃だったならば決して興味ももたなかったであろう企画に、現役おばさ

秋の鍋と切なさと心強さと

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 一年中、変わらぬ気候と言われるサンフランシスコの街も、春には少し暖かくなり桜や梅のようなピンク色の花を咲かせ、秋には落ち葉が舞う季節となる。 そんな11月の半ば、だいぶ寒い日が続いていたので、近所に住む年下ゲイのH君と、 「みんなで集まって、いつか鍋でもしようか?」 などと話していたところ、ちょうど皆仕事も落ち着いているしと、この週末の土曜日にH君の家に食べ物やら酒やらを持ち寄って、日本人ゲイ4人での鍋大会となったのだった。 年頃の(?)オカマが集まって、話すことと言ったら、 「明日、年下のアメリカ人男と映画デートなんだけど、全然ときめかない。キャンセルすべき?」 「それより、K枝。あんたの出会い系アプリのプロフィール、年齢詐称疑惑はどうなった」 「H君、鍋のスープ、出汁がきいててほんとうに美味しい。大根もちゃんと面取りしてるし。料理できるオンナ、アピール?」 「料理といえば、"きのう何食べた?"のシロさんとケンジみたいな恋愛がしたいよぉ」 「コロナ入ってから、マッサージ行ってないわー。誰かに揉まれたい・・・!」 「来月はじめに、Sex and the Cityの続編はじまるって! サマンサ出ないのは哀しいけど、やっぱり観るわよね」 「あたしとH君は、ミランダ。K枝とKちゃんは、シャーロットだわね。ってか、キャリーとサマンサいないと、話がはじまらないじゃん」 などと、日本酒の久保田を注いだグラス片手に、豚肉と魚介に野菜一杯の鍋をつつきつつ、皆いい年しながら、わいわい、きゃっきゃっと話題があちこちとっ散らかりながら、下らない話で土曜の夜は更けてゆく。 Sex and the Cityといえば、続編のAnd Just Like That...の来月公開を前に、主演のサラ・ジェシカ・パーカーがVogue誌で、彼女の白髪や顔のしわなど年を重ねた姿に対して、"劣化した" "老けた"などと言った、世間の中傷・批判に対して反論しているという。 自分も今朝行ったいつもの床屋で、切ってもらった髪の毛が黒い床に落ちるたびに、数年前なら気づくこともなかった白髪の多さに、思わず言葉を失い切なくなる。 「ねぇ、あんたほんと、顔のしわ増えたよね」 「しわもそうだけど、白髪も増えて、髪のボリュームもだいぶ減ってさぁ。ハゲ薬は一応、飲ん

木の葉が色を変える 風の中を旅しています

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アメリカに住み始めてから、早十数年。 未だに慣れないのが、夏時間ーDay light savingである。 毎年3月初めから11月初めまでは、1時間繰り上げて夜の9時頃まで外が明るい生活となる。 仕事を終えたあとも、外がまだ明るいのは嬉しい。 夏時間の間は、 「今日仕事何時に終わる? まだ外も明るいし飲みにいかない?」 などとK枝やM男と、仕事の後に"ハッピーアワー"と称して、仕事の後に飲みに出かけたりする。 しかし夏時間が終わり冬時間に入ると、急に1時間繰り下がり突然日が短くなり夕方5時にもなるとすでに外は真っ暗である。 この土曜日は、ちょうどその夏時間が終わり冬時間に入る週末で、それでなくても日々不眠症の自分にとっては、この1時間のずれがますます体内時計を狂わせるのであった。 目が覚めて携帯の時計を見ると、まだ朝の4時半である。 若い頃は、1時間の時差ぐらい全然平気だったのだけどね・・・。 ーーーーーーーーーーー 「秋になったことだし、紅葉観たいな~」 と我が家のN君がふとつぶやいた。 十数年前に奈良の十津川村に住んでいたN君に言わせると、秋になると真っ赤に染まる紅葉の吉野の山々が恋しいという。 とはいえ、サンフランシスコは年中春・秋の気候で、日本のような美しい紅葉を見ることは難しい。 「それじゃぁ、久しぶりにナパに紅葉(ワイン)狩りに行こうか」 ということで、この週末は久しぶりに朝からおにぎりを握って、ナパへ"秋の大人の遠足"に行こうということなった。 ナパへはサンフランシスコから車で1時間半ほど北にある、田園風景の広がる美しい地域である。 ちょうど日本に住む友人から、 "80年代、秋のアイドルソング" なるプレイリストを送ってもらっていたものだから、ドライブのBGMは昭和の秋めいた曲ばかりである。 「もう逢えないかもしれない~秋は旅人 (C)菊池桃子」 「秋の風が、窓をたたくコテージ~ (C)南野陽子」 などと、車内で秋の昭和アイドル歌謡をひとしきり歌えば、あっという間にナパに到着だ(昭和歌謡なぞ知らぬ、運転手のN君は迷惑だったわよね・・・)。 今回は久しぶりに、日本人が経営するケンゾーエステイト(Kenzo Estate)で紅葉狩り兼ワインテイスティングをすることに。 桜の花びらのような美しい色の

続・死に至る病、そして (3)

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 「ちょっと、これから鹿児島行ってくるわ!」 東京に住む、大学時代からの悪友オカマのK子から、LINEにメッセージが入った。 「あんた、鹿児島まで何しに行くのよ?」 と問うと、緊急事態宣言が解除されたということで、一回り年下の"知り合い"を連れて旅行に出かけるのだという。 「あんた、またそんな若い子連れて、旅行費用だけせびられて、東京帰ってきたら捨てられるんじゃないでしょね!?」 と、思わず嫉妬で嫌味が出てしまう自分である。 日本に住む他の友達のSNSの投稿をみていると、皆、伊豆や沖縄などの旅行写真があちこちで見られる。 「いいなぁ。自分も日本帰って、温泉行って浴衣来て、畳の部屋で郷土料理に舌鼓打ったりしたいわよっ」 と、同じく日本に帰りたくとも、なかなか帰れずにいるサンフランシスコの友人や同僚に愚痴ると、皆やはり10日~14日間の自宅待機がネックだという。 日本に帰るにも、せいぜい2週間程度しかまとめて休みが取れないサラリーマンの身としては、10日間どこも行けずに誰とも会えずに過ごすのはどうにももったいない。 「コロナ前でも、せいぜい1年に1回しか日本の親に会えなかったのに、去年も今年もコロナで会えずだわ」 「親の年齢考えたら、やっぱり無理してでも毎年顔見たいよ~」 などと、近所に住むM子やK枝とも話すが、結局、皆今年の冬もアメリカ居残り組になりそうである。 ーーーーーーーーーーーーーー 先月のはじめくらいから、ワクチンのブースターとして3回目の接種が一部で開始されたようだ。 カリフォルニア州では、65歳以上の人や、仕事内容・健康状況に応じて、3回目の接種が認められていて、自分の周りでも既に3回目を接種した人という人が何人もいる。 だが、カリフォルニア州全体では、必要回数と言われる2回のワクチン接種を完了している人口は60%ちょっとに留まっている。 それでも、街を歩けばだいぶ人が戻ってきており、マスクこそしているものの、普通に買い物したり、レストランや飲み屋で食事をしている人が増えた。 「今日は久々に会社行ってくるわ」 と朝、同業女子のM子からLINEが入った。 自分の会社も今月から正式にオフィスが再開されたが、まだ基本的に皆家から働いている。 一方で、M男やK枝は仕事柄、ほぼ毎日出社しているという。 日本はすでに国内のワクチン接種率が70%を

少女に何が起こったか

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コーヒーを飲むとすぐに腹をこわすので、仕事中は大抵、緑茶を飲んでいる。 それでも毎日緑茶だと飽きてくるので、時々気分を変えてミントティやらレモンジンジャーティといったハーブティにしたりもしている。 今日は、この間スーパーで安売りをしていた「ホワイトローズティ」とやらと、試してみることにした。 ティーバッグに湯を注ぎ、待つこと5分。 微かに薔薇の香りがしてきた。 "ん、この薔薇のお茶、昔どこかで飲んだぞ?" 香りに誘われ、中年の朧で曖昧な記憶を辿ってみる。 "そうだ、ピアノの先生のうちで、レッスンの前にお菓子と一緒によく出てきたお茶だわ・・・" 中学生、高校生だった頃。 放課後に制服のまま電車に乗り込み、横浜駅からまたバスで数十分行ったところにある、ピアノ教室に通っていた。 先生とのレッスン前に、別室のレッスン室で練習をしていると、毎回美味しいお茶と我が家では食べたこともないようなお菓子を出してくれたものである。 部活もあるし、塾もあるし、友人との付き合いもあるし、でろくに練習もせずにレッスンに臨むと、 「あなた、練習してこなかったでしょ」 と厳しく先生に一蹴され、別室のレッスン室で練習だけして帰ったことも何度とあった。 それでも、吹奏楽部で担当していたオーボエで音大の器楽科に進みたいなどと、途方もない野望を伝えると、 「あなた、絶対音感がないから、大変だろうけど・・・」 と言いながらも、音大受験のための対策をと、つきっきりで夜遅くまで、楽典、聴音、視唱、等のソルフェージュのレッスンをしてくれたのだった。 時には出前の弁当を注文してくれて、レッスン室で遅い夜飯をとったことも何度とある。 今でこそ、友人たちに自分が音大を目指していたなどといったならば、 「あんたは、芸大じゃなくて、ゲイ大目指してたんでしょ?」 などと笑い話になるが、あの頃の若き自分は、N響アワーなどでテレビに映る演奏家のように音楽家になるのを、本気で夢見ていたのである。 しかし、毎日の練習と訓練の日々の中で、自分の才能の無さを知り、結局、オーボエの先生にも、このピアノの先生にも、 「やっぱり無理なので、やめます」 と、あっさり挫折したのだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 「今日、本選の結果でるよ!」 と、仕事中に会社の同僚から業務チャットでのメッセージが