2017年5月28日

そして僕は、途方に暮れる

「もう、あたし、やっぱり一生一人かも・・・」

朝、会社の部門全体のミーティングがあり、家からダウンタウンにある会議場にUBERで向かっていると、オカマのY子からいつもの湿ったメッセージが携帯に届いた。

Y子は、オカマ友達M男のドイツ人友達Gを先日紹介してもらい、昨夜ついにそのドイツ人と1回目のデートに臨んだらしいのだが・・・。

「長い間、真剣に男と付き合ってなかったから、デートの仕方も忘れちゃったわ。」
「もうひとりでいる事に慣れちゃったのかな。新しい出会いとか人に合わせるとか面倒くさくて。」

矢継ぎ早にY子から、メッセージが送られてくる。

「確かに、新しい出会いとか変化とか、40近くなって自分をそれに合わせたり変えたりするのは大変だけど、そういう機会があるだけでも有難いと思わない?」
「面倒くさいで終わらせないで、お互い興味があるなら、もう少しデート続けてみたらどうなのよ?」

と自分のことは棚に上げて、Y子を諭すメッセージを返した自分である。

確かにこの歳になると、既に自分の生活スタイルが出来上がっているし、自分の好きなこと・苦手なことも確立していて、自分でそれを重々分かっているから、それを相手や環境に合わせて変えようという気になれないのは分かる。

かくいう自分も、ついこの間、職場で辞令のEメールが届き、ここ数年ずっと変化を嫌って断って来た昇進が決まってしまった。

周りは「給料もあがるし、若手もこき使えるし、いいじゃんよ!」と言うが、自分にとっては、漫画「きのう何食べた?」の弁護士シロさんじゃないが、上を目指すよりも変化のない日々の平穏とストレスのない生活を望んでいるから、この昇進は肉体的にも精神的にも本当にきつい。

Y子は新しい男との出会い、自分は新しい職場環境。傍からみたら良い事に見えても、本人にはため息なのだ。

そんなことを思いながらUBERを降り、会議場に向かって歩いていると、東京の出版社で雑誌編集をしている同い年のオカマK子から、こちらも矢継ぎ早にLINEメッセージが入った。

「今日、会社の役員室に呼ばれて、"ひゃだ、最近2丁目でオトコ漁りしてたのバレて叱られるのかしら"と思ったら、あたし副編集長に昇進だって!」
「これからは忙しくなって、もうエジプトとかLAとかあちこち遊びに出歩けなくなるかも!」

どうやら、"もうあたし達40だから環境の変化は厳しいのぉ"などと、現状のぬるま湯に浸かるには、まだ早いようなのだ。

どうなることやら。



飲まなきゃやってられん。
先を考えただけでも、胃が痛い。


2017年5月16日

天使がウインク 僕には見える 涙の影で揺れている笑顔

「もうだめ。目がかすんで仕事になんない!」
「あたしも!コンピュータの画面、拡大して表示させないと数字読み間違えちゃう。」
「ストレスのせいかしら・・・ 今まで裸眼で2.0だったのに」
「だたの老化よ。みんな40前後になると、がくっと視力が下がるらしいわ。」

同い年で健康オタクの元同僚と、朝からチャットで老眼相談である。

この歳になるまで、眼鏡にもコンタクトにもお世話にならず、「山育ちで目はいいの! 」(C)ラピュタ と胸を張って言える程、視力だけは自信があったのだが、ついにここにも老化が来てしまったらしい。

そういえば一足先に40代に突入したオカマのK枝も、「40過ぎたら突然視力下がっちゃって、デート中に男達の顔が良く見えないのぉ」と漏らしていた。

仕事に支障が出たらこまるわ?と、疲れ目に効くらしいブルーベリーを食べたり、毎朝目の周りに蒸しタオルをあてたりしてみてるのだが、やはり夕方には画面が翳んでくる。

目が疲れたら遠くに見える緑をみるとよい、と昔母が言っていたのを思い出し、仕事の合間に、窓の外の風に揺れる木々や遠くの山を見て目を休めているのだが、効いてるのかしらん。

次回日本に帰ったときには、おされな「老」眼鏡を購入しなきゃだわ・・・。

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緑を見るのが眼に良いのならば、と言うわけでもないが、この週末は天気も良いので、エンゼル島(Angel Island)にハイキングに行ってきた。

この島は、サンフランシスコから船に乗って30分程のところにある小さな島で、20世紀初頭の戦前・戦時中は米国移民局が置かれていたが、今は州立公園として開放されている。

十数年この街に住んでいて、一度も来たことなかったわ。
頭の中で流れる曲は、やっぱり天使のウィンク (C)聖子。

船を降りて左手に15分ほど歩いていくと、海辺に移民局跡地の建物が見えてくる。当時この場所で船での長旅を終えて入国審査を待った人々の様子を、見学できるようになっている。

移民管理局跡地。ここで特に中国や日本からの移民が入国審査を受けたという。

人々は横浜の港からどんな気持ちでサンフランシスコを目指したのだろう。


サンフランシスコ湾に囲まれたこの島を頂上に向かって歩いていくと、サンフランシスコの街並みやゴールデンゲートブリッジ、ベイブリッジもすべて見渡せる場所にたどり着く。

日頃、大した運動もしていない中年オカマの自分だが、それほど足腰に厳しい道もなく、美しい景色を眺めながら、春の風に吹かれて日々のストレスも忘れ、数時間ハイキングを楽しんだって訳。(でも2日後あたりに、筋肉痛来るわよね・・・)


サンフランシスコからこんなに近いところで、美しい山と海の景色が楽しめるとは。
これで視力も少しは回復したかしらん。





2017年5月8日

夏の前の淡い日差しが駅のホームにこぼれてる

いつもなら地下鉄を使って通勤しているのだが、今日は地上を走る路面電車に揺られて会社に向かっている。

早朝から社内のウェブセミナーのようなものがあり、家で会社に行く準備をしながら携帯電話からインターネットにアクセスして参加していたのだが、時間になっても終わらず、しょうがないわねと、携帯にセミナー画面を接続したまま家を出てきたのだが、

「やだ、地下鉄に乗ったら電波が届かなくなるじゃない」

と気づき、敢え無くこの路面電車に乗ったという訳なのだ。

Fラインと呼ばれるこの路面電車は、街中をゆっくり走っていくので通勤には不向きだが、オカマの街カストロからダウンタウン・金融街を通り、海沿いを観光名所のフィッシャーマンズワーフに向かって走るので、旅行客が多い路線である。

昔イタリアのミラノで使われていたという古い車両に揺られながら、夏の前の爽やかな5月の風に吹かれて、青々とした緑の木々を眺めながら通勤するのも、たまには良いでねーの。

列車のベルが響けば そんな強がりも消える~ (C)河合その子

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「母の日なんか送ろうとおもうんだけど、今年は何か欲しいものある?」

と母にメールを送ると、

「ベレー帽かな~。でも花でもなんでもいいよ。」

と返事が来た。

昔から人に贈るプレゼントを選ぶのが苦手で、高校の時に付き合っていた女子に誕生日プレゼントを買うのに悩んだ挙句、学校にもはいていけるような靴下をいくつか贈ったら、露骨に嫌な顔をされた切ない経験もある。

そんなことも知っている母なので、日傘やショール等、自分が選びやすいようなものを毎年指定してくれる。

三越・伊勢丹や高島屋の母の日ギフトのページで"ベレー帽"と検索して探してみるも、母が好きそうなデザインや色のものがない。

色々探してみたが、結局アマゾンで妹と色を相談して春・夏もののベレー帽を2つ購入した。

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平日の朝や週末の時間のあるときに、オカマのY子や同業女子のM子ちゃん、東京のオカマK子と、時々iphoneのフェイスタイムやLINEチャットでお互いの顔を見ながら、電話で話したりする。

髪もボサボサ、メイクもなしのお互いブス顔のまま、他愛ものないことを話すだけなのだが、

「ほんとテレビ電話なんて、子供の頃はドラえもんの道具か、小松左京のSF小説の世界の話だったわよねぇ」

としみじみ思う。

先の社内のセミナーがiphoneでスクリーンを見ながら参加できるのも、大昔に東京でサラリーマンをしていた頃じゃ、考えられなかったことだ。

ほんと便利な世の中になったわ!

オカマで一人っ子のK枝やM子ちゃんは「親になかなか顔をみせられないから」と、以前母の日か親の誕生日かにipadを贈って、アメリカと日本でいつでもテレビ電話で顔をみながら話ができるようにしているという。

こうやって海外に住んでいると、なかなか実家に顔を出すことも出来ないし、親の年齢を考えると直接会うという機会も、もしかしたら数えられる程しかないかもしれない。親不孝ものだ。

自分も来年の母の日(か誕生日)は、K枝やM子ちゃんを見習って、テレビ電話贈ろうかしら!



2017年5月3日

ハミルトン

木曜日、仕事帰りに週末の予定を確認しようとグーグルカレンダーを開くと、

金曜日は黄昏時のオーシャンビーチで友達の誕生日の集まり

土曜日は昼間にイーストベイでストレートカップルのベビーシャワー、夜はデンバーから遊びに来ている水球友達を囲っての飲み会

日曜日は市内のホールで知り合いのピアノリサイタルとディナー

とある。

毎週末こんなにスケジュールが埋まっているわけではもちろんないし、年々狭まる友達の輪の中で、こうやってお誘いを頂けることを本当に有難く思っているのだが、元々、どちらかというと、大人数の中にいるよりは、家に篭って静かに過ごしたいタイプの自分にとっては、

「今週末は、つらいわ・・・」

と思わずため息が出てしまう。

東京でサラリーマンをしていた若かった頃は、女上司達とおされをして仕事を抜け出してパークハイアットのワインパーティに参加したり、同年代の仲間達とゲイゲイしい格好をして新宿リキッドルームでダンスパーティで朝方まで踊ったりと、大勢の人が集まる場所をそれなりに楽しんでいたのだが。

歳をとる毎に、パーティやイベント、特に初対面の人が多く集まる場所に参加するのが、億劫になってきて、どちらかというと、楽しむというよりも、苦痛に近くなってきている。

外に出るのが大好きなアメリカ人のN君に言わせれば、

「そういったところに参加したら、新しい出会いや発見があって楽しいじゃない?」

とのことだが、自分にしてみてれば、

「家で過ごして、静かに自分と向き合うことだって大事だ!」

と思ってしまう。

カレンダーを眺めながら、家でひとり安い酒のグラスを傾けながら本を読んだり、日本のドラマ「カルテット」の続きを観たり、へたっぴピアノを弾いたり、あるいはシンフォニーやミュージカルをひとり観にいく、といった静かで穏やかな週末を夢見るのである。

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ミュージカルといえば、先月の話になるが、アメリカで人気のブロードウェイミュージカル「Hamilton (ハミルトン)」を観てきたど!

2015年にブロードウェイで公開されたばかりの、アメリカ建国の父の一人「アレキサンダー・ハミルトン」を主人公にした舞台で、ヒップホップ音楽をベースに、役者の殆どが非白人で占められているということで注目され大ヒットとなり、去年史上最多のノミネートで作品賞をはじめトニー賞を総なめにしたミュージカルなのだ! (Wikipediaより)

この「ハミルトン」、今じゃ普通のオーケストラ席でも8万円から10万円という、とんでもないことになっている舞台らしいのだが、この春にブロードウェイからサンフランシスコにやってきて、"Preview"期間はチケットが少々安くなるわよということで、それならあたしもっ!とヘソクリをはたいて行ってきた訳。

どんなに人気とは言え、そんなヒップホップやラップなんて、古い昭和オカマのあたしには好きになれないだろうね、と斜に構えていたのだが、舞台がはじまるとたんに引き込まれて、やっぱり興奮して席を乗り出して観劇したわよね。

ジャンバルジャンを中心に添えたフランス史劇が「レミゼラブル」ならば、こちらはアレキサンダーハミルトンを軸にしたアメリカ史劇で、こりゃアメリカ人大好きだよね、と納得した次第である。


人と交流するのも大事だが、こうやって好きな舞台を観て心を潤すことも大事よね、
と言い聞かせる、ますます引きこもりの中年オカマよ。