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6月, 2021の投稿を表示しています

きっと伝説がこの島々を支えているから (3)

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さて、出発3日前に突然思い立ってやってきた、弾丸ハワイ旅行。 "なにもせずに、ビーチとプールサイドでぼーっとする" というのを今回の旅のテーマにしたものの、毎日砂浜でハワイアンな甘いカクテルをだらだらと飲みながら、海ではしゃぐ日に焼けた男たちを眺めてばかりいると、 "せっかくハワイに来たのに、何もしないでいていいのかしらん" と、なんだか罪悪感のようなもったいないような気分になってしまう。 貧乏性の中年オカマである。 結局、N君との話し合いの結果、ビーチやプールで過ごす日々の間に、1日だけレンタカーを借りて島をドライブすることにしたのだが・・・。 とは言え、何せ何の予定も立てていなかった、この旅行。 ネットで調べてみると、オアフ島でのレンタカー代がどこも1日1500ドルだとか2000ドルなどと、とんでもない金額になっているじゃないのよぉ! 庶民には手も足もでない金額である。 どうやらコロナ禍でレンタカー会社も車両を手放したり本土に送ってしまったりしていたようで、ここ数か月で急にハワイに旅行客がもどりはじめ、価格が高騰しているようなのだ。 するとそこに、 「日本のレンタカー会社経由なら、50ドルくらいで借りられるところありますよ! 日本からの観光客はまだ戻って来てないので、値上がりしてないようです!」 と、仕事のできる会社の後輩君からの有難い情報が入り、なんとか1日レンタカーを確保できたのであった。やれやれ。 ーーーーーーーー 今までオアフ島には何度か訪れる機会があったが、ワイキキとノースショアと呼ばれる島の北側に滞在したくらいで、それ以外の地域はまだ未踏の地である。 特に東側の海岸は、ワイキキほど人も多くなく美しい海岸が続いているというので、今回はその東側の海岸に向けてドライブすることとなった。 しかし、朝から良く晴れたワイキキを出発し、東に向かって車を走らせて数十分もしないうちに、突然の大雨である。 車の窓にたたきつけるように降る雨は、ワイパーを最速にしてもおいつかないほどで、 「こんな天気でビーチに向かってもね・・・」 「やっぱりワイキキに戻ろうか・・・」 と、思わず二人とも意気消沈し、思わず無言になってしまう。 『ハワイの人は、天気予報も気にしないんですよ。島ですから、突然雨になることも毎日のようにあるけれど、またいつか

死に至る病、そして (終)

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オカマ仲間のいつものK枝と、同じくゲイで近所に住んでいるH君と、オカマの集まるカストロの街の飲み屋で、酒をひっかけている。 「最近、テレビ何観てる?」 「そういや、Sex and the Cityのリバイバル、先週からニューヨークで撮影はじまったらしいわよ!」 「ひゃだ、早く観たい! でも、サマンサはでないのよね~」 などと、こうやってオカマが集まると、今も昔もSex and the Cityの話になりがちである。 「あんたは、100%ミランダだよね~。K枝はシャーロットで、M男は絶対サマンサ!」 「いや、あんたは、オカマのスタンフォードかアンソニーでしょ!」 などと、ぎゃーぎゃー騒ぎながら、番組のどのキャラクターに近いかなどと、好き勝手に当てはめたりもしたのも懐かしい。 東京に住んでいた頃には、三軒茶屋のツタヤでいつも貸出中のビデオをなんとか借りてきて観ていたのも懐かしいが、アメリカに渡ってからは、英語の勉強に(?)とDVDを全シーズン揃え、毎日のように繰り返し観ていたのを思い出す。 「あんた、日本語でもたまにオネエ出てるけど、英語だと完全オネエだよね・・・モテないわよ」 とよく友人にからかわれたものだが、Sex and the Cityの女子4人のセリフで英語を学んでいたのだから、そう言われるのも無理ねーわな…。 もう何年も前に仕事でマンハッタンへ行ったときには、キャリーの家の前の通りを歩いてみたり、くそ甘いマグノリアベーカリーのカップケーキ食ったりと、一人SATCツアーをしたのも遠い昔の良い思い出である。 SATCが中年オカマの青春だったのである(なんのこっちゃ)。 ーーーーーーーーー SATCの話はさておき、飲み屋で酒を片手に周りを見渡してみると、もう誰もマスクをしていない。 数日前にカリフォルニアでは、マスク着用やらレストラン等のお店の入店制限が解除され、街はまるでコロナなどなかったかのような活気である。 ワクチン接種も完了したので、ジム通いも15か月ぶりに再開したわ! ジム内は窓も全開で、マスクをしている人もいれば、していない人もいる。 マシンに座りまわりを見渡すと、コロナ前と変わらず美しい身体をしっかり維持している男たちが多い。 一方、元々ジム通いも半分目の保養で行っていたような自分は、コロナ中はせいぜい散歩とリングフィット程度で、さぼってばかりで運動

Forget me not

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よく晴れた6月の日曜日。 締切の近い仕事が残っていたので、朝からコンピュータの画面に向かいながら仕事をこなす。 そして、小腹が減ったら日本町のスーパーマーケットで買っておいた、好物のソフトサラダやら歌舞伎揚げやらを永遠につまんでいると、なんだか本当に不健康な生活をしている気がしてくる。 ふと窓の外をみると、雲一つない青空で、新緑が風に揺れている。 同業女子のM子は、朝からジョギングがてら近所のファーマーズマーケットに出かけたという。 オカマ仲間のK枝は、週末はゲイのテニスサークルで、がっつり運動している。 自分はと言えば、、、 ハワイ旅行で爆食い&爆飲みしたせいで、"かっこいいことばかり言っても、お腹がでてきてしまった (C)森高千里"、ただのブスの中年である。 「こりゃいかん!」 と独り言ち、仕事のコンピュータを急いで閉じて、運動がてら久しぶりに近所を一人散歩することにしたのだった。 ーーーーーーーーーーー 自分がアメリカでの生活をはじめた1年目から、ずっと一緒にいてくれた愛するわんこが亡くなったのは、7年前の6月18日であった。 近所の散歩道を歩くと、当時わんこと一緒に毎日のようにここを歩いていたのを、今でも鮮明に思い出す。 "わんこがこの道のここの角で突然ゲロはいて、心配になって急いで動物病院に電話したわよね" だとか "あの家の庭の花がお気に入りで、ひとんちなのに勝手に庭に入って立ち止まり、あの花の香りをくんくん嗅いでたよなぁ" など、記憶はついこの間のことのようである。 そしてそれと同時に、亡くなる前の病気に苦しむわんことの、悲しい日々も思い出す。 "あら今年、ちょうど七回忌じゃないの?" などと一瞬考えたが、カレンダーを見ると、亡くなって6年目が七回忌であるから、コロナのばたばたを言い訳にそんなことも思い出してあげられずに、去年すでに七回忌は過ぎてしまっていたのだった・・・。 うっかり忘れてしまったのは、あれだけ悲しみ、落ち込んだことも、時間薬が癒してくれた証拠なのかもしれない。 先日、会社の上司のところの犬が、体調を崩し入院したという。 N君のいとこのところの犬も、癌が見つかりいつ亡くなってもおかしくない状態だという。 そんな話を聞くと、-きっと自分が犬を飼い別れを経験する

きっと伝説がこの島々を支えているから (2)

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波の音で目を覚まし、ラナイに出てみると外はまだ真っ暗である。 時差ボケで朝の4時前に目が覚めてしまったのだった。 思わず、外が明るくなるまで、と仕事メールを捌く(サラリーマンの悲しい性...)。 ラナイから見えるダイアモンドヘッドの向こう側の空が明るくなりはじめたら、適当に着替えて、早朝のワイキキの街を歩くことにした。 ワイキキのメインストリートであるカラカウア通りも、まだひと気がなく静かである。 それでも、朝からサーフボードを抱えた青年たちや、ジョギングやウォーキングをしている筋骨隆々とした男たちが自分の脇を通り過ぎていくのを、横目で見ながら楽しんだりしている(中年オカマの哀しい性...)。 まだ薄暗い中、波に向かう地元の少年たち 上半身裸の男たちにすれ違ったら、 おもわず振り返ってみるわよね(オカマの悪い癖) ーーーーーーーーーーーーーー 部屋に戻り、腹が減ったというN君と、ホテルのレストランで簡単な朝食をとったら、今日は予定通り(?)ビーチでぼーっと過ごすことにする。 とは言え、ハワイの日光は数十分も当たっていると、中年のしぼんだ肌は若い頃と違ってあっという間にしわしわに干からびてしまうから、パラソルが必須である。 ホテルのお兄さん(これまた、ハワイ系のいいオトコ・・・)に頼んで、パラソルとチェアーを設置してもらって、マスクを外して、水着に着替えて、日焼け止め(ハワイの海に優しいやつ)をがっつりと塗ったならば、準備完了だ。 中年男二人が、日焼け止めで真っ白な顔をして、恥ずかし気もなく(十分恥ずかしいですがね...)弛んだ身体を晒せるのも、バケーションだからこそ、である。 いつもならば、携帯に仕込んである聖子やらなにやらをイヤホンで聞きながら、海を眺めるのが好きだが、今回は自然の波の音を楽しむことにする。 そして、kindleアプリに仕込んできた本たち(今回は、初見の池澤夏樹氏のワイキキを舞台にした小説やら、きのう何食べた?の新刊やら)を読んだり、海の中ではしゃぐ人々を眺めたりする。 N君はもう1年以上水球も出来ず、長いこと泳いでいなかったから、海に入っては出てを繰り返したり、ワイキキの外れのカイマナビーチまで行ったりして泳ぎを楽しんでいる。 ふと、斜め後ろを見ると自分たちよりよっぽど年配の男同士のカップルが、静かに本を読みながら、カクテルを啜っている。 &qu