時の河を越えて ①

カイロから三大ピラミッドのあるギザへ車で向かっている。

子供の頃から、テレビやオカルト雑誌で「ピラミッドの謎に迫る!」といった特集がある度に、妹と一緒に興奮して、いつか自分の足で赴き、自分の目で見ることを夢見ていた。

それが今、現実に起ころうとしている時、いい年して、興奮して冷静に事態をとらえられないからなのか、畏れ多くて気が動転しているからなのか、あと数十分もすれば、あのピラミッドとスフィンクスに出会えることを実感できずにいる。

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「みんなでエジプト行っちゃおうか!?」

年末年始の休暇の予定を考えあぐねていた時、LAに住むイケメンカップルのAちゃんが提案してきた。

遺跡好きのAちゃんも、パートナーのM君と一緒にエジプトの遺跡群にいつか行くことを夢見ていたという。

「エジプト行きたい!だけど治安もあまりよくないみたいだよねぇ」
「外務省のウェブサイトによるとエジプトの主要観光エリアは危険度レベル1って書いてある」
「行ったら行ったで、みんな腹壊すらしいよ」
「そもそも、オカマ丸出ししてたら危険な国なんじゃない?」

いつか訪れたい夢の国を前に心配ばかりが先走り、決めかねずにいた時、以前エジプトや中東諸国に長年住んでいた日本人のK氏がアメリカでの任務を終えて、エジプトに戻ったという知らせが届いた。

K氏は数年の任務の予定でカイロに住むという。

そこでしゃしゃり出てきたのが、東京に住む自分の大学同期でオカマのK子だった。

「みんながエジプト行くなら、あたいも行きたい! 知ってる人が現地にいるなら安心じゃん!!」

そんなこんなで、色々心配事はあるものの、同年代のオカマ4人(LAの映画業界で働くAちゃん&米国・日本・中国をまたにかけるソフトウェアエンジニアのM君カップル、東京のファッション誌編集者のK子、そしてSFの地味なサラリーマンのあたい)で、古代エジプトの遺跡をめぐる旅ははじまったのであった!(C)来宮良子

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ギザの市内に入り、銃を構える軍兵のものものしい警備の門をくぐる。

するとそこには、目の前には、想像していた以上に巨大な石の建造物が。

「きゃーーーーーっ!!!」

と、いつもならオカマ丸出しで叫ぶところだが、今回ばかりは4人とも声も出さずに、空を仰ぐようにピラミッドを長いこと見つめていた。

この巨大な建造物を古代エジプト人がどうやって建てたのか、諸説あるものの未だ謎のままだ。

スフィンクスの向く先にはケンタッキーの店が・・・。


「ピラミッドは、王の墓ではなく食料の保存庫であったとも言われており、ピラミッドの内部では、ピラミッドパワーにより生肉などの食物が腐りにくくなるといわれています」と、ガイドさんが説明しているのを聞くやいなや、「ひゃだ! あたしピラミッドの中入るわ! しわの一つや二つ減って若返るかもしんない!」と叫ぶK子。

実際中に入ってみたら、蒸し暑くて、どんな新鮮な肉も男も、あっという間に腐りそうだったけど、どうなんだろ。


砂漠に暮れる太陽に、ここに皆で無事に来れたことに感謝する。

カイロに戻り、ナイル川を臨むホテルのルーフトップバーでエジプトワインを片手に4人とも興奮冷めやらずで、1日を振り返る。

街も人も親切で、4人ともすでにこの国を好きになりはじめている。


続く!





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