時の河を越えて ⑤

エジプトを語る上で、やはりイスラム文化は欠かせない。

外務省のページに、宗教に関する建物には近づかないように、って書いてあったよねと、今までそういった建物に立ち寄ることはなかったが、アメリカへ戻る前にやはり訪れておきたいと、ルクソールから早朝便でカイロに戻ったその足で、ムハンマド・アリー・モスクを訪れた。

エジプト最後の王朝時代に建てられたモスクだという。

カイロの街を見渡せる丘の上にあるモスク


モスクの中は靴を脱いで入る。

モスクの敷地内で、シナイ半島の北の街から修学旅行でやってきたという高校生くらいの少年達と出会った。

日本やアメリカの高校生と変わらず、携帯やカメラを片手にふざけあいながらモスクを見学している、汗臭そうな青春真っ只中の高校生達・・・。

そんな高校生達も、モスクに入ると静かにメッカの方角を向くことを忘れない。

ここでもそんな若者達に、一緒に写真を撮ってと頼まれ、もうこの旅が終わるとあたしの短いモテ期も終わるのね、と切なくなる。

ふと、カイロの初日にホテルのエレベーターに乗った時に、同じタイミングで乗ってきた全身を黒の宗教衣装で覆った3人の若い女性を思い出した。

こそこそと何だか楽しそうに話している彼女達の足元をふと見ると、黒い服で隠れた色鮮やかな美しいドレスがちらりと見えた。

どこに住んでいても、どんな宗教を信じていも、おしゃれをしたい女子と汗臭い青春高校男子は万国共通だわね!

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カイロのホテルソフィテルで一休み


ナイル川を臨みながら、無事に旅が終わることに乾杯!
カクテルの名前は「ナイルガーデン」ってな。おされ?


すべての遺跡巡りと早朝のモスク参拝を終えて、ナイル川沿いのホテルのテラスで一休み。

「今回はガイドさん達のお陰で、色々勉強も出来ていい旅だったね!」

出発前にカイロ在住のK氏に、エジプトはガイドを雇ったほうが楽しいといわれ、

「確かにガイドさんいれば、言葉とか移動とか安心かも」
「でも地球の歩き方とかあれば何とかなりそうじゃね?」
「かわいい男のガイドさんならいいけど、おっさんのガイドならいらない。」
「あんただって、十分おっさんじゃん。っつーかおばさんじゃん。」

などと散々揉めて、結局ガイドさんをお願いすることになったのだが。

確かに観光ブックに遺跡や博物館の詳細は載ってはいるけど、遺跡を目の前にしてその場でガイドさんからの説明を聞くのとでは、理解度が違う。

何よりもガイドさん達が、古代エジプト文化のすばらしさ、おもしろさを熱く語ってくれたから、飽きっぽい4人も最後まで遺跡巡りを堪能し、今では、途中で腹を壊したことも忘れて「またエジプトに戻って来たい!」と思っている。

「エジプトの不景気、もう何年もずっと続いているんですよ。それに加えて、ここのところテロも起こったりしてますから。」

日本語を流暢に話す、カイロ滞在中にお世話になったエジプト人ガイドさんのムハンマドさんが、エジプトの情勢を話してくれた。

観光客の激減で、ホテルもレストランもお土産屋もガイドも、大きな打撃を受けているという。

「ギザのピラミッドも、以前は中に入るチケットを買うのに長い列が出来ていたんですよ。危険なところに近づかなければカイロもルクソールも安全な街です。エジプトの文化、本当に面白いですから。だから、もっとたくさんの人に訪れてもらいたいです。」

そういえば、アスワンの厳ついエジプト人のタクシー運転手兼ガイドさんも、同じようなことを言っていた。彼が連れていってくれた、彼の生まれた街にある繁華街も閑散としていて、壁には「観光の復興を!」と英語で書かれたスローガンが貼ってあったのを思い出す。

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ホテルで一休みした後は、カイロ市内のハンハリーリという小さなお土産屋や食材屋が並ぶ市場をみてまわった。

現地の人々の「ミルダケ タダ!」「ヤスイョ!」ももう聞けなくなるのかと思うとちょいと寂しいわ、などと思いながら市場を離れると、後ろから「サラバジャ!」と、またも、どこから学んだのか謎の日本語で、店のオヤジが笑顔で手を振って見送ってくれた。

ハンハリーリ内の灯りを売る店が綺麗で、小さいキャンドル置きを土産に購入。
(店員さんもいい男!)

エジプト旅行最後の晩餐は、カイロの中でも小ぎれいでおしゃれな店が並ぶエリアで、やっぱりエジプト飯。

Abou El Sid」という店内は薄暗いが雰囲気のある店で、現地のKさんと一緒に5人で、今回の旅が無事に終われることを、エジプトビールで乾杯だ。

おされエリアというだけに、現地のゲイの人も集まるエリアだという。普通に手をつないで歩いている男たちを見かけたけど、あれはゲイなのか、それとも仲の良い友達の印なのか。

そんな彼らをじろじろ見ていたからか、こちらに気づいて微笑んでくれた。

こちらも微笑み返し、"お互いオカマで色々あるけれど、何とかやっていきましょ”と無言のメッセージを送るあたし(乙女!)。

腹壊しながらも色々食ったけど、モロヘイヤのスープは特にうまかったよ~。

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いつかは訪れたいと思っていた頃の夢のエジプトは、"古代エジプトのピラミッドの国"、だった。

だけど、実際自分の足でこの埃ぽい空気の国を歩き、色々な人と出会っていくうちに、ピラミッドだけの国ではないことに気づく。

遺跡があってそれを守る人々がいて、宗教の教えを守りながらも自分を生きる若者がいて、観光復興のために尽力する人々がいて、いつ仕事してんのか店先に座って観光客を笑わせるおっさんたちがいて、我々となんら変わりないゲイの人々もいる。

次回来るときは、アレクサンドリアのクレオパトラにも会わなきゃいけないし、紅海のリゾートでゆっくりするのも良さそうだ。

ありがとうエジプト!
また来ます!

それでもやっぱり最後はピラミッドよ!


コメント

ふわり さんの投稿…
samurai sfさん、こんにちは。

エジプト旅行記、一気に読んでしまいました。
私も、ミステリアスな雰囲気のエジプトには子供の頃から憧れていて、小学生にしてたった一人でエジプトのミイラ展まで見に行きましたよ〜!『王家の紋章』、もちろんファンでしたよ(*^^*)

仲の良いお友達と楽しい旅行をされたようで、良かったですね。また、お写真、なかなか素敵じゃないですか。モデルさんみたい。

Starsha さんのコメント…
エジプト旅行記、とっても楽しかったです!
お写真も綺麗で臨場感タップリでした^^

情勢も悪そうだし、てっきりエジプト旅行は無理なのかなと勝手に思い込んでいましたけど、検索してみると確かに色々なツアーがあるんですね。
ヨーロッパだってテロの危険に晒されてますし、いつどこで何に遭遇してしまうのかは運・不運なのかなって思いました。
エジプトは観光立国だったので、観光客減で現地の人もさぞかし苦労されているでしょうね。
ホントに観光復興する事を願います。

「紅海のリゾートでゆっくりするのも良さそうだ」
とありましたが、紅海の美しさは筆舌に尽くしがたいですよね♪
私は今回紹介された様なエジプトには行っていないのですが、まだ情勢が怪しくない頃にイスラエル観光に行き(日本からのツアーです)、そこから一度シナイ半島に入り、シナイ山で日の出を拝む‥という経験をしました。
今はもう出来ないのかなぁ‥。情勢はどうなんでしょう?

ハッキリ言って、シナイ山の登頂はかなりハードでした(足元が砂なので、一歩進んでもグッと後ろに戻される感じ)。
でもシナイ山頂からの眺めは素晴らしく、モーゼに思いを馳せました。あの光景は一生忘れません。
行きは真っ暗な中での登頂で周りの様子も分かりませんでしたが、下山の際に景色を堪能しましたっけ。
なので、シナイ山&シナイ半島観光はオススメです!
あとはイスラエルももしも観光可能な状態であれば、是非是非訪れて欲しいです。
信仰深くない私でも、グッと感動する場所が沢ありましたよ!(^^)b
samurai sf さんの投稿…
ふわりさん
お久しぶりです。今年も宜しくお願いします!

エジプトは、本当に昔から漠然と憧れてはいたのですが、なかなか遠くて行けずに居ましたが、ついに行って参りました!

仲はよくとも8日間も一緒に寝泊りしてると、お互いイライラすることもあったりしましたが・・・何事もなく無事に戻れました。

小学生にして一人でエジプトのミイラ展もすごいですね~。

最近ベイエリアは雨ばかりで寒い日が続きますが、どうぞ風邪にはお気をつけくださいませ!
samurai sf さんの投稿…
Starshaさん

自分も行くまでは、楽しみ半分、安全面での不安半分でしたが、行ってみると身の危険を感じることもなく、ガイドさんのお陰もあってか、何事もなくスムースに滞在できました。

シナイ山いつかは登ってみたいです。登頂がハードな分、山頂からみる眺めもすばらしいのでしょうね。自分も「一生忘れられない景色」というものを、自分の中で増やしていきたいです。シナイから修学旅行にきてた学生たちも礼儀正しく親しみやすいいい子たちばかりでした!

今回のエジプト旅行で、イスラム、中東の文化にますます興味を持った次第です。イスラエルもいつか訪れたい場所のひとつです。