日付が塗り替えてゆく 苦しいだけの昨日を 北ウイング

北ウイング。
霧の街が雲の下に待つのね。

休暇の旅行でも、仕事の出張でも、空港に立つと思わず口ずさみたくなるのが、中森明菜の「北ウイング」なのは、明菜好きなオカマの宿命か。

ネットで調べてみると、当時の成田の北ウイング発の「霧の街」行きは、日本航空のロンドン行きか、サンフランシスコ行きかと議論されているのも興味深い。

なんて話はさておき・・・。

ドジでのろまな亀じゃないわよ (C)堀ちえみ

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日本航空ロサンゼルス発成田行き便にて---

「お飲み物はいかがしましょうか。」
「それじゃあ、エビスビールをお願いします。」

東京に住んでいた頃は、エビスビールが好きでよく飲んでいた。でも、こっちに来てからは、滅多にお目にかかれないから、飛行機に乗ったときは貧乏根性で必ず頼む自分である。

「お客様、申し訳ございません! エビスビールは先程ちょうど切らしてしまいまして。よろしければこちらのよく冷えたプレミアムビールでよろしいでしょうか」

えーん?! でも、ないならしょうがないと、そのプレミアムビールとやらで諦める。

しかし数十分たった頃、先程のフライトアテンダントが早足でやってきた。片手にはエビスビールを持っている。

「お客様。先程は失礼致しました。1本だけ残っておりましたので、よろしければどうぞお召し上がり下さい」

自分がエビスビールを頼んだことを覚えてくれていて、わざわざエコノミー席に座る自分に丁寧に持ってきてくれた、そのサービスに嬉しい気持ちになる。

アメリカ系の航空会社だったら、こんな丁寧にやってくれねーだろな、と思わず悪態をつくあたし。

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日本航空成田発ロサンゼルス行き便にて---

もうすぐLAに着陸という時に、自分の2列程前の席で、ベトナム人のおじいちゃんおばあちゃんを前に、フライトアテンダントが一生懸命何かを伝えようとしている。

どうやら足の不自由なおじいちゃんおばあちゃんに、安全のために、着陸しても係りの人が来る前に立ち上がらないようにと、係りの人が迎えに来るから安心してと、伝えたいらしいのだが、英語も日本語も中国語も通じないようだ。

不安そうな顔を見合わせるるおじいちゃんおばあちゃん。

身振りでぶりでも伝わらないと、その膝をついて話していたフライトアテンダントは立ち上がり、自分の列にやってきた。

「Do you speak Vietnamese? Anyone speaks Vietnamese?」

乗客リストで調べたのか、ベトナム語が話せると思われる人ひとりひとりに丁寧にまわって、おじいちゃんおばあちゃんを何とか安心させられるように、通訳できる人を探しているようだ。

数分後、ベトナム語を話せる若い女性を客室からみつけたフライトアテンダントは、おじいちゃんおばあちゃんの元に来て、その若い女性の助けを借りてその意図を伝えられたようだ。

安心したベトナム人おじいちゃんおばあちゃんの嬉しそうな顔を見て、こっちも嬉しい気持ちになる。

そして、またも、アメリカ系の航空会社だったら、こんな丁寧にやってくれねーだろな、と思わず悪態をつくあたし。

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大学3年の頃。

堀ちえみの「スチュワーデス物語」や、山田邦子の「トップ・スチュワーデス物語」を夢みて(ほんとかいな)、就職活動での第一志望は日本航空の総合職客室系だった自分。

その夢は、何度かの面接の後、結局「不合格」通知であっさりと崩れ、長い間落ち込んでいた。もうJALなんかじゃ、ぜったい飛ばないと思っていた頃もあったかもしれない。

それでも今は、やっぱり日本航空が好きで、アメリカ系航空会社よりちょっと高くても、この航空会社を選びたいのは、こんなに素敵な日本人の優しい心を反映したサービスをしてくれるこの会社が好きだから。

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離陸直前、窓側の席に座り、外を見ていたら、地上勤務の人々が一斉にこちらを向かって頭を深々と下げている。

他の国の航空会社じゃみられない、出発して空へ経つまで、丁寧に見守ってくれている瞬間にやっぱりちょっと涙する(40歳手前のババア)のオカマである。


コメント

JapanSFO さんの投稿…
アメリカに住んでいる日本人の中には日系航空会社のサービスが過剰サービスと言われる方も多々いらっしゃるようですが、僕はやっぱり日本のこのきめ細かな相手を思いやすさ0ビスが好きです。
ふわり さんのコメント…
ドジでのろまな亀がなれるんなら私だってと、真面目にスチュワーデス夢見て国内三社受験しました。一次で落ちた私からすると、面接数段階進んだなんて尊敬します。当時は、弾けつつあるもまだまだバブル真っ只中。有力なコネがなければ、地方出身者はまず無理というのを後になって聞きました(泣)。

ちなみに私もJALが好きです。
samurai sf さんの投稿…
このコメントは投稿者によって削除されました。
samurai sf さんの投稿…
ふわりさん 自分も学生時代はずっと堀ちえみ...を夢見ていましたが、もし当時日本航空に決まっていたら、ここに住んでいなかったかもしれないし、今周りにいる人々に会っていなかったかもしれないと思うと、人生何がきっかけでどう転ぶかわからないものですね。

当時はかなり落ち込みましたが、今振り返れば、それも結果としてはそれでよかったと思える程度まで振り返られる歳になりました。

機内食でモスバーガーや吉野家の牛丼が出るのにはビックリですが😁


samurai sf さんの投稿…
samurai sf9/09/2016
JapanSFOさん! 私もアメリカ生活がだいぶ長くなりましたが、日本に帰る度に日本のサービスの丁寧で気持ち良いちょうど良い距離感ときめ細やかさに嬉しくなります。それを過剰と呼ぶ人は、もしかしたら「日本の良さ」を忘れてしまったのかもしれませんね。

サンフランシスコに住んでいるとユナイテッドがハブということもあり、乗る機会も多いですが地上も機内も、次元の違うサービスにびっくりします。

お互いアメリカでの生活が長くなっても、ここに迎合するのでなく日本の良さを分かる感覚を持ち続けていたいですね〜!