微笑がえし

月曜の朝の地下鉄。

まわりを見渡すと、週末明けで憂鬱な顔をした乗客でいっぱいだ。

窓に映った自分の顔を見ると、そこにはブスな中年オカマの自分。

目元のしわや顔のたるみはさておき、こんなに自分の口角って下がっていたっけ!?と思わず目を逸らす。

この時期は毎年毎日残業で、週末はホリデーパーティ続きだから、肉体的にも精神的にも疲れが溜まるのはしょうがないと理由をつけるにしても、こんな不幸顔をしていたら、以前オカマのY子に「あんた、そんな口角下げた顔をしていたら、いいオトコも幸運の神様も寄ってこないわよ!」などと言ったのにも、示しがつかない。

こんなんじゃ、きらきらした40歳健康優良男子にになるには、程遠い!

今年の初めに癌を患った元同僚で同年代の女子に、携帯から「もう仕事つかれた~ 週末も休めないし~ もう無理!」とチャットで弱音メッセージを送ると、彼女から即座に「あんた、毎日疲れた疲れたって言ってるけど、疲れてても、元気がなくても、笑わなきゃだめ! 笑えば脳も細胞もだまされて、元気になるんだから!」と、いつものぎゃーぎゃした調子で、まくし立ててきた。

だまされたと思ってと、地下鉄の窓に向かって80年代アイドルぶって口角を上げてみたら、引きつり顔の売れない中年アイドルみたいになったが、なんとなく元気がでてくる気もする。

突然、まわりの乗客も、にやにやしはじめた。

ど、どゆこと?と明菜のカバーアルバムをガンガンにかけていたイヤホンをはずしてみると、女の車掌さんが車内放送でなんだか面白いことを言っているらしい。

どうせ、あたいの英語力じゃ理解できないような、アメリカンジョークでも言ってるんだわ、とスルーを決め込んでいたら、会社のある終点の駅に近づいてきた頃、その車掌さんがまた車内放送で何やら言い出した。

「誰だって月曜は憂鬱よね。でも、会社についたら隣のきらいな同僚にも笑顔を向けてみて! きっといいことあるから!」

いつもは憂鬱な顔をした乗客でいっぱいの地下鉄の車内が、駅につく頃にはみんななんだかほっこり笑顔になった。

電車を降りて、車掌室に向かって Thank you!と無理やり口角を上げて声をかけてみたら、サンタクロースの帽子を被ったアフリカ系アメリカ人のおばちゃん車掌さんが顔を出して、Have a wonderful day! と笑顔で送り出してくれた。

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その昔、「東京ラブストーリー」というドラマが流行って、今でも時々Y子と夜の飲み屋で"リカ vs さとみ"論議をしたり、DVDで一人で観たりしている古いオカマの自分。

最終回だったか、鈴木保奈美が演じる赤名リカが、織田裕二が演じるカンチに向かって、別離を予感してか、転校ばかりだった自身の子供時代を思い出して、「あの子と最後に会ったとき私笑顔だったかなって。二度と会えないかもしれないから、なるべく笑顔でいなきゃって、思うんだ」と呟くシーンがあった(あたいも、よー覚えてるわ!)。

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この年になると、仕事のストレスや人間関係、ぱっとしない体調で、家族にも友達にも同僚にも、そうそういつでもニコニコもしていられないけれど、先の地下鉄の車掌さんのように、なるべく口角を上げて、笑顔で居たいと思う。

そういえば、母も昔よく「笑う角に福来る!」と言っていた。

2017年は赤名リカ目指して、毎日笑顔を目標に行くわよ!
(仲間には、中年オカマがきもちわるい、とか言われそうだけど!)

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