秋の鍋と切なさと心強さと

 一年中、変わらぬ気候と言われるサンフランシスコの街も、春には少し暖かくなり桜や梅のようなピンク色の花を咲かせ、秋には落ち葉が舞う季節となる。

そんな11月の半ば、だいぶ寒い日が続いていたので、近所に住む年下ゲイのH君と、

「みんなで集まって、いつか鍋でもしようか?」

などと話していたところ、ちょうど皆仕事も落ち着いているしと、この週末の土曜日にH君の家に食べ物やら酒やらを持ち寄って、日本人ゲイ4人での鍋大会となったのだった。

年頃の(?)オカマが集まって、話すことと言ったら、

「明日、年下のアメリカ人男と映画デートなんだけど、全然ときめかない。キャンセルすべき?」

「それより、K枝。あんたの出会い系アプリのプロフィール、年齢詐称疑惑はどうなった」

「H君、鍋のスープ、出汁がきいててほんとうに美味しい。大根もちゃんと面取りしてるし。料理できるオンナ、アピール?」

「料理といえば、"きのう何食べた?"のシロさんとケンジみたいな恋愛がしたいよぉ」

「コロナ入ってから、マッサージ行ってないわー。誰かに揉まれたい・・・!」

「来月はじめに、Sex and the Cityの続編はじまるって! サマンサ出ないのは哀しいけど、やっぱり観るわよね」

「あたしとH君は、ミランダ。K枝とKちゃんは、シャーロットだわね。ってか、キャリーとサマンサいないと、話がはじまらないじゃん」

などと、日本酒の久保田を注いだグラス片手に、豚肉と魚介に野菜一杯の鍋をつつきつつ、皆いい年しながら、わいわい、きゃっきゃっと話題があちこちとっ散らかりながら、下らない話で土曜の夜は更けてゆく。

Sex and the Cityといえば、続編のAnd Just Like That...の来月公開を前に、主演のサラ・ジェシカ・パーカーがVogue誌で、彼女の白髪や顔のしわなど年を重ねた姿に対して、"劣化した" "老けた"などと言った、世間の中傷・批判に対して反論しているという。

自分も今朝行ったいつもの床屋で、切ってもらった髪の毛が黒い床に落ちるたびに、数年前なら気づくこともなかった白髪の多さに、思わず言葉を失い切なくなる。

「ねぇ、あんたほんと、顔のしわ増えたよね」

「しわもそうだけど、白髪も増えて、髪のボリュームもだいぶ減ってさぁ。ハゲ薬は一応、飲んでるけど」

「あたしなんか、30代の頃から、白髪隠しに染めてたんだから」

と、鍋を囲みながらオカマの切ないババアトークは続いてゆく。

先のサラ・ジェシカ・パーカー曰く、女性にだけそういった見た目の老いに対する批判があると語っていたというが、女性だけじゃなくオカマの世界も、見た目に対する批判はかなり厳しい。

それでも、

「もうさ、うちらこのまま、自然に老けていかない? ありのままで、いいじゃないの」

「ね、若い頃は、今思えば必要もないのに、色々じたばたしたけど、もういいよね?」

「整形で年齢不詳になるより、ナチュラルに年取った渋い男(オカマ)になればいいのよ」

「みんなで年取れば、こわくない!?」

と、自然に散りゆく秋のこの葉のように、ゲイ4人で自然に年老いてゆくのを、心強く受け止める覚悟を決めるのであった。

と言った傍から、

「ねぇ、ハイフって知ってる? 東京のオカマたちの間で流行ってる、メスを使わない美容整形治療らしいわ?」

と、まだじたばたしようとしている、裏切り者のオカマもいたわよね・・・!


やっぱり空気の冷える夜は、ピザやバーガーやステーキよりも、
優しい味の鍋がいいね

若かった頃は、青々と瑞々しい葉のようだった我らも
今では、枯れた(渋い?)秋の木の葉のよう



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