死に至る病、そして (6)

 第1回目ワクチン接種の日の朝。

予約を入れた11時までまだ時間があるから“ちょっとでも仕事捌いとこ”と机に向かうが集中できずにいる。

未だにこのワクチンを100%信じきれていないからか、当日になっていい歳したおっさん(オカマ)が怯んでいるのである。

コンピュータのキーをたたいて、ちょろっと調べてみると、

“このワクチンは米国政府食品医薬品局未承認のワクチンです”

と堂々と薬局のサイトに書いてある。

まだ未知の部分の多いワクチンであるが、今回政府の緊急使用許可が降りて接種がすすめられている事は分かってはいる

分かっちゃいるが、インフルエンザのワクチンすらも避けてきた自分であるから、直前にひとりちと不安になっているのであった。

それでも、

“ワクチンって自分のためでもあるけど、周りの人の感染拡大を防ぐためでもあるんだかんね“

とM子と何度となく話したことを思い出し、潔く接種に向かうことにする。

さて、前回皆でわーわー言いながら、なんとか取り付けた予約であったが、翌日市内の薬局に空きが出てると会社の後輩君から情報が入り、結局遠い田舎町での予約はキャンセルして、市内で受けられることになったのだった。

サンフランシスコのイタリア人街と呼ばれるノースビーチ地区にある薬局に着くと、まだ予約の時間まで30分もある。

運動不足解消がてら散歩でもして時間を潰しますかね、とイタリア人街を歩くことにしたわ。

イタリア料理屋やカフェが並ぶ大通りを歩くも、コロナ前ならば平日でも多くの人で賑わっていたのが、今は人もまばらで静かである。

もう少し足を伸ばして、サンフランシスコ湾を臨む観光名所であるフィッシャーマンズワーフまで歩いてみたが、ここも今は人の居なくなった世紀末映画のようだ。

去年の1月、家族で訪れて人混みをかき分けて歩き、写真を撮ったのも遠い昔である。

“こうやってワクチン接種が進めば、またあの頃のように戻れるのかしら。戻れるのよね?”

という希望を胸に薬局に戻ることにする。

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さて、実際のワクチン接種の流れは、すでに摂取をした人々から聞いていた通り、あっという間である。

薬局の受付で名前を言い、前もって記入しておいた健康状態や保険の情報を記入した質問表を提出すると、すぐに名前が呼ばれ、個室に入る。

マスクとフェイスガードをした薬局のお姉さんから簡単な説明を受け、ここでも「このファイザー社のワクチンは未承認のワクチンである」と念を押されるが、もはや今さらである。

「利き手がどっちか聞かれるよ」とすでに接種を終えていたN君から聞いていたが、自分はそれを聞かれることもなく、利き手の左腕にちくりと接種を受け(ほんとは右腕に打ってもらたかったのだが)、絆創膏を貼ってもらい終了だ。

「副反応がある可能性があるので、外の椅子で15分待機して下さい」

との指示を受け静かに15分待つが、接種をした腕が少し痛む程度で、その後も特に何もなく無事に第1回目接種を完了したのであった。

(薬局から渡されたレシートには、2ドル59セントとあるが、保険のある人は全て保険でカバーされ、保険がない人も無料で受けられるようである)

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「打ったところが痛い~!」

「痛みで腕があがんないわ!」

と同じく接種を終えたK枝やE子からメッセージが入った。

自分も接種後から腕が痛むものの、皆もそうなら心配もないだろうと思っていたのだが、夜寝床に入ると、寝返りをうつたびに痛みで目が覚め殆ど寝れぬ夜を過ごす羽目になった。

隣で寝ているN君は摂取後も全く痛みもなく、がーがーいびきをかいて寝ているのが恨めしい!

だが、そんな痛みも次の日の夜には大分治り、今ではうっすら筋肉痛のような感覚があるだけで、普段通りラジオ体操もリングフィットもやれるくらい元気だ。

第2回目摂取は、3週間後。

2回目は副反応がきついというが、さてどうなることやら。



イタリアの国旗があちこちにみられるノースビーチ。
この通りにあったミュージカル劇場も今は無い。


教会前の広場も人はまばら。



タンクトップの若者たちを横目でよそ見しながらの散歩。


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