生きていればなんとかなる 生きていれば
毎年この時期には、会社のホリデーパーティが開かれる。
今年はこのご時世で、それもキャンセルとなり、替わりにビデオ中継で会社のお偉いさんの話と、名前も顔も知らぬシンガーの歌を聴かされることとなった。
「ねえ。こんなことにお金使うなら、お給料あげて欲しいわよね」
「明菜とか聖子とかだったら、大喜びで観るのに」
などと日本人の同僚たちとチャットで軽口をたたいたのだった。
明菜と言えば、と何年か前に紅白歌合戦で久々にテレビに顔を見せてくれたのを思い出した。
相変わらずの切れ目の美しい横顔だったが、なんだが彼女、疲れてて元気がない顔と感じたのは自分だけかしらん。
「何だか明菜も歳とったよね。口角下がっちゃってさあ」
と口の悪いオカマ友達は、自分もだいぶ歳をとったのを棚に上げて、当時その放送を観て言っていたが。
確かに、どんなに目で笑ってみせても、口角が下がっていくと元気に見えない。
心の疲労が続くと、口角が下がっていくと、そういえば昔どこかで読んだのを思い出す。
“も、もしや?!”
と洗面所に駆け込み、鏡を覗くと中年オカマの口角も、下がりきっていて、はじめて会ったよな不幸顔、であった。
毎日在宅勤務で、鏡を覗くこともほとんどない生活だったから気づかなかったが、この1年で白髪もだいぶ増え、疲れた顔の中年のおっさん(おばさん!)に成り果てていたのである。
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土曜日。
天気も良いので、クリスマスツリーを買いに出かけた。
売上げの大部分は恵まれない子供達のために使われるということで、他より少々値がはるがここ数年はここで購入している。
ボランティアのガタイの良い若いお兄さん達を横目でチェックしつつ(ムフ)、それほど大きくないが香りの良い元気そうなツリーを見つけてきたわ。
リビングの窓際に置き、飾りとライトを点けたら、パッと部屋が明るくなった。
このご時世で心が沈むことも多いが、こうやって無理矢理明るくして、口角上げて行かなきゃだわ、と思う。
「東京の友達が引きこもりになっちゃってね」
「実家の兄がストレスで朝起きれなくなっちゃったらしくて」
と同僚や友人からもそんな話をよく聞くから尚更だ。
さて、あたしも半沢直樹でも観て元気出そうかね、
とラストに近いエピソードを酒を片手に観ていたら、
“生きていればなんとかなる
生きていれば、なんとかね”
と半沢直樹が妻の花から言われるシーンがあった。
それを聞いて思わず涙した中年サラリーマンオカマである。
生きていれば、なんとかなる。
家族も友人もなしの静かなクリスマス動画
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