Love is all
メキシコシティの古い街並みを、革靴で石畳を音を立てながら、スーツにネクタイを締めて歩く。
(数年前の映画であった、ジェームスボンドにでもなった気分よ!)
独立記念日の祭りの準備で騒がしい大通りを抜けて、細い路地に入り、招待状に書かれた住所にたどり着くと、スーツやドレスで着飾った人々が列をなしているのが見えた。
その列の最後尾に並び、新郎と新郎の準備ができるのを待つ。
空を見上げると、結婚式にふさわしい、優しい秋晴れの日だった。
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同性婚が認められるようになってからというもの、自分の周りもたくさんのカップルが結婚していった。
今そういった相手がいなくとも、あるいは相手はいるが結婚する予定は今のところなくとも、一生一緒に居たいと思える相手と、結婚したい時にできるという選択肢があるということは、心の大きな自由である。
結婚が認められていなかった頃、ビザの関係で国を跨いで離れ離れにならなければならないカップル達を大勢みてきたから、なおさらだ。
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そんなことを思いながら、二人揃って黒のタキシードで現れた友人の新郎と新郎を拍手で迎える。
新郎のH君は中東系アメリカ人で外交官として、メキシコシティに赴任してきた。そのお相手のM君は、アメリカでの仕事を辞めて一緒にやってきて、今は大使館の事務員として働いている。
「Are you an FSO too?」
披露宴の会場で同じテーブルについたアメリカ人の男に突然話かけられた(うほっ!いい男っ!)。
一瞬、質問の意味がわからず、FSOをSFO (サンフランシスコ国際空港)と思い込んだ自分は、
「Yes, I'm from San Francisco」
などと答えてみたが、あとから周りの話を聞いていると、FSOとは"Foreign Service Officer(外交官)の略で、どうやら自分はとんちんかんなことを言っていたようだ。
(それっきり、そのいい男からは話しかけられなかったわ?)
外交官の結婚式だけあって、出席者も、南アフリカ、エジプト、台湾、フランス、プエルトリコなどなど、世界各地から遥々このメキシコシティに集まって、この二人の新郎をお祝いしに来ている。
周りを見渡すと、ゲイもレズビアンもいっぱいいたが、それと同じくらいのストレートの人もカップルもいる。
H君のお母さんはスピーチで、
「ゲイだろうがストレートだろうが関係なく、こうやってHとMのために、世界中からここにこうやって集まってお祝いしてくれる人々がいて、親としてこんなに幸せなことはありません」
と声を詰まらせながら涙して語り、それを聞いた自分も、周りの人々も思わず涙。
スピーチのあとは、H君の国の結婚式の伝統というベリーダンスのショーがあったり、現地のメキシコ人の音楽隊の歌と演奏があったり、と夜中の2時過ぎまで宴は続いたのだった。
H君、M君おめでとう。
末永くお幸せに!
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