雨上がりの空を見ていた 通り過ぎてゆく人の中で

小雨の降る月曜日。

まだ外が明るい中、仕事帰りにオカマ仲間のY子と飲み屋の窓際の席に座って、ハッピーアワーの安い酒を片手に道を往く男達を眺めていた。

「なんか寒いわ」
「そう? 大分暖かくなってきたじゃん」
「心が寒いのよ」

大分前に数ヶ月付き合っていた男と喧嘩別れをしたY子が、女優めいた表情で淋しいと遠くを見つめながらいう。

「何いってんのよ。ほら聖子の歌でもあったじゃないのよ。『淋しく寒い冬の次にはきっと来るわ 光あふれる希望に満ちた季節~』だっけ?」

「いいのよ、あたしひとりは慣れてるから」

元々、波のある女(オカマ)のY子であるが、今日はアンニュイな女優ぶりたい気分なのか、聖子ネタにも乗ってこず、何か悩みでもあるのかと少々心配になった。

だがその数日後、朝っぱらから、若かった頃に何度もいざこざを起こした男と"友達”として一緒にハワイ行ってくる、彼と一緒にスノーケリングのギア買わなきゃ、などとY子から浮ついた声で電話が入り、「もう、あんたいい加減にして?」と電話を切ったあたしである。


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土曜日。

週間天気予報では終日雨の予定だったが、朝起きてみると太陽が雲間から覗いている。

雨を理由にして、仕事以外は家に篭って、酒を飲みながらゲームや読書ばかりの日々だったので、久々にひとり散歩に出た。

2月に入ったとは言え、まだコートにマフラー無しでは厳しい寒さだ。

いつもの坂を下ってカストロの街へ向かって歩いていくと、毎年春になると薄いピンク色の桃の花を一杯に咲かせる木の枝の陰に、ひっそりと1つだけ花がひらいているのを見つけて、思わず嬉しくなる自分(乙女!)。

道に咲き始めた花を、喜び愛でることができるくらいには歳取ったわ


寒い冬があるからこそ、暖かい春を有難いと思える。
長い雨の日があるからこそ、晴れた日がより幸せに感じられる。

そして、先の松田聖子の歌じゃないが、寒い冬の後には必ず春が来るし、
雨の日の後にも必ず晴れた日がやってくる。

帰り道。雨上がりの空をみあげながら、

「これで虹でも出てくれたら、もっといいんだけどねぇ」

と欲張った気持ちでいたら、急にまた雨が降ってきた。

こんなすぐに雨降り出すと思わなかったから、傘も持ってこなかったわよ!


雨の間は、家で静かに酒飲みながら、
小田和正の「たしかなこと」でも聞きながら、次の晴れ間を待つ
この曲、明菜もカバーしてて、いいんだよなあ





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