この世界に潜む怒りや悲しみに あと何度出会うだろう

朝の6時半。携帯のアラームで目が覚める。

すぐに起きてシャワーを浴びればいいものの、毎朝ぐずぐずとベッドの中で携帯をいじって数十分過ごす。

まずはと、仕事のメールをチェックすると、会社の米国本部のトップから従業員に向けた長いメールと、サンフランシスコ・ベイエリアのオフィスを統括するトップから従業員に向けたメールがそれぞれ早朝に届いていた。

どちらのメールも、週末の空港での中東・アフリカ7カ国からの出身者の米国入国を認めないというトランプ騒ぎに対して、会社やオフィスの立場を従業員に伝えるもので、トランプのやっていることは"Not acceptable"で、会社として、米国の従業員、米国外の従業員すべてをこういった障害から守っていくというものだった。

メールの最後には、会社として個人の尊厳を認め、"all inclusive"で人種や出身、性別、性的指向、宗教で差別しない、と改めて書かれていた。

トランプが大統領になってから、メキシコや中東出身の若手の社員達が、自分のところに、ビザやグリーンカードの心配を相談しに来るようになった。

アメリカで頑張って大学を出て仕事先を見つけ、毎晩遅くまで働いている彼らは、仕事のストレスだけじゃなく、せっかく築いたここでの生活が、いつ何時揺るぎかねないこの状況に大きなストレスを感じている。

メキシコや中東出身の彼らだけじゃない。去年の秋からここで働いてくれている日本人の新人君の労働ビザだって、この調子じゃいつ発行が縮小されるか分からない。

アメリカ人と結婚した日本人の女友達が、旦那がトランプに投票したと困惑した顔で言っていた。

この旦那は、自分の奥さんやその友達、同僚がビザやグリーンカード取得に今までどれだけ苦労し、ストレスを感じてきたかを見てきたであろうが、一体どんな気持ちで移民縮小を掲げるトランプに投票したのだろう。

「奥さんは日本人で結婚してグリーンカードもあるから、トランプの言う移民対策など自分の家族には影響ない」「移民問題よりもっと大事なことがある」とでも思ったのだろうか。

また、サンフランシスコ市内の小学校で先生をしている友達が、

「クラスメートにちょっかいを出している生徒に注意をしたら、『大統領がメキシコ人や中東の人を追い出せって言っているのに、なんで僕が同じこと言ってはいけないの』と返され、言葉に詰まってしまった」

と言っていた。

トランプの名の元に、こういういじめも正当化されてしまうのか。

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この国で、パーティや飲み会に参加し親しくなると、アメリカ人達は先祖がどこ出身かという話によくなる。

"父方はアイルランドで、母方はデンマーク"
"父方はメキシコで、母方は日本と中国"
"父方はドイツで、母方は南アフリカ共和国"
"父方はネイティブアメリカンで、母方はイラン"
"父方は鹿児島で、母方は青森よ!"(あたし)

先祖をたどればみんな移民の血が流れているのに、一体いつからこの国は特定の人種・出身者だけのものになったのよ!?


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