夕日のインクで書いた 出さないままのポストカード
「あんた、再来週の週末、金曜から3日間、スケジュール開けといてよ。」 と仕事中に、オカマ仲間のM男からLINEでグループチャットが届いた。 「えー、仕事今クソ忙しいから、金曜は仕事休めないわ・・・。その週末なんかあったっけ?」 と返事をすると 「俺は朝の6時から会社行って前倒しで働くから、あんたもなんとか午後半休とれるように何とかして。」 と言う。 同じグループチャットにいた同業者女子のM子に聞いてみると、どうやらM男とアメリカ人ゲイ友達のE子、そしてM子で、自分のために"バチェラーパーティ"と銘打ってパソ・ロブレズへ週末旅行を計画してくれているというのだった。 カリフォルニアのワインといえば、サンフランシスコの北にあるナパやソノマが有名だが、サンフランシスコとロサンゼルスの中間あたりに位置するパソ・ロブレズのワイナリーも地元では良く知られている。 今年の春にN君が、高校時代の親友や水球仲間やらと、「バチェラーパーティ」と銘打って、図体のでかいアメリカ人10人を連れて、日本国内を旅行した際に、自分の友人からは、 「N君は遥々日本でバチェラーパーティしたのに、あんたはしたくないの?」 と何度となく聞かれたのであるが、やはり自分のために何かしてもらうというのが、もうなんだか気も使うし億劫で 「バチェラーパーティとか、そういうの日本の文化にないし、やらない!」 と言い続けてきたのだ。 いや、言い続けてきたつもりであったが、どこかの飲み屋で酔っぱらった勢いで、 「まぁ、もしやるとしたなら、ほんとに気の知れた少人数で海の見える家か自然に囲まれた家でワインでも飲みながら、ぼんやり過ごしたいわねぇ」 などと言ったのかもしれぬ。 それを覚えていてくれたM男やM子が、こうやって企画してくれたのである。 2週間後の金曜午後、仕事もままならぬまま、つけっぱなしのコンピュータと3日分の着替えを旅行カバンに詰め込み、E子の車でワイン畑の街へ向かっていた。 11月のはじめに夏時間が終わったこともあり、車の窓から見える景色が紅葉したぶどう畑に変わったころには、空はすっかり夕焼け色である。 さらにぶどう畑の中を走る小道を抜け、小高い丘をのぼると大きな一軒家-今週末の我らの宿-に到着した。 ポストカー...