暮れなずむ町の光と影の中 去りゆくあなたへ贈る言葉

休日出勤の土曜日。

いつもならば霧に覆われているはずのサンフランシスコの8月にしては珍しく、雲ひとつない青空の中、自分はひっそりオフィスに篭って仕事である。

そんな仕事の合間に、携帯でインスタやらフェイスブックを覗いてみたならば、三連休ということもあって、皆あちこち旅行先から楽しそうな写真を載せている。

同業者のM子ちゃんは、カナダのバンクーバー。

オカマ友達のM男は、旦那の実家のミズーリ。

東京のK子は、韓国。

N君は、家族の集まりでシリコンバレーの南のサラトガ。

他の友人共は、ロサンゼルスのテーマパークやら、メキシコのプエルトバジャルタのゲイビーチやらで、それぞれ長い週末を楽しんでいるようだ。

自分と言えば、仕事を終え、そのままひとり家に帰るのもつまらぬと、ジムに寄ってみたけれど、やはりこの連休は皆旅行に出ているのか、人も少なくひっそりとしてたわ・・・。

結局、帰り道にスーパーマーケットに立ち寄って、安い白ワインを買って、汗だくになりながら家に帰ってきたのであった。

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先週の金曜日。

サンフランシスコのダウンタウンで働く日本人ゲイサラリーマンの夜飯の会が、年に何回かあるのだが、そのメンバーの一人であるTさんが、30年住んだアメリカを引き払い、日本に帰るというので、最後にと皆で集まった。

場所は、

「最後なので、カストロで!」

と、Tさんご指定で、オカマのメッカであるカストロに集合である。

Tさんは、自分より10歳くらい年上だろうかー(オカマの世界だから年齢が朧なのよ...)、いつもおされな身のこなしで、バリバリと仕事をこなす、中年オカマ(あたし)の憧れの存在だったのだ。

自分の仕事上での繋がりもあり、サラリーマンの会の外でもお世話になっていたので、今回Tさんから突然「帰国します。」と連絡があったときは、聊かショックだったわよね。

オカマの街のど真ん中にあるイタリア料理の店に集まり、

「東京に帰ったら、日本男児たちに挟まれて通勤で楽しみですね~」

「会社帰りの銭湯で、いい出会いがあるかもしれないわよ~」

などと、皆で冗談を言いながら、イタ飯(昭和!)をつっついていると、

Tさんがぽつり、

「やっぱり家族に何かあったときにすぐに駆け付けられる距離に住んでいたいじゃないの」

と言うと、思わず皆真面目顔になる。

日本に残した、年老いてゆく家族。

家族と離れて住んでいる者の、永遠の課題である。

いつものオカマ仲間達と、時には半分冗談で、

「もう日本帰りたい~。 ご飯安いし美味しいし~。」

などと言い合ったりするが、皆、それよりも本当は家族のことが心に引っかかってくる年齢にきている。

"こんな好きでもない仕事のために、週末も働いて、この街にしがみついて残っているくらいなら、とっとと引き払って家族のいる日本に帰ったほうがいいんじゃいのかしらん?'

"でもこの歳になって、新たに日本で職をみつけ生活するのは、キツイし・・・"

と自分も、いつも自問自答して足踏みしている訳で。

そんな中、アメリカ生活の大御所でもあるTさんが、こうやって勇気を出してアメリカ生活を閉じ、日本に帰ろうとしているもんだから、

これはもう、心から応援したくなる訳で!!!

イタリア料理屋を出て、オカマの街のど真ん中の虹色に色付けされた交差点で、ひと時のお別れのハグをし、

「次の”ダウンタウンの会”は、かわいい日本人サラリーマンゲイが集まる新橋でネ!」

と最後に皆で約束をしたのであった。



Tさん、日本でもお元気で!


これから始まる暮らしの中で
だれかがあなたを愛するでしょう~
(C) りんごちゃん





コメント

udon oyaji さんのコメント…
こんばんわ、初めまして。四国うどん県からの書き込みです。
親と離れて暮らすのは、特に自分が年齢を重ねて行けば行く程親の事が心配になるのは当然だと思います。高齢の親の面倒を見る、見ないは別にして万が一の事を考えるとTさんの言葉の重みも理解出来ます。
でも高齢の親という事は本人もそれ相応の年齢になっている、と言う事で帰国して仕事に就けるかどうかが悩みの種ですよね〜〜親の旅立ちを見送って自分の生活をどうするか、身近にいても本当に大きな悩みです。
ましてやゲイの独り暮らし!近所に兄弟がいてるとしても、先が思いやられます。
杉村春子の女の一生の台詞じゃないけれど、「自分が選んだ道だもの!!」残りの人生の幕を閉じなきゃね!
samurai sf さんの投稿…
udon oyajiさん

こんばんは、初めまして。うどんが美味しい県、いつか行ってみたいです。

我が両親はまだ元気でいてくれているようですが、同僚や周りの友人の話をきいていると、皆実家の家族の健康やらはだれもが共通でもっている心配事のようです。帰郷するたびに身体が小さくなっていくようにみえる親をみると、Tさんのようにいつでも飛んでいける距離に住んでいたいというのも、痛いほどわかる訳でして・・・。

本当に「自分が選んだ見tいだもの!!」で突き通したいとは思いながらも、先のことを考えると心配事はつきませんね・・・。

「あんまり先のことを考えて心配先取りしないで行こ~」とまわりの友人とは言い合っています。