そして僕は、途方に暮れる

「もう、あたし、やっぱり一生一人かも・・・」

朝、会社の部門全体のミーティングがあり、家からダウンタウンにある会議場にUBERで向かっていると、オカマのY子からいつもの湿ったメッセージが携帯に届いた。

Y子は、オカマ友達M男のドイツ人友達Gを先日紹介してもらい、昨夜ついにそのドイツ人と1回目のデートに臨んだらしいのだが・・・。

「長い間、真剣に男と付き合ってなかったから、デートの仕方も忘れちゃったわ。」
「もうひとりでいる事に慣れちゃったのかな。新しい出会いとか人に合わせるとか面倒くさくて。」

矢継ぎ早にY子から、メッセージが送られてくる。

「確かに、新しい出会いとか変化とか、40近くなって自分をそれに合わせたり変えたりするのは大変だけど、そういう機会があるだけでも有難いと思わない?」
「面倒くさいで終わらせないで、お互い興味があるなら、もう少しデート続けてみたらどうなのよ?」

と自分のことは棚に上げて、Y子を諭すメッセージを返した自分である。

確かにこの歳になると、既に自分の生活スタイルが出来上がっているし、自分の好きなこと・苦手なことも確立していて、自分でそれを重々分かっているから、それを相手や環境に合わせて変えようという気になれないのは分かる。

かくいう自分も、ついこの間、職場で辞令のEメールが届き、ここ数年ずっと変化を嫌って断って来た昇進が決まってしまった。

周りは「給料もあがるし、若手もこき使えるし、いいじゃんよ!」と言うが、自分にとっては、漫画「きのう何食べた?」の弁護士シロさんじゃないが、上を目指すよりも変化のない日々の平穏とストレスのない生活を望んでいるから、この昇進は肉体的にも精神的にも本当にきつい。

Y子は新しい男との出会い、自分は新しい職場環境。傍からみたら良い事に見えても、本人にはため息なのだ。

そんなことを思いながらUBERを降り、会議場に向かって歩いていると、東京の出版社で雑誌編集をしている同い年のオカマK子から、こちらも矢継ぎ早にLINEメッセージが入った。

「今日、会社の役員室に呼ばれて、"ひゃだ、最近2丁目でオトコ漁りしてたのバレて叱られるのかしら"と思ったら、あたし副編集長に昇進だって!」
「これからは忙しくなって、もうエジプトとかLAとかあちこち遊びに出歩けなくなるかも!」

どうやら、"もうあたし達40だから環境の変化は厳しいのぉ"などと、現状のぬるま湯に浸かるには、まだ早いようなのだ。

どうなることやら。



飲まなきゃやってられん。
先を考えただけでも、胃が痛い。


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