死に至る病、そして (7)

「どうしよう! 2回目のワクチン打ったら、体が全く動かない!体に力が入らない!」

とサンフランシスコ近郊に住む友人がFacebookに投稿しているのを見て、恐ろしくなって2回目の接種を本気で取りやめようかと思った自分である。

確かに、自分の周りでも2回目のコロナワクチン接種の後は、1回目以上に副反応が出ることが多いようで、ついこの間も先に接種を終えた日本人の同僚が、仕事中に体がだるいから横になると言っていたのだった。

高熱が出たり、体の節々が痛くなったり、ヨーロッパでは顔面が麻痺したような人もいるという。

その一方で、2回目の接種の後も、せいぜい打った腕が筋肉痛のようになる程度で、熱も痛みもなくぴんぴんしている人も多い。

実際に、1回目だけ打って2回目は打たずにいる人もいるとニュースで騒いでいたが、2回打たねばちゃんと効果が得られないというのであれば、やはり打たねばなるまい…。

とはいえ、今は仕事の繁忙期である。

接種日の翌日は朝からクライアントとの電話会議でカレンダーが埋まっている。

「ワクチン打って体調悪いので、休みま~す!」

などとぶっ倒れていられない状況じゃないのよぉ。

"それじゃ、せめて、どうすりゃ副反応がひどくならずに済むの?"

と、残業を終え酒を片手にネットで調べてみると、せいぜい

- 接種前と接種後には十分な水分補給

- 接種後は腕回りの軽いストレッチや運動

などと書いてあるのみで大した情報は見当たらないのであった。

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1回目の接種からちょうど2週間後の月曜日の朝。

1回目とおなじ、市内のイタリア街のはずれにある薬局に着くと、今回は陽気なおばちゃんが担当のようである。

「1回目の時、副反応あった?」

「注射は苦手?注射針みて、今までに失神したことある?」

などと質問をされたあと、前回同様ファイザーのワクチンをぷすっと左腕にやられ、

「Congratulations!」

と言われたら、あっさりと終了である。

何がCongratulations!なのか、よー分からんが、とりあえずワクチン接種完了でおめでたいということらしい。

念の為、痛み止めの薬とでかいペットボトルの水買って帰ることにしたわよね。

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さて、家に戻り仕事机に向かい、早数時間。

思わず、仕事の合間に、接種から何時間たったかと、時計をちらちら見ているのだが、今のことろ噂で聞いていた倦怠感や熱、痛みは一切ない。

ちょっと、熱っぽいの? (C)南野陽子、と体温計をおでこにかざしてみても、37度以下である。

"もしかして、あたし2回目もたいした副反応なしでいける!?"

と夜になっても、いつも通り何事もなく時間は過ぎていき、それでも、弱気な自分はとりあえず今夜は酒は我慢して飲まず、おとなしく寝ることに。

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まだ外が薄暗い早朝に、目が覚めた。

…頭も痛くない。

…体も動く。

…しかし!

パジャマ(と言ってもユニクロの婆婆シャツだがね)がぐっしょり濡れている….!

ひゃだ!?

一瞬、40過ぎの中年がおねしょやらかしたかと思ったが、どうやら汗のようである。

確かに、ぼんやり寝ている間に悪寒がしていたような気もしているから、寝ている間に熱を出していたのかもしれぬ  ((C) 二十歳の微熱、否、四十歳の微熱)。

でも、今朝は熱もなくいたって元気である。

いつもの通り、隣で元気よくいびきをかいているN君も無事のようだ。

朝一番のクライアントとの電話会議でも、ワクチンの話で始まり、同僚や友人ともそんな話になることが多い。

「どこのワクチン打った?」

ってのが、流行語大賞になりそうなくらいだわよ!

サンフランシスコとその近郊では、来月からマスク着用の義務を解除するらしいが、同業のM子やオカマ仲間のK枝とは、

「ねぇ、まだ早すぎるよね…」

と心配になっている。

色々な理由でワクチンを受けない人もいるし、そもそもワクチン自体が100%コロナから守ってくれる訳ではないじゃないの。

「うちら、もう若くないんだから、自分のことは自分で守らないとね」

と、中年同士、ワクチン接種後も気を引き締めるのであった。


ワクチン接種前夜もイタリア街を歩き、旅行気分を味わう

明日から当分お酒もおあずけよ
(ワクチン接種とアルコールについては特に何も言われていないようだが念の為)


風がおどる5月の街で (C)南野陽子



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