砂漠へ

例年、サンクスギビングの連休は、N君家族の集まりで、七面鳥を焼いたり皆でパズルをしたりと、なんともアメリカらしい休日を過ごすのだが、今年は諸事情で家族でのサンクスギビングはキャンセルとなった。

さて、家族での集まりがないとなると、まるまる4連休することがない。

「K枝ちゃん、あんたサンクスギビング休暇は、何するの?」

と近所に住むゲイ仲間のK枝に問うと、

「パームスプリングスの友達んとこ、行ってくるわ!」

と答えが返ってきた。

同じく近所に住むアメリカ人の友人E子や、LAに住む”いい男カップル”のA子やM君にも聞いてみると、皆口を揃えて、

「パームスプリングス!」

と言うではないの。

“確かにサンフランシスコは寒いし、どこかあったかいところ行くにもハワイやメキシコは遠いし…. パームスプリングスなら、同じカリフォルニア内で近いし、いいかも…”

と友人達の予定に勝手に乗っかろうとる自分である。

そこに、その昔、中森明菜がSand Beige〜と歌っていたのが(あれはサハラ砂漠か)、突然脳内再生しだし、

“もうこれも何かのご縁、あるいは運命なんだわ!?”

と、我らも急遽この連休は、砂漠の街パームスプリングスで過ごすこととなったのだった。



サンフランシスコから1時間半ほどのフライトで
窓の外にはパームスプリングの砂漠と風車群が見えてくる


砂漠の中に突如現れるこの小さな街は、一年中暖かいということもあり-夏は外に出れないほど暑くなるようだが-、ゲイやレズビアンの人々の老後の生活拠点としても人気である。

自分の会社のゲイの元上司も、60歳を前に早期退職すると同時にサンフランシスコから、パームスプリングスへの引越しを決めていた。

今年の夏に、パームスプリングス~デスバレーと旅行をしたという、近所に住む年下ゲイのH君は、

「パームスプリングスは、ほんと! ジジイしかいなかったわ!」

などと嘆いていたが、実際にこうやって街を歩いてみると、朝から中高年のゲイのおっさんやレズビアンのおばちゃん達が、街角で楽しそうに仲間達とコーヒーを飲んでいたりする。

まだ外の明るい夕刻に、ダウンタウンの飲み屋に向かうと、H君の言う通り、自分よりもだいぶ年上のゲイの"ジジイ"達が、みな楽しそうに夕暮れ時のカクテルを楽しんでいた。

家族とも離れて暮らし、子供もいない我々ゲイにとって、同じゲイの仲間達が集まる街で、血のつながった家族じゃなくとも、こうやってお互い支えあいながら、老後を過ごすのもいいよなぁ、とそう遠くない自分の老後の計画を思わず脳内に描いてみたわよね・・・。


ホテルのプールからは、サン・ジャッキント山脈の美しい眺め
プールサイドのウェイター君(いいオトコ!)にブラッディマリーを頼んだら
朝から至福の時


コロナ禍で弛みに弛んだ運動不足の身体だが
"旅の恥は掻き捨て"で
久しぶりに水着になって泳いだわ・・・

サンクスギビング明けの金曜日。

「ねぇ、ジョシュアツリーって、行ったことある? アメリカの国立公園で、パームスプリングからそんなに遠くないみたい!」

と、同じタイミングでパームスプリングスに来ていたK枝に聞かれ、まだ一度も訪れたことのない、その砂漠のど真ん中にあるという国立公園に、我が家のN君の運転で向かうこととなった。

パームスプリングスの街から1時間弱のところにある
見渡す限り、ジョシュアツリーと砂漠が続く


砂漠の中に突然現れる、岩の大群は
灼熱の太陽を浴びて神秘的であった

金曜の夜は、昨年ロサンゼルスからパームスプリングスに引っ越してきたという、日本人の音楽家の友達の家で、LA在住のA子&M君カップルと一緒に、鍋パーティとなった。

「老後は皆でパームスプリングスって、いいかも?」

とA子が言うと、

「ロサンゼルスも車で数時間だし、街が恋しくなったら、何時でも遊びに出れるしね。」

「冬が寒いところだと、家から出なくなるけど、パームスプリングスなら年中あったかいし。やっぱり年取ったら暖かいところがいいわよ~。」

「でも、パームスプリングスも、物価は高いわ・・・。やっぱり、老後は物価も医療も安い日本がいいかな・・・。」


「確かに! パームスプリングスは、海もないし。日本なら新鮮な寿司や刺身がとんでもない安い値段で食べられるわよ!」

などと、皆で鍋をつつきながら、老後の計画で砂漠の夜は更けていったのだった。


滞在中のホテルの部屋からは
サン・ジャッキント山を背景に不思議な色の空



パームスプリングス在住の友人宅のプールからは
金星が遠くに見えた


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