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3月, 2017の投稿を表示しています

はらはらと涙あふれてくる 春一番耳元吹きぬける

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土曜日の朝、ベランダの植木に水をやっていると、隣の家の庭に立っている桜の木から、白に近い薄紅色の花びら達がひらひらと風に舞っているのに気づいた。 このままぼーっと座って、美しく花が散っていくのを、酒でも片手にずっと見ていようかしらん・・・などと乙女な気持ちを抑えつつ、中年の重い体を引き摺ってジムへ向かった。 卒業できない恋もある。木々の色も変わるけれど。 (C)渡辺美里 窓際にあるマシーンに座り、周りで運動をしているいいオトコ達を横目で見ながら、適当に肩を鍛える(フリをする)。 ふと窓の外の通りに目をやると、向かいの歩道を、目の不自由な人用の白杖を持った女の子がひとりで歩いている。 はじめは気にもせずに、ジム内のオトコ達に目を戻した自分だが、少ししてまた窓の外を見ると、その女の子は白杖を片手に右へ向かったり、左へ向かったりと、どうやら方角を失ってしまったようだ。 もしかしたら、ここから数ブロック先にある地下鉄の駅を探しているのかもしれない。 ちょうどその時、若者の集団が彼女と同じ方向に向かって歩いていったけど、誰も声をかけようとも、手を差し出そうともしない。 それどころか、ぎゃーぎゃーしながら、そのまま通り過ぎていったわよ!? 「もう!今時の若い子はっっっ!!!」 急いでマシーンを離れ、階段を駆け下りてジムの外へ出ると、まだ道路の向かいの歩道で、その女の子は、右往左往している。 「道に迷ったの? チャーチ駅を探しているの?」 道路を渡り、彼女に駆け寄って声をかけた。 突然オカマの中年に声をかけられたからか、一瞬驚いた様子を見せたけど、静かに頷く彼女。 「大丈夫! 自分も今チャーチ駅の方面に向かうところだったから、一緒に行きましょ!」 自分の言葉にほっとしたからか、やっと笑顔を見せてくれた彼女。 駅に向かって彼女と一緒にゆっくり歩いていった時に気づいたが、この辺りは最近新しいマンションを建てる工事が多く、元々目の不自由な人たちが道しるべとしていたポイントが失われていたのかももしれない。 「この階段を降りれば地下鉄駅だよ。一緒に降りていこうか?」 「大丈夫。ここまで来れれば分かるから。ありがとう!」 彼女を送り届けたらなんだか安心して、もうジムなんてどうでもよくなって、いつものカフェで一

LA LA LAND ツアー

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「どうしよう。仕事休みになったんだけど、何をしていいか分かんないわ」 いつもなら土日は仕事のY子が、今週末は休みをもらったらしいのだが、これと言った趣味もなく、時間を持て余しているという。 「たまの休みなんだから、家でぼーっとゆっくりすればいいのよ。まあ、ほんとは打ち込める趣味でもありゃいいんだろうけど」 Y子にはそう返事してみたものの、自分も趣味といえば、せいぜいへたっぴピアノくらいで、胸を張って趣味と呼べるものがない。 オカマ仲間のK枝は、週末午前中はゲイのテニスサークルに通って汗を流しているし、M男は平日休日関係なしに男漁りを趣味にしている。 会社の元同僚女子に話すと、 「これから趣味として何か始めるなら、老後のこと考えて選ぶのよ。ボケ防止になるようなものや、いざという時に助け合える仲間づくりになるようなのもいいんじゃない?」 と、まだ30代と思えぬような返事が返って来たわ。。。 毎週末、近所のカフェの窓際に、ゲイの老若男たちが座って毛糸で編み物をしているグループを見かけるのだが、手先を動かしてボケ防止になるのと、いざという時に助け合える仲間づくりになるのにぴったりじゃない、と思わず納得する自分。 仲間に入れてもらうべき?! ---------- 先週末は、一泊二日の弾丸スケジュールでロサンゼルスへ行って来た。 今年の初めに一緒にエジプト旅行に行ったLA在住のA子が、広瀬香美氏のロサンゼルス公演にコーラスで参加すると言うのだ。 元々思い立ったら即行動のA子。マラソンが趣味でホノルルマラソンに参加したかと思えば、歌が好きで地元の合唱団に参加したりしている。 何かに興味を持っても、なかなか行動に移せない自分だが、打ち込める趣味を見つけては、きらきらと人生を楽しんでいるA子に会うたびに、もう眩しすぎて目が痛いくらいだ。(しかも背が高くて、いい男なのよ!) 「せっかく皆LAに来てくれたから、ララランド ツアーでもしようか!」 とそんなA子の素敵な提案で、A子のパートナーのM君と東京から駆けつけたK子とその女子友達とで、駈け足でLA観光へ。 ハリウッドサインのある丘の脇を登っていった所にある LAの街を一望できるグリフィン天文台

春色の汽車に乗って 海に連れて行ってよ

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夏時間がはじまり、1時間遅く起き出した日曜日。 ついこの間までコートにマフラーをしていたのに、突然春を飛び越えて夏の陽気となり、オカマの街を歩けば、タンクトップとショートパンツのオカマたちであふれている。 ジム帰りにジムの隣に新しくできたカフェで買った冷たいミントティを片手に、中年オカマがおされぶって街を歩いてみる。 中年オカマには、コーヒーよりも胃腸を整える作用のあるミントティよ。 東京の新宿にも店舗を出してるらしい。 いつも仲間が集まる時やデート(?)で昔からお世話になっている、Cafe Floreの前を通ると、昔は朝も晩も店内も外のテラスもいっぱいのお客で賑わっていたが今は人もまばらだ。 「Cafe Flore、またオーナーが変わるらしいよ。経営状況よくないみたいで。」  と、情報通のオカマ仲間のM男が、この間言っていたのを思い出した。 この街に引っ越してきたころからお世話になっている、色々な思い出の詰まったこの店がもし潰れてしまったら、と思うと悲しくなる。 おされで若者がいっぱい集まるコーヒーショップでミントティ買うくらいだったら、ここでしっとりお茶しとけばよかったわ!と思わず独りごちた自分。 このCafe Floreだけじゃない。 家賃の高騰が続くこの街で、地元の商店やレストランが次々に店を閉じていくのを、たくさん目の当たりにしてきた。 大分前に誰かがフェイスブックで、自分達の街のビジネスは自分達で守ろう!と投稿していた。 自分も若い頃は、なんでもかんでも安い大型店やチェーン店に行っていたが、今は他の店より少し高くても、出来る限りカストロ通りにあるローカルな店に行くようにしている。 地元商店街を守ろう!ではないが、コーヒー豆は"Castro Coffee"、日用雑貨は"Cliff's"、クリーニングは"Castro Village Cleaner"よ! --------------------------------- 空気もだいぶ暖かくなってきたので、クリーニング屋で出していたスーツを取りに行った帰り道に園芸店(こちらも地元カストロの店)で花の種を買ってきて、家のベランダのプランターを耕して撒いた。 今回は

もしも生まれ変わっても 私はわたしを生きたい 世界は変えられなくても

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時々高校時代を今振り返って、 「クラスメートの男どもが、B'zやらWANDSやらMr. Childrenやらスピッツやらの曲で盛り上がってる傍で、ひとり密かに大黒摩季ばかり聴いていたわ・・・」 などとオカマ友達に言ってみたなら、「あんた、当時から不幸ぶったオカマやってたのね」と突っ込まれる。 確かに、汗臭い高校男児のクラスメートたちが、生意気にラルフローレンのベストにリーガルのローファーを履いて、ポケベル片手にかわいい同級生の彼女を連れて青春を謳歌してるなか、"マイナスだらけの未来はいらない~"とか、"イジけない、ネタまない、間違ってなんかない~"とか、ひとりで聴いていたのだから、そんな悪態をつかれても、言い返せない。 そんな彼女は、長いこと子宮疾患のために歌手活動休止をしていたみたいだが、その治療を終えて、昨年の末に復帰したという。 そんなニュースを聞いた後、25年前のデビュー曲から最新の曲までを網羅したベスト版が出たというので、思わず懐かしくなって日本から取り寄せて購入したわよ! 聖子や明菜もいいが、なんとなく元気が出ない朝は、大黒摩季を聴きながらシャワーを浴びて、無理やり目を醒めさせる昭和オカマの自分である。 ------------------------- 日本に住む我が妹も、一ヶ月程前に子宮疾患で手術をし入院していた。 結婚してからずっと不妊治療をがんばっていた妹が、それに加えて入院して手術ということで、手術前から精神的にもかなり落ち込んでいたようだ。 以前は得意のイラストや飼っている猫の写真でいっぱいだった彼女のインスタグラムも、もう長いこと投稿されていなかった。 「ほら、大黒摩季も治療終えて復帰したみたいだし大丈夫だよ! 情熱大陸のドキュメンタリーにも出てた!」 とそんな妹にLINEでメッセージを送ると、 「ほんと昔よく大黒摩季聴いてたよね~。 情熱大陸観た。泣けたよ。」 と返事。 長い不妊治療と術後の痛みに苦しむ妹に他愛もないLINEメッセージを送ることしかできぬ、頼りない兄(あたし)である。 ------------------------ 久しぶりにいつもの飲み屋でオカマ仲間の4人で集まっている。 「もし生まれ変わったら、ストレー

いつかきっと自分らしく この街で戦いながら

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久しぶりに晴れた週末。 せっかく雨もやんだことだし、と朝からジム着で散歩に出た。 長く続いた雨のせいで梅や桃の薄紅色の花たちは殆ど散ってしまったが、それでも雨上がりの空気の中を歩くのは気持ちがよい。 十数分程歩き、ゲイのメッカ「カストロ通り」に到着すると、まだ朝なのに大型バスが何台も止まり、その通りにあるカストロシアターの前には、大勢の女性達が並んでいる。 何かイベントでもやっているのかと近づいてみると、「Lesbians Who Tech」という看板が出ている。 「IT業界の職場を、もっと女性、とりわけレズビアンが活躍しやすいものにしよう!」という趣向で、ネットワーキングやリクルートセミナーが数日にわたって行われているようだ。 アマゾンやツイッター、フェイスブック、アップル、グーグルといったIT大手に加えて、ディズニーやウォルマート、米国政府等も参加していて、多くの企業・団体がLGBTの支援をしてくれていることを心強く思う。 ITだけじゃなく、色々な業界の企業が参加。 自分の会社も協賛していた。 携帯で写真を撮っていたら、後ろから中学か高校生くらいの女の子がお父さんらしき人と話しているのが聞こえてきた。 「レズビアンの人だけ特別なの? こんなに企業がいっぱい集まってるのに、異性愛者の人に対してフェアじゃなくない?」 という娘の素朴な疑問に対して、 「異性愛者の人は、自分が異性愛者であることを会社で隠す必要はないけど、LGBTの人は同性愛者であることを理由に職場で迫害を受けたり、それを隠していることが精神的にストレスになったりするだろう。そういったLGBTの人たちが異性愛者と同じようにそれを隠す必要がこの世の中からなくなったら、こういったイベントも必要なくなるかもしれないね」 とすばらしい答えをするお父さん。 横で会話を盗み聞きをしながら、どんな素敵なお父さんなのかと顔をこっそりみてみたら、やっぱり渋くていい男・・・! ちなみに、看板をよく見てみたら、このイベント、レズビアンだけじゃなくて、ゲイも、LGBTをサポートするストレートもみんなウェルカムです、と書いてあった。 ------------------------------ 小腹が減ったので、新しく出来たというカレー屋で早めの昼飯にする。