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ショーシャンクの空に

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好きな映画を一つ選ぶとしたら、何を選ぶ?と聞かれると、今まで大して観てきた訳でもないのだが、 「サウンドオブミュージック」や「ララランド」のようなミュージカル映画も好きだし、 「リトルダンサー」や「ガタカ」のような静かな映画も捨てがたいし、 「プリシラ」や「ブエノスアイレス」といったオカマ映画も外せないし、 「ラピュタ」や「魔女の宅急便」の宮崎駿作品はもう何十回も観てるし、 と思わず悩んでしまう。 それでも、時々突然観たくなる、大好きな映画なのが「ショーシャンクの空に (The Shawshank Redemption)」なのだ。 妻とその愛人殺しの汚名を着せられ、ショーシャンク刑務所で服役を強いられ、20年間刑務所で過ごした後、脱獄を成功させる元銀行員アンディと、その刑務所仲間レッドの静かな物語。 Googleで検索してみたら、もう20年以上も前の映画なのね。 ------------------------------ この週末は知り合いの結婚式で、木曜から仕事を休んでメキシコの「ジワタネホ」という街に来ている。 メキシコ人の同僚に言っても、「それってどこだっけ?」と聞き返されるくらいの、漁村から発展した小さな浜辺の街。 そして、先の映画「ショーシャンクの空に」で刑務所を逃れたアンディが辿り着いた楽園、そして後に服役を終えたレッドと再会を果たすのも、この「ジワタネホ」だった。 サンフランシスコから飛行機で半日もかからないところに、 こんな静かなビーチがメキシコにあるとはねぇ。 久々に強い日差しを浴びながら、ビーチやプールでぼーっとしようとするも、 仕事の事が頭のどこかにあるので、なかなか完全にリラックスできないのが哀しい。 小さな街で他にすることもないので、波の音を聞きながら、マルガリータを片手に夕焼けを仰ぐ。 結婚式は、メキシコ人の新婦の出身でもあるジワタネホのプラヤ・ラ・ロパで行われ、新郎新婦の家族、友人、同僚が、彼らを祝福するために、アメリカ国内外からこの小さな浜辺に集まった。 友人である新郎と、なんでまたこの小さな浜辺で式をやるのかね、という話になったら、 「いつか子供が大きくなったら、ここに連れてきて、『お父さんはここでお母さんと結婚したんだよ。お母

雨上がりの空を見ていた 通り過ぎてゆく人の中で

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小雨の降る月曜日。 まだ外が明るい中、仕事帰りにオカマ仲間のY子と飲み屋の窓際の席に座って、ハッピーアワーの安い酒を片手に道を往く男達を眺めていた。 「なんか寒いわ」 「そう? 大分暖かくなってきたじゃん」 「心が寒いのよ」 大分前に数ヶ月付き合っていた男と喧嘩別れをしたY子が、女優めいた表情で淋しいと遠くを見つめながらいう。 「何いってんのよ。ほら聖子の歌でもあったじゃないのよ。『淋しく寒い冬の次にはきっと来るわ 光あふれる希望に満ちた季節~』だっけ?」 「いいのよ、あたしひとりは慣れてるから」 元々、波のある女(オカマ)のY子であるが、今日はアンニュイな女優ぶりたい気分なのか、聖子ネタにも乗ってこず、何か悩みでもあるのかと少々心配になった。 だがその数日後、朝っぱらから、若かった頃に何度もいざこざを起こした男と"友達”として一緒にハワイ行ってくる、彼と一緒にスノーケリングのギア買わなきゃ、などとY子から浮ついた声で電話が入り、「もう、あんたいい加減にして?」と電話を切ったあたしである。 ----------------------------------- 土曜日。 週間天気予報では終日雨の予定だったが、朝起きてみると太陽が雲間から覗いている。 雨を理由にして、仕事以外は家に篭って、酒を飲みながらゲームや読書ばかりの日々だったので、久々にひとり散歩に出た。 2月に入ったとは言え、まだコートにマフラー無しでは厳しい寒さだ。 いつもの坂を下ってカストロの街へ向かって歩いていくと、毎年春になると薄いピンク色の桃の花を一杯に咲かせる木の枝の陰に、ひっそりと1つだけ花がひらいているのを見つけて、思わず嬉しくなる自分(乙女!)。 道に咲き始めた花を、喜び愛でることができるくらいには歳取ったわ 寒い冬があるからこそ、暖かい春を有難いと思える。 長い雨の日があるからこそ、晴れた日がより幸せに感じられる。 そして、先の松田聖子の歌じゃないが、寒い冬の後には必ず春が来るし、 雨の日の後にも必ず晴れた日がやってくる。 帰り道。雨上がりの空をみあげながら、 「これで虹でも出てくれたら、もっといいんだけどねぇ」 と欲張った気持ちでいたら、急にまた雨が降ってきた。 こんなすぐに雨降り

この世界に潜む怒りや悲しみに あと何度出会うだろう

朝の6時半。携帯のアラームで目が覚める。 すぐに起きてシャワーを浴びればいいものの、毎朝ぐずぐずとベッドの中で携帯をいじって数十分過ごす。 まずはと、仕事のメールをチェックすると、会社の米国本部のトップから従業員に向けた長いメールと、サンフランシスコ・ベイエリアのオフィスを統括するトップから従業員に向けたメールがそれぞれ早朝に届いていた。 どちらのメールも、週末の空港での中東・アフリカ7カ国からの出身者の米国入国を認めないというトランプ騒ぎに対して、会社やオフィスの立場を従業員に伝えるもので、トランプのやっていることは"Not acceptable"で、会社として、米国の従業員、米国外の従業員すべてをこういった障害から守っていくというものだった。 メールの最後には、会社として個人の尊厳を認め、"all inclusive"で人種や出身、性別、性的指向、宗教で差別しない、と改めて書かれていた。 トランプが大統領になってから、メキシコや中東出身の若手の社員達が、自分のところに、ビザやグリーンカードの心配を相談しに来るようになった。 アメリカで頑張って大学を出て仕事先を見つけ、毎晩遅くまで働いている彼らは、仕事のストレスだけじゃなく、せっかく築いたここでの生活が、いつ何時揺るぎかねないこの状況に大きなストレスを感じている。 メキシコや中東出身の彼らだけじゃない。去年の秋からここで働いてくれている日本人の新人君の労働ビザだって、この調子じゃいつ発行が縮小されるか分からない。 アメリカ人と結婚した日本人の女友達が、旦那がトランプに投票したと困惑した顔で言っていた。 この旦那は、自分の奥さんやその友達、同僚がビザやグリーンカード取得に今までどれだけ苦労し、ストレスを感じてきたかを見てきたであろうが、一体どんな気持ちで移民縮小を掲げるトランプに投票したのだろう。 「奥さんは日本人で結婚してグリーンカードもあるから、トランプの言う移民対策など自分の家族には影響ない」「移民問題よりもっと大事なことがある」とでも思ったのだろうか。 また、サンフランシスコ市内の小学校で先生をしている友達が、 「クラスメートにちょっかいを出している生徒に注意をしたら、『大統領がメキシコ人や中東の人を追い