死に至る病、そして

金曜日の午後。

仕事場で、締め切り間際の仕事をばたばたとこなしていると、職場の大ボスから、2時間後に緊急電話会議を行うと、メールが入った。

緊急といえども、内容は検討がついている。

この1週間、この街の地下鉄もダウンタウンも、ゾンビ映画の廃れた街かのように、人が見当たらないほどだったのだ。

多くの会社が自宅勤務となり、わが社もいつそうなるかと、誰もが仕事の合間に話していたものである。

電話会議は予想通り、今日付けで、緊急を要さない限り、全員自宅勤務で、クライアント先に行くことも基本禁止。期間は未定、とのことだった。

すでに、会社は、中国、韓国、日本、イタリアへの出張を禁止し、ヨーロッパに滞在中の社員は今日、明日中にアメリカへ戻ることを指示していたから、自宅勤務の支持が出ても誰も驚かず、みな来週からの自宅勤務に向けて、静かにPCやらモニターやらを家に持って帰る準備をしている。

心配なのは、いつも昼時にお世話になっている日本のお惣菜屋さんをはじめとした、会社近辺のお店である。

月曜に、そのお惣菜やさんに、いつものように昼食の弁当を買いにいくと、いつもなら列ができてるその店はがらがらで、その社長さんは、

「この状況が続いたら、もうこの店続けられませんよ....」

と真顔で言っていたので、思わず今週は月曜から金曜まで毎日通ったわよね。

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N君の会社も同じような指示が会社から出たので、来週からは二人とも自宅勤務である。

さて、家に戻り、誰がどこで来週から仕事をするかなどを話し合っていたのだが、ランチもこれからは家で作らねばならない。ふとトイレをみると、トイレットペーパーが残り1ロールである。

普段なら、トイレも会社で済ませばいいと思っていたのであるが、来週からはそうはいかない。

LAに住むA子から、LAのスーパーマーケットが品不足になっているとLINEが来ていたので、まさかとは思い、急いでいつものスーパーマーケットに行くと、パスタの棚も、卵やヨーグルトの棚も、冷凍食品の棚も、トイレットペーパーの棚も、すべて品切れですっからかんである。

"ひゃだ！　明日からう〇こできないじゃないのよぉぉぉぉぉ！！！"

"食べ物なくなったら、どうしよ！　あたし、痩せちゃう！？"

と、日本の大騒ぎを対岸の火事と他人事にしていたのに、この始末である。

結局、トイレットペーパーは近所に住むE子が、余分に買っておいてくれたものを譲ってもらうことになったのだが・・・。

母に、

「母ちゃん、こっちもついに食糧、トイレットペーパー不足がはじまったよ」

とLINEすると即座に、

「あんた、日本から送ったから、待っとき！」

とわざわざ郵便局にトイレットペーパーもってアメリカまで送ってくれたという。

思わず、そのメッセージをみて涙せずにはいられなかったわよね。

街のオーケストラやバレエの舞台も、バスケットボールの試合も、すべてキャンセルである。

オカマの街カストロのバーも、サイズの大きいバーには市長から指示がはいり、すべて5月まで営業停止になったという。

「金曜日なのに、なんだか全然うれしくない」

と同業の親友M子からメッセージが入ったが、まさに同じ心境である。

皆、いつまで続くかわからないこの状況に、

静かに家でじっとして待つしかないのである。